障害者控除ってなに?控除を受けられる条件や申請方法を調べてみた!

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日本には、一定の条件に該当した場合、本来支払うべき税金の額から、若干額を引くことができる”控除”の制度があります。控除には医療費や住宅ローン、保険料の支払いなどで大きくなる税負担を軽減するものが代表的ですが、その中に「障害者控除」と呼ばれる控除があります。

近年”ブラック企業”や過労死といったキーワードが目につくようになりました。それと共に、精神的に病んでしまう人も少なくないと思います。「障害者控除」は精神面の病気でも適用されるため、精神的に追い込まれてしまった時の経済面の不安を軽減してくれる大切なものです。

そこで今回は「障害者控除」の条件や申請方法など、近年避けては通れないであろうメンタルヘルスの話題もふまえてご紹介していきます。

障害者控除について

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まずは「障害者控除」そのものについてご紹介していきます。名前は聞いたことがあっても、その詳しい内容をはじめからしっかり把握できている人は少ないと思います。障害者控除の内容について理解を深めていきましょう。

障害者控除とは

障害を負った人はもちろんのこと、障害を負った人の”面倒をみる”親族にも配慮される控除のことです。「障害者控除」「特別障害者控除」と呼ばれています。

これらは所得から差し引かれる「所得控除」のひとつであり、控除の”税金負担能力が低い場合には軽減を”という考え方が基盤となっています。「特別障害者控除」についても、障害を負った人の面倒を見ている人の税金負担がそのままでは経済的に追い込まれてしまうために、配慮されているものです。

控除を受ける条件は

障害者は身体や精神に障害がある人を指しています。そのため、障害者控除を受けるためには、以下の用件を満たしている必要があります。

  • 児童相談所、知的障害者更生相談所、精神保健福祉センター、精神保健指定医の判定で知的障害者と判定された人※1
  • 精神保健および精神障害者福祉に関する法律より、精神障害者保険福祉手帳の交付を受けている人※2
  • 身体障害者福祉法の規定により交付を受けた身体障害社手帳に、身体上の障害がある人と記載されている人※3
  • 戦傷病者特別援護法の規定により戦傷病者手帳の交付を受けている人

※1 重度の知的障害者と判定された人は、特別障害者に該当します

※2 障害等級が1級と記載されている人は、特別障害者に該当します

※3 障害の程度が1級又は2級と記載されている人は、特別障害者に該当します

控除額はいくら?

障害者控除は、納税者自身が障害者の場合だけでなく、配偶者控除の対象である配偶者が障害者の場合、扶養親族の中に障害者に該当する方がいる場合でも適用されます。

先で紹介した障害者の要件に該当している場合、障害者1人につき27万円(特別障害者であれば40万円)を所得から差し引くことが可能となります。また紹介した配偶者や扶養親族が特別障害者であり、納税者や納税者の配偶者、納税者と生計を一にする親族と同居していた場合には、控除額は75万円に引き上げられます。

後にもご紹介しますが、障害者控除は”うつ病”でも適用されます。私自身”双極性障害”と診断されたこともあり、体験談や記事執筆のために”うつ病”などの資料を調べる機会が多いのですが、夫婦共働きをしていて、そのどちらかが精神的に追い込まれてしまって”うつ病”に・・・といった記事を見かけることがありました。

けれどもこのような制度があることを知っていれば、長期的な治療が必要になる”うつ病”の治療に専念している間の経済的負担を軽減できることは確かなので、もしまだこの制度を知らない、活用できていない、という人はぜひ「障害者控除」が申請できるかどうか、すぐにでも確認してほしいと思っています。

参考文献:障害者控除とは

申請方法について

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障害者控除を申請する方法についてご紹介します。所得控除のひとつですから、特別な書類が必要になるということはなく、年末調整や確定申告に「障害者控除」に関する事項を記載するだけです。確認してみましょう。

申請方法は?

サラリーマンのような勤務先から給与を得る人の場合、勤務先に提出する「扶養控除等(異動)申告書」に必要事項を記載することで「障害者控除」の申請を行なうことができます。記載する場合には「誰が障害者に該当しているのか」「障害の状況」を明記する必要があります。

個人事業主の方や、会社員の方で年末調整ではなく個人で確定申告をする場合、その確定申告書に「誰が障害者に該当しているのか」「障害の状況」を明記し、控除される金額を”自ら”申請する必要があります。

提出する際には、特に証明書の添付は必要ありません。しかし会社によっては証明書のコピーが必要になる場合もあります。税務署や関連する役所などが障害者に該当するかどうか確認を取ることもありますから、問い合わせを受けた場合には、詳細に答えるようにしましょう。障害者手帳などを手元に用意しておくといいですね。

 

参考文献:障害者控除を受けるための手続(黙っていたら税金は減りません!)

確定申告は必須?

もし障害者手帳の交付を受けた本人が収入を得ている場合には、確定申告をする必要があります。しかし課税対象とならない場合には必須ではありません。前年度の所得総額が125万円までであれば、課税対象とはなりませんので、その場合には確定申告は不要と言えます。

ただし、申告漏れ等々で後々面倒な事になっても困ると思います。自分の状態が分からず、不安な場合には、最寄りの税務署に問い合わせることをおすすめします。

参考文献:障害者控除とは?障害がある人が受けられる税の優遇措置まとめ

注意点

障害者に該当する方は、上記で紹介した『控除を受ける条件は?』にある条件の通りなのですが、昨今「要介護認定を受けている=障害者に該当」という誤解がよく見受けられているとのことです。介護の認定と障害者の認定は、介護保険法の規定と所得税法の規定、規定そのものが別なので関係ありません。

うつ病でも受けられるってホント?

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障害者は、身体面だけでなく精神面における障害を負っている方のことも指します。そのため”うつ病”といった近年珍しくない精神面の病気においても、「障害者控除」は受けることができます。

うつ病でも受けられる

障害者控除の障害は、身体障害、知的障害だけでなく精神障害も含め、全ての障害が対象となっています。控除額に関しては、障害の投球や家庭環境によって変わってきますが、精神面だから身体面だから、といって額面が変わる、といったことはありません。

それが障害に当たるかどうか、これを決める基準は法律で決まっています。うつ病でも障害者控除を受けることは可能ですが、そのためにまずは”障害者手帳”の交付が必要になってきます。本人が申請することで、精神障害者保険福祉手帳が交付されることになります。

精神障害者保険福祉手帳は、1級から3級といった等級に分けられ、有効期限は2年間となっています(更新する場合には、有効期限の3ヶ月前から更新手続きが可能)。交付の対象となる方は初診日から6ヶ月以上経過している方です。以下のような障害が挙げられます。

  • 統合失調症
  • うつ病、そううつ病(双極性障害)などの気分障害
  • てんかん
  • 薬物やアルコール急性中毒または依存症
  • 高次脳機能障害
  • 自閉症、学習障害、ADHDなどの発達障害
  • その他ストレス関連障害等

参考文献:うつ病でも受けられる税の優遇措置、障害者控除とは?

障害者手帳を持っておくとこんな利点が

上記で紹介した「精神障害者保険福祉手帳」の他に、障害者手帳には「身体障害者手帳」「療育手帳」があります。

持っておくと得られる利点には、退職した時、失業保険の受け取れる日数が通常90日のところが300日になるところではないでしょうか。ただし、失業保険をすでに受給している場合には日数変更ができない点に注意してください。

また復職を希望しているのであれば、ハローワークの障害者枠の求人に応募することが出来ます。日本には「障害者雇用率制度」があります。これは会社が、雇用している労働者数の2,0%以上の障害者を雇用しなければならないという制度です。雇用がないと罰金も発生する制度ですから、一般求人より決まりやすいという利点があります。

その他、バスや電車といった公共交通機関の運賃割引や公共施設利用料の割引等を受けることができますよ。

障害者手帳の申請に必要なもの

障害者手帳を申請する場合には、以下のものを用意しましょう。

  • 障害者手帳交付申請書
  • 印鑑
  • 初診日から6ヶ月以上経過した時点での診断書
  • 写真1枚(縦4cm×横3cm)

これらを持って、住んでいる地域の専用窓口(自治体によっても窓口は違うが、基本的には”保健福祉担当課”でOK)で申請します。交付までに1~2ヶ月ほどかかりますが、これで申請は完了です。

参考文献:うつ病で障害者手帳を取得できる?メリット・デメリットや申請方法を紹介!

うつ病による経済面の不安をサポート!

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厚生労働省の調べによれば、うつ病にかかったことがある人は多い時で約15人に1人というのが現状です。1999年にはうつ病の患者数は44.1万人だったのですが、2008年には104.1万人という数値が出ています。

そんなもはや珍しくない存在である”うつ病”による経済面の不安をサポートする制度、これはまだまだ沢山存在します。ここからは「障害者控除」以外にも活用すべき制度についてご紹介します。

こんな収入が得られることを確認しよう

もし会社に勤めていたあなたがうつ病になってしまったら、早い段階で不安になるのが収入面だと思います。

というよりも、私自身がそうでした。学生時代に”双極性障害”の診断を受けていましたが、会社勤めをしていた時、精神面が疲弊してしまい”自律神経失調症”に。休職せざる得ない状況になった時、収入はどうしたらいいだろう・・・という考えが頭をよぎりました。

でも大丈夫です。使える制度を使って、療養期間中の金銭的不安を解消していきましょう。働いていた時と全く同じだけの収入を得られることはありませんが、療養中は休むことが一番です。最低限の生活に必要なお金さえそろっていれば、使える制度で得られる収入で、十分足りるはずですよ。

まず有給休暇の申請を行ないましょう。皮肉に思えるかもしれませんが、きっと精神的に追い込まれてしまった人の有給休暇消化率は低いはずです。その分、療養期間中はその有給休暇分の収入でも経済的に十分助かる場合があります。

またパワハラなどが原因の場合、労災認定を受けた場合に、労災保険が降ります。給与の約8割が休業補償として得られるだけでなく、治療費全額が療養補償となります。またあまりにもひどいパワハラ等の場合には、上司等に対する損害賠償請求も認められています。

もちろん、労災認定されるほどの状態に追い込まれないことが一番ですが、もしこのような事態に陥った場合には、泣き寝入りせず、受け取れるものは受け取るべきだと考えています。なぜなら、追い込まれるまであなたは頑張った訳ですから。

退職後は確定申告で還付を

会社に籍がある場合は、年末調整を行なってもらえるため、各種税金手続きを会社に任せることができますが、もし年と途中で退職した場合には確定申告をする必要があります。

確定申告の書類を作成するのすら、うつ状態の時にはつらいかもしれません。しかし、医療費が10万円を超える場合には医療費控除を受けることもできますから、通院や薬物両方で費用がかかっている場合には、しっかり確定申告を行い、お金の還付を申請しましょう。

参考文献:うつ病と税金

自立支援医療制度について

うつ病の治療はひと月に数回通院する必要があります。保険診療のため1回の通院にかかる費用は、健康保険証を提示することで3,000円〜6,000円で済みますが、うつ病は短期決戦で治る病気ではありません。定期的に通院し、根気づよく治す必要があります。

私も”双極性障害”で薬物療法を行なっていた時は2〜3週間に1回かよっていましたが、単純計算しても1年間の出費は数万円単位となかなか大きなものです。

そんな時に活用できるのが「自立支援医療制度」です。精神科等に通院する際にかかる医療費の自己負担を1割にできる制度となっています。もちろん健康保険加入家族の全体の所得によって上限額は決められていますが、それでもすべての精神科の病気が対象ですから、精神的に追いやられてしまった人にとっては経済面でも精神面でも支えになる制度と言えるでしょう。

世帯の所得状況上限額
生活保護負担額:0円
市町村民税:非課税
本人収入≦80万円
本人収入>80万円
2,500円
5,000円

申請方法について

「自立支援医療制度」は申請書と障害者手帳があれば、申請することができます。申請にかかる費用は無料で、住んでいる地域の障害福祉課などで申請が可能です。有効期限は1年間ですが、継続申請も可能ですから、この制度を活用しつつ根気づよく治療を続けていきましょう。

参考文献:うつ病 自立を支援する制度

傷病手当金って知ってる?

また私が”自律神経失調症”で休職している最中にお世話になった制度に「傷病手当金」があります。これは会社員や公務員が利用することのできる制度です。注意点として、個人事業主など国民健康保険の被保険者は受けることができないという点が挙げられます。

病気やケガによって会社を”連続して”3日休んだのであれば、その4日目以降の休んだ日から支給が可能となります。支給される金額は日割給与の3分の2ですから、休んでいる最中の収入としては十分だと言えます。病気やケガで収入が得られない状態であれば、最長で1年半「傷病手当金」を受け取ることができます。

私も実際、休職中にこの制度を活用させてもらいましたが、金銭面での不安が軽くなる分、治療に専念することができ、心身を十分に休めることができました。

うつ病になってしまうと、すぐに会社を辞めるという選択肢もありますが、傷病手当金という制度を活用し、勤務先と相談しながら復職に向けてゆっくり取り組むのも悪い話ではないはずです。

お金を受け取るのはなんだか気が引ける・・・と思いがちですが、貯金を切り崩しながら治療を受けるぐらいなら、この制度で得られた収入から治療費を工面し、しっかり療養することをおすすめします。うつ病はもはや珍しい病気でもないのですから、誰がなってもおかしくないのです。だからこそ、受け取れる制度をしっかり受け取り、治療に専念していきましょう。

参考文献:うつ病になってしまったら・・・「お金」の不安を減らす3つの制度

障害について今一度考えよう

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”障害者”について今一度考えてみましょう。「障害者控除」を受けることができるのは、障害を負った全ての人達です。先に紹介したように精神的な障害を持つ人は、外見面からは分かりにくいため、判断しかねることもあるかもしれません。

最後に障害者の権利を実現するための条約や、差別をなくすための法律についてご紹介します。

障害者権利条約って知ってる?

障害者権利条約とは、障害者の権利を実現するために”国”がすべきことを定めた条約です。障害者の人権や基本的自由を守るために制定されています。難しい言葉のように思えますが、本来であれば当たり前の話であり、障害者が自分らしさを大切にできる社会のためには必要な条約とも言えます。

この条約が制定される際には、障害者団体の方も話し合いに参加しました。「Nothing About Us Without Us」「私達のことを私達抜きに決めないで」という、障害者の間で知られている考え方を大事に、話し合いに参加、条約は当事者の方の意見もしっかり取り入れられながら制定されました。

障害者権利条約の第2条には、有名な制定があります。それは「合理的配慮をしないことは差別になる」ということです。合理的配慮、というのは障害を負った方が困ることをなくしていくため、無理のない範囲で会社や周りにいる人達がすべき配慮のことを指します。

しかし実際には、まだまだこの合理的配慮の考え方が浸透していないようにも思えます。

参考文献:「障害者の権利に関する条約」の締結

障害者差別解消法って知ってる?

そんな「合理的配慮」を法的に定めたものがあります。それが2016年4月1日に開始された「障害者差別解消法」です。これは”障害者”と書かれてはいますが、障害の有無にかかわらず”あらゆる人”が生きやすい社会を目指すことを目標に制定されています。

本来であればこの「合理的配慮」は、人と人が接する上でごく当たり前にできることだと考えています。しかしこのような法律で施行されることにより、よりいっそう人々が他の人々に対して行なう配慮への関心が強く向くのではないでしょうか。

障害による差別を解消することが目的ですが、障害者手帳を持つ人=障害者、とはなっていません。この法律では「身体障害、知的障害、精神障害(発達障害を含む)その他心身の機能障害がある者であり、障害及び社会的障壁により生活に相当な制限を受ける状態にあるもの」が”障害者”とされています。

今回着目した「障害者控除」は所得税控除という役割を担うため、障害者手帳は申請に必要になりますが、この制度では社会の在り方を変えるために、どんな人に対しても「障壁」に気づく心を持ち、柔軟に対応することが求められています。

ちなみにこの法律では、障害者差別に対する期間の設置などは定められていませんが、相談機関の充実化は図られているようです。障害のある方が相談に訪れやすいような環境や、問題の防止・解決に向けた体制をとる地方公共団体もあります。

法律とはいえ、差別や合理的配慮の不提供があるからといって、罰則が発生するという訳ではありません。ただ何度も繰り返し差別行為が行なわれる場合等に関しては、それらを行なった事業者に対して、事業を担当する大臣直々に報告や指導、勧告が行なわれるケースもあります。

この報告に対して、報告を怠る、虚偽の報告をするといった行為をした場合には、20万円以下の罰則が科せられることもあります。

差別と合理的配慮の例

どのような行為が不当な差別等行為にあたり、どのような行為が合理的配慮と呼ばれているのでしょうか。

まず不当な差別行為ですが、例えば「障害者お断り」という入居者募集等を行なってはならないなどが挙げられます。普通に考えれば、全くもって当たり前の話ですが、ごく自然にこのような言葉を言ってしまう人がいるのも現実なのです。また障害を理由に、乗車や入場を拒否してはならないなども挙げられます。

合理的配慮においては、例えば個々の障害者の求めに対して、バリアフリーを提供できるよう努めることなどが挙げられます。コミュニケーションボードの活用や、声かけなどもそのひとつに当たるでしょう。

参考文献:障害者差別解消法とは?制定の目的や対象、支援体制などについて

まとめ

今回は「障害者控除」について調べてみました。障害者控除は、障害を負っている当人はもちろん、障害を負っている方の面倒を見ている配偶者や親族にも適用される所得控除のひとつです。

控除の申請方法は、サラリーマンの方であれば、年末調整の際「扶養控除等(異動)申告書」に必要事項を記載、または確定申告の必要箇所に記載することで申請は可能です。添付書類等は必要ありませんが、確認を取る場合もあるので障害者手帳等の資料を手元に準備しておくことをおすすめします。

うつ病にも適用される障害者控除を申請する際、当人が障害を負っている場合には、時に申請が億劫に感じてしまうこともあるかもしれませんが、経済面の負担が軽減するだけでも心はラクになるものです。申請できるものは積極的に活用し、経済的に支えてもらうことをおすすめします。