今回は2006年1月におこった「ライブドア事件」に改めて向き合ってみようと思います。
ここで皆さんに質問です。堀江貴文氏が捕まった理由はなんでしょうか?
特に私のよう学生は、よくわからないという人が多いのではないでしょうか。そこで今回は「ライブドア事件」の概要から現在に至るまでを追い駆けて行きます。
目次
ライブドアってどんな会社?
ライブドアとは堀江貴文氏が代表を務めていた会社です。もともと堀江氏が始めた会社ではありませんでしたが、2002年に彼が買収をしました。
”買収される前の”ライブドアは*ISP事業を行っていた会社ですが、堀江氏が買収したのちはISP事業に加えて*ポータルサイトの提供、*企業買収も手掛けていました。
この当時はISP事業は有料でしたが、ライブドアはこれを無料で提供してる会社だったのです。
ISP事業とは?
ISPはInternet Services Providerの略で、俗にいう「プロバイダ」のことを指しています。
そもそもインターネットを使えるようにするには、「プロバイダ」と「回線」が必要になります。
インターネットを引くために回線工事を行うのはこのためですね。
回線はインターネットと自宅のパソコンをつなげる物理的なもので、有名なものには「フレッツ光」や「ドコモ光」などがあります。
一方で、プロバイダというのは、回線の中を流れている情報のことで目には見えない抽象的なものです。「Yahoo!BB」などがこれに当たります。
ポータルサイトとは?
ポータルサイトとは、port(港)という英単語からきていて、サイトの港つまり様々なサイトにアクセスすることができるサイトのことです。
Yahooのようなもののことですね。
企業買収とは?
読んで字のごとく、企業買収とは企業を買うことです。
企業買収には株式が大きくかかわっています。
株式会社は自社の株式を発行することで資金を調達していますね。この株式を持っている人を株主と言いました。
株主は株主総会に参加し、当該企業の経営に対して口出しすることができます。また全株の3分の2以上を保有することによって、すべての物事を決めることができるのでした。
なのである会社の株式の3分の2以上保有すれば、実質その会社の経営権を手にしたということになります。
このように企業の株式の大半を買い占めることを企業買収といいます。
ではなぜ企業買収で儲けることができるのでしょうか?
それは株式の仕組みと同じで、買収後、この会社の株が上昇することで差額が生まれるからです。
「この会社はいい会社だけど、経営のやり方がうまくないからな。私がやったらもっと儲けられるのに」というような会社を買収し、この会社の株価を上昇させることで利益を生み出すことができるのです。
堀江貴文氏,通称ホリエモンってどんな人?
堀江貴文氏といえば愛称の「ホリエモン」でおなじみですね。出所後の現在も、事件前と変わらずテレビなどで活躍されています。
この方は1972年10月29日に福岡県八女市で誕生しました。現在は45歳です。
彼は東京大学文学部に在学中の1996年4月、2人の友達ともにインターネットサービスを手掛ける会社「オン・ザ・エッジ」を立ち上げます。
「オン・ザ・エッジ」ではウェブサイト制作や有料メルマガ、バー広告などで収入を得ていました。
2000年にはマザーズ(東京証券取引所がベンチャー企業のために開設した株式市場)に上場し、Eコマース(俗にECサイトとも呼ばれる、ネットショッピングのようなもの)を中心とした金融事業に参入し始めました。
また2002年には「ライブドア」を買収。この時、ライブドアは16億円の負債を抱え民事再生手続きを始めていたようです。
ライブドアはISP事業を無料で行っていましたが、そこに掲載する広告数が足りず大赤字となってしまったようです。
そんなライブドアを買収した後、自身が経営するオン・ザ・エッジの名称をライブドアへと改称しました。
さらに近鉄バッファローズの買収に名乗りをあげたり(拒否された)、東北に新球団設立をもくろんだり(他社競合の楽天に負けた)、選挙に出馬したり(落選)とさまざまなことに挑戦していきます。
このようにして彼は知名度を一気にあげ、数々のテレビ番組に出演するようになっていきました。
そんな波に乗っている2006年にあの「ライブドア事件」が起こります。
「ライブドア事件」の概要
長い前置きが終わったところで「ライブドア事件」について見ていきましょう。
いわゆるライブドア事件では堀江氏は2つの容疑にかけられていました。1つ目が、「偽計および風説の流布容疑」で2つ目は「有価証券報告書虚偽掲載容疑」です。
偽計および流布容疑
以下で順を追って容疑の内容を整理していきましょう。
まず、ライブドアが実質的に支配していた投資事業組合「マネーライフ」社の企業価値をライブドア関連の会社(ライブドアファイナンス)の従業員が過大評価しました。
本来であればマネーライフ社の価値はライブドアの価値に及ばないにもかかわらず、過大評価されたことで、1:1の株式交換比率が成立しました。
株交換というのは、企業売買の際に出てくる文言で<買われる側の企業の株と買う側の企業の株を交換>することによって行われるものです。
したがって株交換比率というのは、両者の企業価値を第三者が判断してどのくらいの比率で売買するか(交換するか)というのを決めるものです。
このとき、ライブドアはこの株交換比率を第三者が決めたというような表向きにしていましたが、実際はライブドアの従業員が決めていました。これが虚偽罪に当たりますね。
そしてマネーライフ社は1:1の交換比率でライブドア株を入手し、マネーライフ社はライブドア株を売却します。
ここからが大問題でライブドアの株をマネーライフ社が売却して得た利益を<ライブドアの収益>とし、本当は赤字であった決済をあたかも初めから黒字であったかのように見せかけました。
有価証券報告書虚偽掲載容疑
ごく簡単に言ってしまえば、有価証券報告書とは<何でいくら儲けたか>を記載するものです。
この有価証券報告書にうその内容を記載してしまったことを「有価証券報告書虚偽掲載容疑」と言います。有価証券報告書に虚偽の内容を記載してしまうと、投資家が損をしてしまう可能性があります。
ではなぜ「有価証券報告書に虚偽の記載」をすることによって投資家が損をしてしまうのでしょうか。
それは有価証券報告書にはいくら儲けたかが記載されているので、この儲け具合を鑑みるとどのくらいこの会社が成長しているのかがわかるからです。
堀江氏はこれに虚偽の記載をしてしまったということですね。
もっと細かく!有価証券報告書虚偽容疑とは?
ここからは堀江氏がやってしまった細かい容疑内容について書いていきます。
先述したように、ライブドアは企業買収を行っていました。このときも堀江氏は「クラサワコミュニケーションズ」という会社の買収を考えていました。
ただしこの商談はなかなかうまくいきませんでした。先方(以下クラサワと呼ぶ)は自社を現金8億円で売却したいと考えていましたが、堀江氏はライブドアの株8億円分と交換で買いたいと思っていました。
ただライブドア側はなるべく現金の流出を防ぎたかったので自社の株での取引を希望していました。
このように二進も三進もいかない状態でエイチ・エス証券の野口英昭氏(自殺して話題となった方)が登場します。
彼はこの問題をM&Aチャレンジャーファンドという新たな投資ファンドを設立することによって解決しました。
投資ファンドとは多くの人からお金を集め、そのお金を使って株などに投資しその儲けを顧客に還元することで儲けている会社のことです。
このM&Aチャレンジャーファンドが2社の仲介をすることでこの商談が成功しました。
つまりはこういうことです。
クラサワが8億円のライブドアの株と交換に自社を売却→クラサワは8億円分のライブドア株を手に入れる→M&Aチャレンジャーファンドがこの8億円分の株式を、現金8億円で買い取る
そうですね、この取引の時の”8億円”が問題なのです。
この取引には現金8億円がでてきますが、この現金8億円はM&Aチャレンジャーファンドにライブドアファイナンス部門が投資したお金でした。
投資ファンドというのは、先ほども書いた通り利益を還元するものです。このM&Aチャレンジャーファンドは8億円で買い取ったライブドアの株をすぐに売却しており、18億円の現金を手にしていました。
この18億円をすべてライブドアに還元したので(M&Aチャレンジャーファンドはこの商談を成立させるためだけに設立された会社なのでこのようなことができる)結果的にライブドアは18億円を手にすることができました。
ここでポイントなのは、クラサワとライブドアの取引では株式を即日にすべて渡す方式ではなかったので、クラサワは即日売却することはできませんでした。
しかし、M&Aチャレンジャーファンドは堀江氏本人から事前に8億円分の株式を借りることで即日売却することができたのです。
これまでの経緯を図にまとめてみると、
ということになります。
いったいこれのどこが問題なのかというと、これは自社株売買のなので「株式の発行で資本金が増えた」のかそれとも「会社の利益が増えた」のかという点です。
もし「会社の利益が増えた」ということで有価証券報告書に記載したならば、これをみた投資家たちはこの会社は勢いがあるとみなしてこの株式の買い足しをしますね。
一方で「株式の発行で資本金が増えた」のだとすると、勢いのあることの証明にはなりません。
ライブドア側は、金融の仕組みを駆使して儲けた純利益として「会社の利益が増えた」と有価証券報告書に記載してしまいました。
これにたいして裁判官は虚偽だとの判断を下したので、堀江氏は逮捕されてしまったということになります。
*現在、堀江氏はもう出所してまた第一線で活躍しています。
その他
上記の2つ以外にもマネーロンダリングの疑いやマネーライフ社以外の株式交換に関する不正などたくさんの疑いがありました。
これらの容疑に関しては疑いのみで検挙されることはありませんでしたが、このような疑惑がたくさんあったので検察に検挙される運びとなってしまったようですね。
現在のライブドア
ここからは今現在のライブドアについて見ていきましょう。
堀江氏が逮捕されてから上場廃止になったライブドアは、その後韓国のIT企業NHNに買収されました。
この買収よって生まれたのがLINEなのです。
現在でもLINE株式会社にはライブドアの元社員が多数在籍しているとのことです。
最後に
今回はライブドア事件について書いていきました。知っているようで知らないライブドア事件。少しはどのようなものであったのか、伝わっていれば幸いです。