突然ですが、皆さんは個人型確定拠出年金(ideco)をご存知ですか?名前を見聞きしたことがある、という人はきっと多いと思うのですが、その実態が一体何なのか、正直よく分からないという人も少なくないのではないでしょうか。かく言う私も、つい最近まで意味の分からないまま、その存在を放置していました笑。
そこで今回は名前からして何だかとっつきにくそうな、個人型確定拠出年金(ideco)について、分かりやすく説明していきます。
目次
idecoとは
では早速idecoについて知っていきましょう。今回はidecoのしくみ、そして確定拠出年金、さらに復習として年金制度について調べてきました。年金制度に関するニュースや報道を目や耳にする機会は多いと思いますが、年金制度そのものの内容をしっかり理解すれば、idecoのしくみはより分かりやすく、身近なものになりますよ。
idecoのしくみ
個人型確定拠出年金(ideco)は、ざっくり説明すると自分で積み立てて自分で使う年金のことです。この制度に加入した人が、月々の掛け金を積み立てることで、idecoに用意された金融商品を運用し、60歳を過ぎてから、その運用したお金を受け取ることができる制度です。
これも一つの年金制度なのですが、国民年金や厚生年金との違いは、あくまで加入は”任意”だというところにあります。自営業の方などが加入できる年金制度でしたが、2017年1月1日以降からは、専業主婦(夫)、公務員、サラリーマンでも加入することができるようになりました。
個人型確定拠出年金は、メリットが多いことで知られています。例えば税制上のメリットはとても大きく、積み立てる掛け金が全額所得控除になるというメリットもあります。運用して得られた利益に関しても非課税なので、老後に向けての資産運用をする場合には、他の資産運用に比べると優遇措置があるとも言えます。
後述しますが、加入方法は金融機関を選び、積み立てる金額などを選べば、その後は口座振替によってコツコツと積み立てが始まります。運用商品の種類も、資産運用を積極的に行ってきた人には少々物足りないかもしれませんが、元本保証等が気になる人には定期預金や投資信託も用意されているので安心感があります。
企業型確定拠出年金
今回紹介するのは”個人型”確定拠出年金ですが、この年金制度にはもう一つ”企業型”があります。積み立てを、加入者が勤めている会社が行うというものです。確定拠出年金は、公的年金に上乗せするための選択肢として平成13年10月に導入された制度です。
参考文献:確定拠出年金制度の概要 厚生労働省
もっと復習!年金制度
そもそも公的年金制度について、その考え方やしくみを把握できていますか?私は個人型確定拠出年金を調べるまで、義務的なものだからとなあなあにしていましたが、実際に年金制度を理解すると、個人型確定拠出年金が登場した背景もはっきり理解することができました。
まず公的年金制度は、定められた保険料を納めることで、そのお金が必要になった時に給付を受けることのできる社会保険制度となっています。
生きていく中で、私達は年を取っていきます。事故でケガを負ったり、病気になったり、あるいは亡くなってしまったりと、日常生活が困難になるリスクを抱えながら生きていきます。これらのリスクは簡単に予測できるものではないですよね。でもこのリスクが生じた時に自力で貯蓄や資産を蓄えるには限界があります。そこで公的年金制度が用意されているのです。
しくみと考え方についてですが、「支え合い」という考え方を基盤に、いわゆる現役世代、いま働いている世代の支払った年金保険料を、高齢者など年金受給者の給付に充てるというしくみで成り立っています。
年金の制度は、20歳以上の全ての人に加入義務の生じる国民年金と、会社員などが加入する厚生年金があります。
私はフリーライターの仕事をしているので、第一号被保険者となります。自営業者などは第一号被保険者といって、国民年金のみ加入しています。定められた保険料を毎月納める義務があります。第二号被保険者とは、厚生年金や共済年金に加入した会社員や公務員を主に指します。保険料は毎月給料から天引きされます。第三号被保険者は、扶養されている人のことを指し、扶養している人の厚生年金制度によって保険料が負担されているため、個人の保険料負担はありません。
年金受給を受け取れる年は、今後変動していくかと思いますが、老後には年金保険料を支払っていたからこそ、老齢基礎年金を受け取ることができ、また厚生年金などに加入していた場合には老齢厚生年金も受け取ることができます。
私個人の意見ですが、「支え合い」という考え方を基盤にしている年金制度は、とても日本人らしい発想だなと思っています。しかし年金制度の不安点としてよく挙げられるのが、将来起こり得る不公平感です。もし将来、現在保険料を支払っている世代が年を取って受け取る時、その受給額が減ってしまったら、何だか虚しくなりそうです。
今回は個人型確定拠出年金の話ですが、年金制度の動向も一緒に気にしておくといいでしょう。
加入するにはどうしたらいい?
自分自身で積み立てていく”任意”の年金制度が、個人型確定拠出年金(ideco)です。では加入するためにはどのような条件が必要なのでしょうか?加入方法についても一緒にご紹介していきます。2017年1月1日より、加入できる人の範囲がぐっと広がりましたが、加入条件はしっかりと確認した上で、加入手続きをしましょうね。
加入条件は
法改正によって、2017年の1月から専業主婦(夫)やすでに企業年金に加入しているサラリーマンも加入できるようになりました。そのため、加入条件は大きく広がったと考えて問題ありません。恐らく条件を見ていただければ、大抵の方は加入が可能だということが分かります。もちろん加入した方が得か損かは、また話が別ですが、自分が加入できるかどうか一度確認してみてください。
まず日本国内に在住している20歳以上60歳以上の自営業の方、自営業の方の家族、フリーランスで仕事をしている人、学生など、国民年金の第1号被保険者は加入が可能です。法改正の前は、このような企業に勤めていない方のための確定拠出年金の制度となっていました。
次に60歳未満の第2号被保険者、厚生年金などに加入されている人の扶養家族である第3号被保険者が加入することができます。
加入できない人
加入できない条件は、まず障害基礎年金を受給されている人を除き、国民年金の保険料納付を免除されている人は加入することができません。これは一部免除であっても、加入することができないので注意してください。
企業型確定拠出年金に加入されている場合もNGです。ただし企業型確定拠出年金の中には、その規約上でideco同時加入を認めている場合もあるので、そちらを確認の上、判断することが必要です。またこの記事を読んでくださっている人の中にはいないかもしれませんが、農業者年金の被保険者も加入はできませんので、ご了承ください。
資格を損失する場合
idecoに加入しても、その加入した資格を損失してしまう場合があります。まず当たり前のことだと思われるかもしれませんが、積み立てた金額を受給することのできる60歳に達した時には、その資格を損失します。また上記の加入条件を喪失したときには、この資格を損失することになります。
またidecoに加入していた人が、企業型確定拠出年金制度のある会社へ就職や転職を行うと、idecoの積立金を企業型に移換することになります。
参考文献:加入資格 個人型確定拠出年金
加入方法は
加入方法は、金融機関の窓口にて、金融機関経由で国民年金基金へ申し出をすることになります。加入申込書類は、加入する方が選んだ金融機関に用意してあるので、どの金融機関で申し込むか決めた上で、事前に必要書類の準備を完了しておきましょう。
主に選ばなければならないことは、申込をする金融機関と運用商品です。
参考文献:加入申込み手続き 個人型確定拠出年金
金融機関の選び方
idecoを始める場合、idecoを提供している金融機関をまずは選ばなければなりません。選び方としては、確定拠出年金のしくみから考えて、長期運用に見合った利点を考える必要があります。中でも手数料はとても大きな要因となるので、よく比較してから検討することをおすすめします。
idecoは必ずかかる手数料に、国民年金基金連合会への手数料2,777円と、資産管理手数料167円/月があります。これはどうしてもかかってしまう手数料です。加えて、開設後も国民年金基金連合会に103円/月、事務委託先金融機関に64円/月が発生します。そしてもっとも重要なのが、金融機関の取り分となる「運用機関手数料」です。
運用機関手数料は、金融機関ごとに全く違う金額が設定されているので、最も低い金融機関を選ぶことをおすすめします。
資産運用に積極的なら
例えば、運用商品を元本保証の安全性を考えて、定期預金にした場合には先に紹介した手数料の金額を、金融機関を選ぶ最優先事項として選ぶと良いでしょう。利回りはどうしても低くなりますが、確定拠出年金の条件通り、満期まで持っていれば、元本を下回ってしまうことはありません。「60歳まで絶対に下ろせない定期預金」というイメージで積み立てていける人であれば、金融機関の選ぶ方は手数料>商品が向いています。
ただ資産運用に積極的な人であれば、運用商品を重視して金融機関を選ぶようにしましょう。idecoで利用される商品には、定期預金と違い、リスク商品とも言われる投資商品が存在します。idecoでは主に投資信託がメジャーです。リスクと呼ばれる所以ですが、投資信託には元本保証がありません。大きな利益を得られる可能性もあれば、元本割れを起こす可能性もある、ということです。
投資信託は主にインデックス型とアクティブ型に分けられます。インデックス型の場合、リスクとリターンのバランスに優れており、初めて投資信託を利用する方も利用しやすい投信となっています。もちろんアクティブ型をやっても問題ありませんが、こちらは投資をバリバリやっている人におすすめの投信です。資産運用の専門家が運用してくれるのですが、その分コストもかかりますし、絶対に値動きが上回るという保証があるわけでもありません。
「資産運用してみたいけど、初体験で不安」という場合は、インデックス型の投資信託が安心して運用できる投資商品と言えるでしょう。
メリット・デメリットについて
idecoの加入条件や加入方法が分かったところで、メリットとデメリットについて紹介していきます。メリット、デメリットの捉え方によっては、idecoに入らない方が得という人も出てくるかと思います。いずれにせよ、熟考してidecoが自分に取って利があるものか否か、判断することをおすすめします。
メリット
idecoにおけるメリットとして最もよく謳われているのが、税制についてです。特に毎月の掛け金が全額所得控除の対象となるため、所得税、住民税の軽減につながります。この節税効果は、年収が大きい人ほど有利になるので、ある程度収入が安定している人にとっては、とっておきの節税対策となるのです。節税のメリットはidecoに加入していれば、必ず受けることのできる利点なので、頭に入れておきましょう。また運用する上で得られた利息、配当金などは全額非課税になるというのも嬉しいですね!
税制におけるメリットはまだまだあります。idecoの運用が終わり、受け取る側に回っても、公的年金等控除の対象となるため、ここでも所得税等の軽減につながります。運用中も運用後も、節税につながるので、節税意識が高い人ほど、idecoは魅力的に見えるのではないでしょうか。
年金破綻のリスクがない
デメリット
デメリットとして挙げられるのは、税制は考慮されているものの、手数料が地味に痛いという点が挙げられます。加入する際、国民年金基金連合会に支払う手数料2,777円、他毎月数十〜数百円とはいえ「管理手数料」などを支払う必要があります。手数料の金額が固定されているため、運用金額が少ない人にとっては重荷と言えるでしょう。
節税の面でもメリットでもありましたが、恐らくidecoは、ある程度運用額を大きく取ることのできる人こそ便利な制度かもしれません。少額で積み立てていこうと考えると、ほんの数百円の手数料も「塵も積もれば山となる」的に負担が大きく感じることでしょう。
60歳まで引き出せない
また私も個人的にひっかかっていたのですが、これはいわゆる”年金制度”なので、60歳までは原則引き出すことができない制度となっています。老後の資産をつくるという考え方からは、引き出せないという制約によってコツコツ積み立てることができるといったメリットも考えられます。
しかしそれこそ人生何があるか分からないのです。60歳まで順調に積み立てられるほど安定した収入を続けられる保証もありませんし、まとまったお金が必要になるタイミングが60歳より前に来ることも十分考えられます。考え過ぎかもしれませんが、60歳までの人生プランが(予想外のことが起こる可能性も加味した上で)描けていないと、少々運用する利点を見失ってしまうかもしれません。
よくある質問
idecoについて調べていると、同じような質問が沢山見受けられました。私自身も疑問に思うことがあった内容をまとめてみました。NISAとの違いや、利用価値があるの?といった質問についてご紹介します。
NISAとの違いは何?
NISAも、その名称を見聞きしたことある人は少なくないのではないでしょうか。振り返れば2014年にスタートしたNISAは「小額投資非課税制度」という名称の制度です。将来のための投資という考え方からidecoと似たような運用目的を定めることができますが、この2つの違いは一体何なのでしょうか。
まずNISAはidecoとは違い”年金制度”ではありません。そのため現金化するための売却をいつでも行うことができます。そのため60歳まで引き出せないという縛りがありませんから、運用する期間がある程度決まっているのであれば、idecoよりNISAの方が運用しやすいかと思います。
NISAは年120万円までの投資で得られた利益や配当金が5年間非課税となる制度です。条件として非課税枠は一度使ってしまうとそれきりなのが難点です。確かにいつでも売却可能で、ずっと非課税のままでは、税収の利点が皆無になってしまいますよね笑。
また資産運用に興味のある人にとって、様々な投資商品が選べるというのも1つの利点です。idecoの場合投資信託が中心となるのですが、資産運用をバリバリやっていきたい人にとっては、物足りなく感じるかもしれません。NISAは外国株の投資も可能なので、すでに資産運用に慣れている人はNISAの活用が魅力的と言えるでしょう。
ただし先にも紹介した通り、5年間の非課税枠は一度売買すると使うことができません。idecoは60歳までと極端かもしれませんが、長期運用には利用できないので、老後の資金繰りには不向きかもしれません。ただ子供の学費や住宅購入の頭金としての活用ならNISAを強くおすすめします。
利用価値について
idecoは自分自身で積み立てる”年金”ですが、本当に利用価値があるのだろうかと戸惑う人も少なくありません。実際ideco以外の制度を利用した方が得な場合もあります。
”年金”において、公的年金の現在挙げられている問題から考えてみると、少子高齢化が進んだことによって恐らく将来的に年金額は引き下げられてしまうのではないでしょうか。0にはならないと思いますが、現役世代にとって虚しい結末は、現実感を帯び始めています。
それに加え受給できる年齢の引き上げもなされ、60歳から65歳に引き上げられた結果、自分自身で退職後の5年間の人生プランを明確に考えざるを得なくなりました。
利用価値が全くないというわけではありませんが、公的年金の現状の厳しさと同時に、原則60歳までは引き出せないという確定拠出年金の規則を頭に入れておかないと、老後を迎える前に資金繰りで追いつめられてしまうかもしれません。idecoを利用するのであれば、”現在”無理のない範囲で掛金を設定することが大切です。
主婦(夫)の節税効果は?
利用価値の話で話題に最も上がるのは、第3号被保険者である専業主婦(夫)のidecoの活用です。第3号非保険者は原則として個人で税金を納めているわけではないので、idecoを活用しても節税効果はあまり見込めません。考え方としては、税金をそもそも納めていないのだから、戻る税金もない、ということです。
もし扶養されている状態で一切収入がない場合には、恐らく掛け金も貯金を切り崩して払うことになるのではないでしょうか。そうでなければ、扶養家族の収入から出すことになるでしょう。
扶養家族の税に関わる話題において「○○万円の壁」について聞いたことがある人もいるのではないでしょうか。130万円の壁に関しては、130万円というのが社会保険料の控除を受けられる限度額となります。ただしidecoは所得控除の仕組みが上記のものと異なります。そのため、もし扶養家族の収入から掛け金を払っていた場合には、支払っている本人以外は控除を受けられないというルールにのっとり、税に関する恩恵を受けることができません。
そのため、idecoは専業主婦(夫)にとっては、あまり利用価値のあるものではないかもしれません。もっともメリット・デメリットでもお話した通り、ある程度所得があり、運用金額の多い人ほど節税効果や手数料に関するデメリットが解消される制度のように思えますから、自分の収入や人生プランをよく考えてから加入を決めることをおすすめします。
まとめ
個人型確定拠出年金(ideco)についてご紹介してきました。公的年金制度に頼らない、自分自身で積み立てる年金制度だということが理解できたのではないでしょうか。節税効果や個人個人で管理されるという点ではとてもメリットのある制度だということが分かります。
ただ掛け金の範囲や、人生プランをよく考えてから運用しないと、実はあまり得した気分にならなかったという場合も十分考えられますので、メリット・デメリット双方をよく理解して加入するかどうか決めましょう。