今回の記事では「OTC取引」とは何なのか、ご紹介しようと思います。
それでは早速見ていきましょう!
目次
OTCとは?
OTCとは「Over The Counter」の略で、和訳すると「店頭を介さない」となります。
一般的に、仮想通貨を売買したいなと思ったら、仮想通貨取引所に口座を作って、不特定多数の人々とやりとりするものです。
ですが、そういった取引所を「介さず」に、1対1で取引することが実は可能なのです。
そもそも取引所は、仮想通貨を売りたい時の買い手や、買いたい時の売り手がすぐに現れるとは限らないため、手数料を取って仲介役をしているという側面があります。
それは逆に、仮想通貨を売買したい時に相手が既に見つかっているなら、わざわざ取引所を仲介させる必要がないのです。
OTC取引は急激に拡大している!
アメリカのOTC取引仲介業者であるGenesis Global Tradingでは、一日辺りの取引高が平均で7500万~8000万ドル(約90億円)で、2017年~2018年の1年間で約10倍増えたそうです。
中国でもOTC取引が増加しており、中国政府は2017年10月下旬のたった2週間だけで、1億300万ドル(約116億円)相当のOTC取引が人民元で行われたと発表しました。
OTC取引人気の理由その1:仮想通貨取引所への不信感
仮想通貨取引所のハッキング事件と言えば、コインチェックが約580億円分の仮想通貨を流出させた事件や、Zaifが約70億円分の仮想通貨を流出させた事件が記憶に新しいです。
しかしコインチェックやZaifの事件以外にも、沢山の取引所がハッキング被害やその他の理由によってユーザーの財産を流出させています。
2014年には、日本のマウントゴックスの社長がユーザーの仮想通貨や現金を着服し、約75万BTC(当時のレートで約480億円)と現金約28億円を消失させました。
2017年には韓国のユービットが約4000BTCを流出させるハッキング被害に遭い、取引所を閉鎖して破産申告をしました。
2018年6月には、イタリアのビットグレイルが約1億8700万ドル(約211億円)分の仮想通貨を流出し、顧客らの提訴により財産を差し押さえられました。
これら以外にも、ハッキングその他の理由で破綻した仮想通貨取引所は世界中にいくつも存在します。
取引所を仲介させて仮想通貨を売買すると、仮想通貨を取引所に預けておく必要があり、取引所がハッキングなどの理由で閉鎖した場合、預けておいた仮想通貨が戻ってこない可能性があります。
OTC取引人気の理由その2:無料通話サービスの普及
仮想通貨取引所を使う理由の1つに「売買の相手を見つけるのが難しいから」というものがありました。
確かに「仮想通貨を交換しませんか?」といちいち聞いて回るのは面倒ですし、物理的にも難しい側面があります。
しかし、「Skype」や「LINE」などの世界中の人々と無料で会話することができるツールの普及によってこの問題は解決されました。
こういったツールを使えば、海外の遠く離れた場所にいる相手の顔を見ながらコンタクトをとりことが可能になったため、OTCの取引量が格段に増えたのです。
OTC取引のメリット
メリットその1:相場に影響を与えず大口の取引が出来る
機関投資家や資産家、初期の頃から仮想通貨に関わっている人たちをはじめとしたいわゆる「大口投資家」は、一度に取引する量が桁外れです。
平気で1000BTC、1万BTCといった量を取引しようとします。
しかしそんな量の仮想通貨を取引所で売り買いしていたら、例えば買いならものすごい勢いで価格が上昇して、多くの投資家に「うおっ、急騰した!なんらかの理由で需要が伸びたのか!?これは買いだ!」といった誤解をさせてしまいますし、逆に売りならものすごい勢いで価格が下落して、多くの投資家に「うおっ!大暴落だ!これは今すぐ売らなきゃダメだ!」とやはり誤解させてしまいます。
ただでさえ価格の変動が激しい仮想通貨市場なのに、大口の売り買いでいちいち価格が変動していては、取引所を利用する人たちにとっては迷惑この上ありません。
OTC取引ならば、仮想通貨の売買が表に出てくることがありませんので、相場に影響を与えることはありません。
メリットその2:売買時の効率が良い
仮想通貨取引所では、一度に取引出来る最大取引数量が定められています。例えばZaifだと、、1回あたり50万円まで、1日あたり5000万円までなど上限があります。
マネーロンダリング(資金洗浄)対策として1日あたりの出金制限を設けている取引所もあります。
よって機関投資家をはじめとした大口投資家が多額の仮想通貨を売買するときは、取引や出金を数回に分けて行う必要があるため、とても時間と手間がかかります。
OTC取引ならこのような制限はありません。取引する価格を一律にして、すべての取引を一括で完了することができるからです。
取引所の上限をはるかに超える額の仮想通貨を売買したいならOTC取引で行うべきです。
OTC取引のデメリット
デメリットその1:取引所の価格よりも割高もしくは割安
OTC取引の場合、相手との交渉次第という側面もありますが、売値や買値が市場価格と比べて不利な条件にになる可能性が高いです。
もし仮にあなたが大口の投資家で、一度に1000BTCとか1万BTC取引したいということであれば少々価格が不利になっても問題になりませんが、小口の取引の場合なら安く売るだけ損ですので、普通に取引所を利用したほうがいいでしょう。
デメリットその2:スプレッドが広い
OTC取引では仮想通貨取引所よりもスプレッド(売値と買値の価格差)が広めに設定されているので、小額取引の場合は不利になります。
逆に取引所の場合はスプレッドが小さいため、小口の取引を頻繁に行いたい場合には取引所を利用するほうがいいでしょう。
デメリットその3:個人の信用がないと成立しない
OTC取引には仲介業者を介さず、個人で行う形態も当然存在しますが、取引をする個人同士がお互いに信用していないと取引を成立させることは難しいでしょう。
なぜなら、「どちらが先に振り込むか」という問題が発生するからです。
デメリットその4:詐欺に巻き込まれる可能性がある
2018年4月に仮想通貨約2億円相当を詐取したとして、神戸在住の7人が逮捕されました。
彼らが犯行に利用していたのがOTC取引です。
どうしてこのようなリスクがあるのにわざわざOTC取引を行うのかというと、投資家の間に、
「仮想通貨で儲けたい!でも税金は支払いたくない」
という心理があるからです。
仮想通貨を仮想通貨取引所で取引して利益を得た場合、当局から課税されます。
日本の場合は最大で55%になります。
しかしOTC取引なら、お互いが「税務当局には黙っておく」と約束さえすれば無税のまま仮想通貨で得た利益を手にすることができます。
大手仮想通貨取引所がOTC業務に参入!
大口投資家の人たちにとっても、OTC取引において、「どっちが先に送るか」という信用の問題が残ります。
彼らは一度に取引する仮想通貨の量も莫大ですから、一度でも詐欺に遭うと多大な損失を被ります。
そこでこの問題を解決するために、仮想通貨取引所が「OTC取引に第三者として仲介し、取引が確実に成立するためのサービス」を導入し始めました。
有名な取引所で言うと、2017年1月には日本の仮想通貨取引所であるBitPointが、2018年11月からはアメリカの取引所であるCoinBaseがそれぞれ「OTCサービス」を開始しています。
まとめ
機関投資家は、顧客から預かった資産を危険に晒すことを最も嫌います。
仮想通貨取引所へのハッキングが頻発している最中、OTC取引がより活発になると、機関投資家がより参入しやすくなるでしょう。
さらに大口投資家が一度に大きな取引を取引所で行わなくなれば、仮想通貨の価格も安定して、健全な市場が形成されていくことが期待できます。