知っておきたい成年後見制度の申請手続きとその利用方法

日常生活の中で起きる様々な困り事には、それぞれ解決策があったり解決してくれる存在がいたりします。今回は普段あまり利用することを考えていない方が多いと思われる「成年後見制度(せいねんこうけんせいど)」についてのお話しです。

成年後見制度という言葉そのものは耳にしたことがあるかと思いますが、この制度が一体どのようなもので、どんな方がどのように利用できるものなのか。

そして成年後見人になりたいと思っている方のために、どうしたら成年後見人になれるのかというところまで、成年後見制度に関する様々な情報をここにまとめてみたいと思います。

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成年後見制度とは

引用:photo-AC

早速ですが、まずは「成年後見制度」について説明ていきたいと思います。「何となく知っている」、「聞いたことがある」という方もいらっしゃると思います。

しかし、「自分には関係のない制度」と思っている方がとても多いようです。この記事を最後までご覧いただければ成年後見制度がどんなに大切な制度なのかという事を理解して頂けると思います。

成年後見制度を簡単に言うと、認知症の方や知的障害者など、自分1人では物事の判断が困難という方のために様々な場面で法的にお手伝いをしてあげるというような制度です。

そのような方が自分だけで何かを判断したりすると色々なトラブルに巻き込まれたり、状況をいいことに騙そうと仕掛けてくる悪い人に財産を狙われたりととても危険な事にもなり兼ねないため、成年後見制度に基づいて成年後見人が何かと手助けをしてくれるのです。

どんな時に利用できるの?

成年後見制度の事を詳しく知る前に、どんな方が、どんな時に、どのようにして利用できるのかという事をお話ししておきます。具体的な書き方をしますので、その状況を想像しながらご覧ください。

1.高齢で一人暮らし、現状は家事もこなせて病気もないけど頼れる身寄りもなく老い先が不安。この先何かあった時に「こうして欲しい、ああして欲しい」という希望はあるが、それを伝えておく人もいない。

2.障害を持つ子供がいる。今は両親も健在で面倒をみることが出来ているけど、両親が高齢になって動けなくなったり、万が一にも亡くなってしまった場合、その子の面倒を頼める親戚縁者もなく不安。

3.数年前に母が他界、そのあと認知症になった父親が病気になり入院中。この先もかなりの治療費がかかるが父に貯蓄はなく、自分にも生活があるため援助は困難。父親名義の不動産を売って治療費にあてたいと考えているが、本人に認知症があるため勝手に手続きができない。

4.高齢で子供がいないので、現在の預貯金を保険商品にして姪っ子に残したい。ただし、それを知ってあてにされるのは困るので自分が亡くなるまで内緒にしておきたいが、高齢者の場合は契約時に立会い人が必要とのことで頼める人もおらず困っている。

5.訪問販売で高額な布団を言われるがまま購入してしまったAさんは、その後そういった業者のターゲットにされてしまい、絶対に使わないと思われる物まで次から次へと購入。老後資金として蓄えていたはずの預貯金も使い果たし、大切な宝石やご主人の形見なども売ることになってしまった。

など、他にも様々な場面で困った事が起きた時に、気軽に相談できる制度です。本人からの申し出はもちろん、家族や近所の方からの「○○さんを何とかしてあげられないか」などという相談にものってくれます。

相談という形であれば制限はありませんが、申し立てができる人としては、制度を利用したい本人、四親等内の親族、検察官、市区町村の市長さんや村長さんなどとなっています。

成年後見制度の種類

引用:photo-AC

成年後見制度には「任意後見制度」と「法定後見制度」があります。さらに「法定後見制度」は①後見、②補佐、③補助の3つに分けられています。どれに当てはまるのかは本人の判断能力によりますので、それぞれを詳しく見てみましょう。

【任意後見制度】

本人に認知症などもなく判断能力がしっかりしているという場合で、行く先の事を心配して「元気なうちに○○しておきたい」などという時に利用するのが「任意後見制度」です。

【法定後見制度】

本人に判断能力が十分とは言えないと言う場合はこの「法定後見制度」が適用となりますが、これを利用するためには家庭裁判所へ審判の申し立てをする必要があります。家庭裁判所では、①後見、②補佐、③補助のどれにあたるのかを選定してくれます。

  1. 後見…本人には判断能力が全く無い方
  2. 補佐…判断能力が全く無いわけではないが著しく不十分な方
  3. 補助…著しくとまでは言えないが不十分な方

というような分け方になっています。家庭裁判所で判断してそれぞれの状況に合った人を選んでくれるのですが、選ばれる方たちをそれぞれ「後見人」、「補佐人」、「補助人」と呼びます。

成年後見制度の利用状況

引用:photo-AC

内閣府の調査によると、成年後見制度を利用する方は年々増加傾向にあるようです。

平成23年平成24年平成25年平成26年平成27年
成年後見126,765人136,484人143,661人149,021人152,681人
補佐17,917人20,429人22,891人25,189人27,655人
補助6,930人7,508人8,013人8,314人8,754人
任意後見1,702人1,868人1,999人2,119人2,245人
153,314人166,289人176,564人184,670人191,335人

参考サイト:内閣府 成年後見制度の現状

表を見ると、平成23年から平成27年までのたった5年間で、38,021人も増加しているのが分かります。これは、ただ単に成年後見制度の認知度が上がったわけではないようです。実は、とても悲しいことですが、身寄りもなく天涯孤独な高齢者が増加しているという背景があるようです。

しかし、本来はぜひ利用して欲しい(利用した方が良い)と思われる方全員が成年後見制度を利用しているわけでもありません。利用した方が良いのに薦められても利用しない方が大勢いらっしゃると聞きます。この制度を利用しない(したくない)理由とは何なのでしょうか。

その理由の多くは、「自分が認知症であることを認めたくない」、「赤の他人に財産の管理を任せるのは不安」というものだそうです。また、判断能力が全く無いわけでない認知症の方を医師の元へ連れていって本人を傷つけたくないという家族らの心情などもあると言います。

成年後見人とは

引用:pakutaso

ここからは成年後見人について見てみたいと思います。前述のような状況にある人たちのために、「成年後見制度」に基づいて様々な手続きなどを行ってくれる保護者のような存在が「成年後見人」です。

この成年後見人とは一体どのような人たちなのか、どうすれば成年後見人になれるのか、報酬はあるのかなど、疑問に思う点をまとめてみたいと思います。

成年後見人になる条件

どのような人が成年後見人になれるのか、逆に成年後見人になれない人とはどういう人なのか、これは「任意後見制度」を利用するのか、「法定後見制度」を利用するのかで異なってきますので分かりやすく表にしてみます。

任意後見制度法定後見制度
 なれる人なれない人なれる人なれない人
 契約でお願いされた人
  •  未成年者
  • 家庭裁判所で解任された法定代理人、補佐人、補助人
  • 破産者
  • 本人に対して控訴をした人やその配偶者と血族
  • 行方の分からない人
  • 不正行為などで不適とされた人
 家庭裁判所で選任された人
  •  未成年者
  • 家庭裁判所で解任された法定代理人、補佐人、補助人
  • 破産者
  • 本人に対して控訴をした人やその配偶者と血族
  • 行方の分からない人

 

成年後見人というのは、その方の資産・財産などを管理することが多いので、身寄りがなく天涯孤独で頼る人が居ない場合を除いて、通常の場合は血族が後見人になるケースが一般的なようです。また、成年後見人になるための資格などは一切いりません。

法定後見制度の場合は、「この人にして欲しい」という希望を出すことができますが、その希望が通るかどうかは家庭裁判所で決めますので分かりません。実は、後見人候補者名簿というものがあって、その中から選出という場合もあります。

この名簿には、弁護士、司法書士、行政書士、社会福祉士などがたくさんの方が登録されているのです。裁判所の判断でこの後見人候補者名簿の中から選出というケースは特に珍しいことではありません。

また、万が一家庭裁判所が選任した成年後見人が気に入らない、別の人に変えて欲しいなどと思っても家庭裁判所の判断は絶対ですので不服申し立てなどは出来ない事になっています。

報酬はある?

成年後見人になると報酬はいくら貰えるのか気になりますね。成年後見人というのは職業ではありませんので、時給や月給などといわれるお給料はありません。

しかし、無償のボランティアでもありませんから報酬という形での支給はあります。この報酬には①基本報酬、②付加報酬という2つの報酬があります。

①基本報酬…これは1回につきいくら、1時間ごとにいくら、という方法で金額を決定するのではなく、被支援者(支援を受ける側の人)にどれぐらいの資産があるのかによって異なります。簡単にいうと、どれだけの財産を管理することになるのかで決めるという事です。

【基本報酬】

  • 管理財産が1000万円以下の場合…報酬月額は20,000円
  • 管理財産が1000万円以上5000万円未満…報酬月額は30,000円~40,000円
  • 管理財産が5000万円以上の場合…報酬月額は50,000円~60,000円

【付加報酬】

付加報酬はどんな場合も基本報酬にプラスで受け取れるというものではありません。

  • 被支援者がたくさんの収益不動産を持っていて管理が面倒(複雑)な場合
  • 親権者の間で意見が対立してその調整などをしなければならないとき
  • 選任の成年後見人が不正などをしてしまって新たに成年後見人となった人が対応したとき

以上のような理由で、困難な事案だったりした場合にのみ付加報酬が発生します。金額は基本報酬額の50%を超えない範囲内で相当する金額という事になっています。

【その他の報酬】

上記2つの報酬の他にも、成年後見人が行った行為によって報酬が支払われるケースがあり、金額はその行為によって異なります。

①被支援者が不法行為を受けて起こした訴訟で勝訴、それによって被支援者の管理財産が1000万円増加したときの報酬額は80万円~150万円

②被支援者の配偶者が亡くなり、遺産分割調停の申し立てをして調停を成立させた。それによって被支援者が2000万円の遺産を手にしたときの報酬額は55万円~100万円

③住居用の不動産を任意売却した。これによって被支援者に対する3000万円分の療養看護費用などを賄うことができたときの報酬額は40万円~70万円

などとなっています。また、成年後見人が報酬を受け取るためには、家庭裁判所へ「報酬付与の申し立て」をしなければなりません。

成年後見人のお仕事

引用:photo-AC

成年後見人になると、財産の管理はもちろん、日常生活で起こりうる様々な困り事をサポートすることになります。では、どのようなことをするのかを具体的にご紹介します。

財産の管理

  • 不動産の管理や保管と処分など
  • 金融機関とのやり取りや預貯金の管理
  • 定期的な収入の管理、月々の生活にかかる家賃や光熱費などの支払い、ローン返済
  • 預貯金の入出金や生活に必要な物を購入(買い物)
  • 相続などに関する手続き
  • 権利証や通帳、証券などの保管と管理
  • 生命保険の加入や手続き、保険料の支払い

日常生活

  • 本人の賃貸契約手続きと費用などの支払い
  • 介護保険を利用する際の手続き
  • 老人ホームなどに入居(退去)する際の手続きと費用の支払い、施設についての苦情や問い合わせ等
  • 健康診断や病院の受診、治療、入院にともなう手続きや支払い
  • 医師からの検査結果説明に同席、内容の聞き取りと今後の話し合い
  • 介護サービス利用時の情報収集や利用開始の手続きと支払いなど

 利用の手続き

引用:photo-AC

ではここから実際に成年後見制度を利用するためにはどうしたら良いのかを見てみましょう。

手続きの前にすること

物事には事前準備が必要となるシーンがたくさんありますが、成年後見制度の利用もやはり事前にしておくべきことがあります。成年後見制度を利用するために必要となる書類などを揃えることも含め、相談することから始めましょう。

まずは市区町村に設置してある「地域包括支援センター」や「司法支援センター(法テラス)」、弁護士会、司法書士会、社会福祉士会、税理士会などに相談することからスタートです。

尚、家庭裁判所でも手続きに関することや必要な書類を案内してくれますし、手続きの流れなどが収録されたDVDなども視聴することができます。

申立てに必要なものと費用

申立てをすることが決まったら以下のものが必要になります。

  • 申立書…家庭裁判所で直接もらう他に裁判所のホームページでも入手できます

参考サイト:後見書式ダウンロード

  • 診断書…これも申立書と同様に家庭裁判所でもらうかダウンロードで入手できます
  • 申立手数料…1件につき800円分の収入印紙
  • 登記手数料…2600円分の収入印紙
  • 切手…金額は一律でないため確認が必要
  • 戸籍謄本

※切手はおおよそですが3,000円~5,000円程度となっています

鑑定費用

本人の判断能力を医学的に鑑定するための医師による鑑定を行う場合があるのですが、この鑑定を行ったときには上記の他に鑑定料が別途必要になります。金額は個々で違いますが平均50,000円~100,000円程度というのが一般的なようです。

申立てからの流れ

引用:photo-AC

必要なものが全て揃ったらいよいよ申立てです。申立てをする裁判所はどこでもいいわけではありません。本人の住所がある地域の家庭裁判所での手続きが必要となりますので、管轄の家庭裁判所が分からない方は下記サイトで検索してください。

参考サイト:各地の裁判所一覧

審問・調査・鑑定

申立てをすると、申立て人、後見人の候補者、そしてもちろん本人からも色々な話しを聞く必要があります。また親族などにも意見を聞いたり、裁判官からも事情を聞かれることがありますが、これを審問と言います。

本人が出向けない状況だったり判断能力が十分でない場合のときなどは、裁判官が自宅や本人がいる施設などに直接訪問することもあるようです。裁判官本人の目で見て耳で聞いて、判断能力の有無などを確実に判定するためです。

また、成年後見制度の中の「補佐」と「後見」を利用する場合は、上記の調査と並行して精神鑑定も行われます。これは先天性の障害などが明らかである場合は除きますが、精神科の医師によって精神状況を判断するために行われます。

成年後見制度の開始

様々な調査や鑑定の結果、成年後見制度を開始できる状況と判断されれば、最も適任者であると思われる人を成年後見人として選任することになります。予め決めていた人が成年後見人となることがほとんどなのですが、家庭裁判所で「この人は適当でない」と判断した場合は名簿などからの選任となります。

申立てから開始まで

実際に成年後見制度を利用したいと申立てをしてから開始になるまで、いったいどれぐらいの時間(期間)がかかるものなのでしょうか。今すぐにでも利用したいと思っている方にはガッカリさせてしまうかもしれませんが、法定後見制度を利用したい場合はかなりかかるようです。

上記のような流れで照会作業や面談、事実確認、さらに医師による鑑定などまで行うと、平均で2ヶ月~5ヶ月ほどかかるというのが一般的のようです。

ただし、認知症のレベルが高かったり、知的障害の方で判断能力が全く無いと医学的にハッキリ証明されているような場合ですと医師の鑑定は必要なくなりますので、その分だけ期間が短縮となります。

そしてもう一つ、聞き取り調査をする対象者(親族など)が居ない天涯孤独の方であれば同様にその調査時間分の短縮となります。そのような状況で短縮された場合は、早ければ数週間ほどで開始されることもあるようです。

いつまで成年後見人?

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成年後見人には任期のようなものはあるのでしょうか。また、途中で成年後見人を止めたりできるのでしょうか。実は成年後見人には、○○年間というような任期はありません。詳しくは下記で説明します。

そして、正当な理由がない限り途中でやめる事はできません。途中でどうしても続けられない事情が発生してしまった場合は、家庭裁判所が認めた場合に限ってやめる事ができます。

成年後見人としての仕事が終わるのは、本人の死亡や当初の目的が終了したときとなっています。また、本人が精神疾患から回復して判断能力が正常と判断された時も同様です。

成年後見制度のメリット・デメリット

引用:photo-AC

法的な制度はいろいろあって、どんな制度にもメリットやデメリットは必ずあります。では、成年後見制度にはどんなメリット・デメリットがあるのか見てみましょう。

成年後見制度のメリット

成年後見制度の一番のメリットと言えるのは、本人の代理として様々な手続きなどが行えるということです。預貯金の出し入れはもちろん、不動産の売買契約なども本人の代わりに行うことが可能です。

また、本人が訪問販売などでいいように言われて高額な物をローンで購入してしまったなどという場合は、本人の代わりにその商品の契約を無効にできてしまいます。高齢者を狙ったリフォーム詐欺などの被害に遭って泣き寝入りするしかない状況でも、成年後見制度を利用していれば未然に防ぐことが可能です。

家庭裁判所が関与しているので、本人の財産を狙っている第三者などが実際に預貯金を引き出して使い込んでしまったり、口座を解約してしまったりなどという被害を未然防止できます。

本人の意思はもちろん、家庭裁判所と成年後見人とのやり取りも記録に残ります。そのため、本人が亡くなってしまった後に財産分与で親族が揉めても記録に基づいて本人の希望通りに分配できます。

成年後見制度のデメリット

メリットもあればデメリットもあります。また、AさんにはメリットでもBさんにとってはデメリットだったりもします。ここからはデメリットをご覧ください。

成年後見人が財産の管理をすることになりますので、自由が減ることがデメリットといえます。どういう事かというと、成年後見人の原則は本人の「権利擁護」にあるからです。※権利擁護とは、認知症や知的障害などで自分の意思を正確に伝達することが困難な人に代わって代弁をしたり、支援したり日常生活をサポートしたりすること。

成年後見人は本人の財産を守り、収支のバランスも考え、生活環境も考慮しながら、本人が健康的な一般生活を送れるようにサポートするのです。ですから、勝手に多額の預貯金を引き出して子供や孫にプレゼントしたりという事はできなくなってしまいます。

それから、メリットとして家庭裁判所の関与を挙げましたがデメリットにもなり得ます。安心感があることは確かにメリットなのですが、財産に関して毎年1回必ず報告書の提出が必要だったり、何かと記録されていくという事を煩わしいと感じる方も多いようです。

まとめ

今回は成年後見人制度についてお話ししましたがいかがだったでしょうか。自分には関係がないと思った方もいらっしゃると思いますが、長い人生どんな事があるのかなんて予測はできません。

いずれ、もしかすると様々な形でこの制度の事を思い出す時があるかもしれません。また、身近な方が困っていて成年後見制度を利用すれば解決しそうなら、ぜひ教えてあげて欲しいと思います。

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