fincleでは経済や金融に関するさまざまなトピックを取り上げていますが、今回はギリシャ危機について解説していきます。
ギリシャというと、あなたはどのようなことをイメージしますか?
多くの人は、パルテノン神殿や美しいエーゲ海などをイメージするのではないでしょうか。
しかし、国際的に見ると現在のギリシャというのは経済が落ち込んでいる国という見方が強いです。
いったい、なぜギリシャ危機が発生してしまったのでしょうか。
ギリシャ危機について理解できれば、EU全体の経済についてもより詳しくなることができるでしょう。
それでは早速、ギリシャ危機の原因やその後などについて詳しく解説していきます!
目次
ギリシャ危機とは?
まずギリシャ危機とは一体何だったのか、詳しく解説していきます。
ギリシャ危機は、2009年10月にギリシャ共和国で行われた政権交代の際に明らかになった一連の経済危機のことを指します。
政権交代が起きるまで、ギリシャの財政赤字はGDP比で5%程度とされており危険な状態が続いていました。
しかし、新政権時に旧政権下の財政赤字がなんとGDP比12.7%に到達していたことが判明。
ギリシャはEUに所属しているため、欧州全体を巻き込む国際問題へと発展しました。
このような事態を受け、三大格付け会社は国債の格付けを引き下げることを決定しデフォルトリスクが発生することに。
ギリシャはEU加盟国であったため、デフォルトを防ぐためEU加盟各国は緊縮財政を条件にギリシャへ多額の経済支援を実施してきました。
このため、特にEUに加盟している先進国は自国の経済にも打撃を与える結果となり、ギリシャだけでなく欧州全体に危機をもたらす結果となったのです。
財政赤字の原因
そもそも、なぜギリシャ危機が発生するまで財政赤字が蓄積してしまったのでしょうか。
原因は大きく分けて以下のとおりです。
- 公務員への手厚い保護
- 年金支給開始年齢の早さ
公務員への手厚い保護
ギリシャは公務員がとても多い国として知られています。
莫大な財政赤字が発覚した際、ギリシャの人口が1100万人前後だったのに対し公務員は100万人ほど居たとされています。
子供と老人を除くと公務員は4人に1人とされており、これは世界的に見てもかなり大きい割合です。
公務員は一般的な労働者と比べて給与も良かったため、これによって財政が緊迫していたとのこと。
年金支給開始年齢の早さ
ギリシャ危機が発生した当時、ギリシャの年金支給開始年齢は55歳でした。
55歳という年齢にも驚きですが、さらに驚くべきポイントが現役世代の所得に対する年金の割合です。
なんと、その割合は79%とされておりこれは他の先進国と比べかなり高い割合となっています。
現役時代の給与の約80%にあたる年金を55歳から貰えるというのは、なかなか前例がないのではないでしょうか。
なぜこのような事態が起きていたか、一説には政治家が高齢者世代からの支持を集めるためと言われています。
つまり、国ぐるみで享楽的な生活を送ろうとした結果財政赤字が積み重なったといえるでしょう。
ギリシャ危機が与えた影響
では、実際にギリシャ危機は自国や国際経済に対しどのような影響を与えたのでしょうか。
大まかに分けて以下のような事態が発生しました。
- EU加盟国の経済状況悪化
- ギリシャ国内の景気悪化
- 緊縮財政に反対するチプラス政権の誕生
それぞれ詳しく解説していきます。
EU加盟国の経済状況悪化
ギリシャ危機の発生によって、投資家の間ではギリシャ以外にも財政赤字を隠蔽しているのではないかという疑問が浮上します。
主に疑われたのがポルトガル、イタリア、ギリシャ、スペイン各国でした。
これらの国は、2007年に世界金融危機が発生した際に自国の力のみで金融・財政部門の改善を行えないと判断された国であり、各国の頭文字を取ってPIIGS(ピーグス)とも呼ばれています。
これの煽りを受け、PIIGS各国の経済状況が悪化しEUに対してギリシャをどのように扱うのか注目が集まりました。
ギリシャ国内の経済悪化
当然ではありますが、ギリシャ危機の発生によりギリシャ国内の経済状況は大きく悪化しました。
経済状況が悪化した大きな原因として挙げられるのが、EUによる経済支援と引き換えに提示された緊縮財政政策です。
EUはギリシャへ無条件に支援をしたのではなく、あくまで緊縮財政を行うことを前提として支援を実施しました。
緊縮財政の具体的な内容としては、公務員の給与削減や増税などさまざま行われました。
はじめは緊縮財政にも比較的寛容な動きを見せていたギリシャ国民ですが、一連の政策による景気悪化を受け国内で緊縮財政に対し反発の声が出始めます。
その結果、2015年に行われた総選挙で緊縮財政に反対の立場を示していた左派政党であるチプラス政権が誕生したのです。
緊縮財政に反対するチプラス政権の誕生
財政状況が改善の兆しを見せていたギリシャでしたが、チプラス政権の誕生により再び危機が発生します。
緊縮財政に対し反対の姿勢を見せていたチプラス政権は、EUより要求されていた緊縮財政に対し否定的な立場を表明しました。
また、ギリシャは2010年と2012年にIMFより返済を必要とする経済支援を受けていました。
この返済期限は2015年6月までとされていましたが、とても返済できるような状況ではありません。
これを受けて、EUはギリシャに対し再び緊縮財政の要求を承認するよう持ちかけますがチプラス政権はこれを拒否。
国際的にも大きな批判を呼び、ギリシャのEU離脱までもが予想されましたが最終的にはギリシャ側が緊縮財政を容認しました。
結果的にギリシャはギリギリのところでEU離脱を免れて、再び緊縮財政に則った国政運営が実施されたのです。
ギリシャ危機の問題点
ギリシャ危機がどのような原因で発生し、そして影響を与えてきたか理解できたでしょうか。
次に、ギリシャ危機が国際的にどのような問題を及ぼしたのか解説していきます。
ギリシャ危機が国際的に影響を与えた問題点としては、大きく分けて二つ考えられます。
- ユーロ加盟各国の国債への影響
- 地政学上のリスク
それぞれ詳しく解説していきます!
ユーロ加盟各国の国債への影響
冒頭よりギリシャ危機がユーロ加盟各国へ影響を与えてきたと解説しました。
ギリシャ自体はEUの中でも経済的に小規模な国ですが、EUに加盟しているので影響は他の加盟国に飛び火します。
具体的には、ギリシャ危機によりユーロ加盟各国のソブリン債へ影響を与えることになりました。
ギリシャ危機を受け、投資家よりEU加盟各国の国債への影響が不安視されてしまったのです。
だからこそ、EUは懸命にギリシャの財政再建を後押ししたともいえますね。
地政学上のリスク
ギリシャ危機による影響は、経済だけに留まらず地政学上のリスクも存在します。
なぜEUはギリシャを見捨てなかったのか、それは国の位置関係が大きく影響しています。
ギリシャという国はエーゲ海を臨む地中海に位置していますが、ここは中東やインド洋を繋ぐ重要な役目を担っています。
実はギリシャはロシアと同じ東方正教会を国教(正確に言うと教義が同じ)としているため、両国は友好な関係を構築していました。
このような経緯があるため、EUの立場からするとギリシャを切り捨てた際にはロシアの介入が予想されるのです。
もしロシアがギリシャを支配下に入れた場合には、EUや中東地域へ大きな影響力を及ぼしかねません。
そのため、EUは緊縮財政を拒否されるなどしながらも最後までギリシャを支援する必要があったといえるでしょう。
おわりに
今回はギリシャ危機について詳しく解説してきました。
ギリシャ経済の安定化を受け、2018年8月にはEUによるギリシャへの金融支援は終了となりました。
国の経済状況もEU危機発生時と比べ3分の2程度まで戻ってきているとされ、今後の経済状況が注目されます。
しかし、未だに国民の生活は苦しい状況が続いているとされており予断を許さない状況といえるでしょう。
ギリシャからEUへと経済危機が飛び火した場合、日本も決して他人事ではありません。
遠い国の出来事だとは思わずに、私たちもギリシャの動向をしっかりと見守っていく必要があるでしょう。
今回の記事がギリシャ危機に関する疑問を解決するきっかけとなれば幸いです。