内部留保って?現金と一体何が違うの?わかりやすく解説します!

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マナ
こんにちは!Fincle専属ライターのマナです。

今日はニュースでよく見聞きする「内部留保」について見ていきたいと思います。

現在日本企業の内部留保は400兆円を大きく超えているといわれています。「内部留保を給料や設備投資にどうして使わないのか?」と疑問に思う方もいるでしょう。

しかし実際はそのようなことをしても現金が減るだけで内部留保は1円も減ることはないということがないのです。

「内部留保と何のことって」「現金との違いは?」など、皆さんの疑問に答えていきたいと思います!

内部留保とは?

では早速内部留保について確認していきましょう♪

企業の利益のうち社内に留保される部分、すなわち当期未処分利益から配当金、役員賞与金など企業外部へ現金で支出される利益処分額を控除した残額である。利益準備金、および事業拡張積立金、配当平均積立金、別途積立金などの任意積立金、およびその期の利益のうちいかなる目的にも使用されずに次期に繰越される部分 (次期繰越利益金) から成る。なお当期未処分利益金のうちどれだけ社内留保されたかの割合を社内留保率 (社内留保÷当期未処分利益) という。この比率は企業の資本蓄積の状況を調べるための指標の一つとして経営分析においてしばしば用いられる。(ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典参照)

といのが辞典による解説なのですが、やや難解です。

順を追って説明すると…

➀売り上げから費用と税金を差し引いたのが税引き後純利益(略して純利益)として残ります。

②純利益から役員報酬や配当を支払った後に残ったのが、利益剰余金や利益準備金(≒内部留保)として積み上がる

という仕組みになっています。

因みに実際の会計用語では「内部留保」という言葉が使われることはありません。有名企業、どこの公表する決算書でもいいので見てみてください。どこにも「内部留保」という言葉は載っていないことが分かります。

決算表で言うならば、利益余剰金や利益準備金が内部留保にあたると考えられます。

現金と内部留保の違い

マナ
現金と内部留保は一体何が違うのでしょうか。

現金と内部留保の違いを理解するには企業のバランスシート(企業の財政報告書)の中身を少し知っていなくてはいけません。

早速下記のバランスシートを確認していきましょう!

右側の負債内部留保を含む純資産は「お金の調達方法」を表しており、左側の資産は「調達したお金をどのように持っているか(もしくは使ったか)」を指しています。

 

この表をみてもわかるように、純資産だけ見ても内部留保されたお金がどのような形態で保有されているのかわかりません。

留保されたお金はもちろん現金の場合もありますが、株や設備の可能性もあるのです。

給与は現金から支払われますよね?株や設備が給与になるなんてことはありません。

そのため、内部留保がたくさんあるからといってそれが現金でない場合は、給与を増やし内部留保の額を減らすことができません。

内部留保を減らすには?

マナ
内部留保って減らすことは可能なんですか?

可能ですよ。では早速見ていきましょう!

➀給料をたくさん払う

従業員に給料をたくさん払って赤字にすることで、内部留保をへらすことが可能になります。

理由としては赤字になると、純資産である利益準備金が減るためです。

近年日本では景気は回復に向かいつつあり、企業も元気になってきています。しかしながら給料は増えず、税金と物価が少しずつが上がっています。そのため多くの日本企業が内部留保をしているのではないかとたびたび問題視されています。

マナ
内部留保するくらいなら、社員としては給料を増やしてほしいですよね。でも赤字にしなければならないということは、現実的ではないですね。

②設備投資をする

会社が設備投資などをした場合には、それにかかった費用を、一定期間のうちに処理してしまう減価償却という会計方法が使われます。

設備投資も買った時点では現金が設備へと形を変えるだけですが、減価償却により設備が毎年少しずつ費用として計上されて赤字になった場合は利益準備金を減らすことが可能です。

③株主に配当を出す

給料が増えれば社員は喜ぶでしょう。設備投資が増えれば取引先の機械メーカーにとっても嬉しいことです。しかし、現実はそう上手くはいきません。

「現金が余っている」、「内部留保がある」という理由でこんなことをやれば経営者は株主にクビにされてしまいます。株主に訴えられる可能性も否定できません。

株主に文句を言われない形で内部留保を減らすにはどうしたらいいのかということを考えたとき、“配当を出す”という選択肢が出てきます。

なぜなら株主への配当を行う場合、利益剰余金の中から利益準備金を計上することが法律で定められているからです。利益準備金にはもともと「株主や債権者の保護」という大切な役割があります。

マナ
利益余剰金や準備金は株主へ共有することが法律で定められていて、内部留保を問題なく減らすことが可能というわけですね。

その通りです。

実際、使用目的が定かではない不要な現金をため込むことは企業経営的には褒められたことではありません。

マイクロソフトは2004年から4年間で8兆円もの、史上空前の配当(※配当と自社株買いを含む株主還元)を行いました。

(マイクロソフトに何が起きたのか? “配当しない会社”の決断 (1/2) 参照:http://bizmakoto.jp/makoto/articles/0902/09/news017.html)

マナ
配当を渡せば内部留保が減るんですよね?でもどうしてまだまだ日本には内部留保を抱える会社が多いのですか?

実は配当にも20%の税金が課されるのです。そのため企業は配当金を配ることを躊躇しているのかもしれません。

また仮に政府が課税を取り払った場合、マスコミや世間から「金持ち優遇と批判を受ける」可能性もゼロではありません。

マナ
これが最善策!という方法がありませんね。

内部留保に課税するとどうなるか?

マナ
以前希望の党が、内部留保に課税をすることをマニュフェストとして掲げていましたよね!仮に課税したとすると何が起こるんでしょうか。

上記で説明してきたように、給料を上げたり設備投資をしたりしても赤字にならない限りは内部留保に影響はなく、結局企業がやることは課税を避けるために配当や自己株買いしかありません。

マナ
配当や自社株買いをして株主還元が増えるのはいいと思うのですが…

そうですね。株主への還元が増えることは決してマイナスではありません。もしかすると経済全体でプラスの効果も見込める可能性も秘めているかもしれません。

※Fincleでは自社株買いについてもわかりやすく解説しています。気になった方は下記のリンクをチェックしてみてください♪

自社株買いとは?会社が自社株を買う目的や懸念点について詳しく解説します!

しかし課税を避けるために配当を払うことが必ずしも健全な経済状況・活動をもたらすとは限りません。

例えば、先ほど説明したマイクロソフトのように成長期には配当を出さずに再投資に回して資金を外部流出させないなどの経営戦略が練りにくくなる恐れがあります。

再投資にも十分なお金が回せない→ならば配当として投資家に渡そう→新たな事業に挑戦できない

というフローが生まれてしまいます。アイディア勝負のこのご時世。このままでは企業の首を絞めてしまい、経済的競争力の低下にも繋がりかねません。

本当に内部留保課税を行うのであれば、配当の非課税化くらいはやらなければ資金調達で混乱をきたす恐れがあります。

しかし配当の非課税化は裕福な人のみが得するとして多方面から批判されると思うのでおそらく実施されることはないかと思います。

マナ
私たち市民のために、大儲けしている大企業を懲らしめるための「内部留保への課税」を政治家はよく謳っていますが、果たしてそれが日本全体の利益になるのかきちんと考えなければいけないですね!

(東洋経済オンライン 内部留保をわかってない人に教えたい超基本 参照 https://toyokeizai.net/articles/-/193444?page=3)

おわりに

今日は内部留保について詳しく見ていきました!「内部留保の概要」や「現金と内部留保の違い」については理解できましたでしょうか?

最後にもう一度要点を振り返っておきましょう♪

売り上げ-(費用+税金)=純利益 

 純利益-(役員報酬+配当)=利益剰余金や利益準備金(≒内部留保)

②内部留保は現金・株・設備など、どのような形態で保有されているかわからない

③内部留保を減らすことは可能だが、現実的な策がない

④内部留保に課税をすると企業の競争力を弱める

でしたね!

この記事が少しでも皆さんのお役に立てれば幸いです。

マナ
以上、マナがお伝えしました。