日本人であれば国民皆保険、つまり健康保険に加入します。日本における健康保険の補償は非常に手厚く、優れていますが、この保険でもカバーし切れない部分があります。それを補ってくれるのが「民間の医療保険」です。
このように日本には公的医療保険(健康保険)と民間の医療保険が存在しますが、それぞれどのように違い、民間の医療保険にはどのような特徴があるのでしょうか。
今回は民間の医療保険を中心に、医療保険の種類や必要性、選び方、そして各社が提供している保険についてご紹介します。
医療保険とは
いざ病気・怪我をして医療費の出費がかさんでしまった時には、健康保険や医療保険が大きな助けになります。「健康保険や医療保険」という言葉が出てきましたが、日本には2種類の医療保険があります。
これらはどのように異なり、そして民間の医療保険はどのような特徴を持っているのでしょうか。まずは、健康保険と民間の医療保険の違いについて確認してみましょう。
医療保険は2種類ある
医療保険とは病気になったり、怪我をしたりして病院にかかった時の負担額を補償してくれるものです。医療費の出費を補ってくれるものなのですね。
そして、一口に医療保険と言っても実は2種類の保険が存在します。それは次の2つ。
- 公的医療保険
- 民間の医療保険
日本にはこの2種類が存在するのです。
公的医療保険とはいわゆる「健康保険」のことです。日本に住んでいれば大半の人が「健康保険」に加入しています。会社勤めの方であれば「社会保険」、自由業・自営業の方であれば「国民健康保険」に加入していますよね。
「公的な医療保険(健康保険)があって、日本に住んでいるほとんどの人が加入しているなら、その保険1つで十分じゃない?」と疑問に思いますよね。なぜ、民間の医療保険が存在するのでしょうか。
実は、健康保険だけでは補償の手厚さに欠けるという欠点があります。この欠点をカバーするために民間の健康保険が存在するのです。
公的医療保険と民間医療保険の違いは?
それでは、公的な医療保険と民間保険はそれぞれどのような違いがあるのでうしょう。
公的な医療保険の最大の特徴は必要最小限の補償と万人に平等であることです。公的医療保険の場合は誰でも加入することができます。また、様々な経済状況の方が加入するので、保険料も収入によって変わります。
その一方で民間の医療保険の場合、加入には条件や審査があり、保険料は「年齢・性別・補償内容」によって異なります。民間の医療保険の方が門戸の狭い印象があります。また、民間の医療保険に加入する際には健康状態が非常に重視されており、加入時に既に病気にかかっている方は審査に通りません。ただ、病気を患っている方でも、加入することのできる保険も存在します。こちらについては、<加入条件>の項目で詳しくお伝えしますね。
公的医療で補償されない費用とは?
ここまで公的医療保険と民間の医療保険の違いについて確認してきましたが、実際、公的医療保険で補償されない費用には具体的にどのようなものがあるのでしょうか。
代表的なものとしては3つ挙げることができます。
差額ベット代
個室・2~4人の少人数部屋に入院した場合には、1日大体6000円ほどの差額ベッド代が必要となります。入院がいつまで長引くか分からないにもかかわらず、毎日6000円もかかってしまうと家計にも負担がかかりますよね。また、入院先の病院や入院の期間によっては、さらに高額になることもあります。貯蓄の少ない方にとっては大きな痛手となってしまうのです。
入院中の食事代、諸経費
食費は健康保険区分によって異なりますが、入院中にかかる食費は通常一食260円です。この他にも、家族がお見舞に来るための交通費やパジャマなどの衣類の購入費などの出費も発生するので、意外と家計への負担が大きいのです。
先進医療の費用
先進医療を受ける際にかかる費用も公的医療保険の補償の対象外となっています。したがって、先進医療を受ける場合は数百万円自己負担になる場合もあります。これほど多くの金額を負担しなければならないのは大変です。民間の医療保険では先進医療も補償の対象となるので、負担も軽くなり家計への圧迫も減らすことができます。
※先進医療:
先進医療とは厚生労働大臣により、将来公的医療保険の適用が考えられるものとして定められた医療技術のことです。大学病院などで開発・研究された治療法の中でも、その効果や安全性が認められています。
医療保険の種類
医療保険には「終身型」と「定期型」の2つの種類があります。この2つの保険の種類について確認してみましょう。
「終身型」
終身型の医療保険は、保険が一生涯続く保険です。つまり契約期間の期限が設けられていないということです。終身型のメリットはいつかかってしまうか分からない病気をいつでも補償してくれる、入院・通院が必要となりやすい高齢期になっても安心できるという点です。
ただし、メリットがある反面、デメリットもあります。毎月の保険料は「定期型」よりも高くなる、契約を更新することがないため保険の見直しをすることができない、などのデメリットが挙げられます。また、途中で解約すると損をしてしまうという点も難点です。加入の条件となる健康状態の基準も厳しく設置されています。
「定期型」
定期型の医療保険では一定の契約期間が設定され、5年や10年の間のみ保険料を支払い、この間に限って補償を受けることができます。特徴は年齢が上がるごとに保険料が高くなるということです。
定期型の保険がおすすめの方は、次の通り。
- 貯蓄が貯まるまでの期間のみ、万が一の場合に備えて保険に加入したい
- 子どもが幼い間のみ、入院の際の出費に備えたい
このように定期型は、ある一定の時期にだけ、万が一の場合に備えておきたい方におすすめです。
医療保険が必要な人は?
医療保険に加入する前には、そもそも自分にとって必要なものなのか確認する必要があります。そのためにも、どのような方にぴったりの保険であるか把握しておきたいですよね。
医療保険に加入しておくと良い方は、今貯蓄ができていない方、自営業の方、小さなお子様がいる方です。
現在貯蓄が不十分な場合には、万が一病気で多くの医療費がかかった時に自分の貯蓄が少ないため、自己負担が家計に響いてしまいます。少しでも生活を楽にするためにも、医療保険への加入は大きな心の支えにもなるのです。
また、自営業の方は、会社員の方とは違って福利厚生を受けることができません。そのため、国民健康保険だけでは補償が手薄で万が一の場合に十分な補償を受けることができません。お金はかかってしまいますが、多額の医療費が必要になった時には手厚い補償を受けることができるので、安心ですね。
加入する目的
医療保険に加入する目的は、その補償内容を把握することを通して理解することができます。ここでは、加入する目的を知るために、医療保険の補償内容について確認してみましょう。
医療保険の補償は、公的な医療保険ではカバーされない部分を補ってくれます。代表的な補償は次の通りです。
通院給付金
通院給付金とは、退院後に通院した時に受け取ることができるものです。
先進医療給付金
先進医療を受けた時に給付されるものです。
がん診断給付金、がん手術給付金
この補償は特約として医療保険に付加することが可能です。ただ、保険会社によっては特約としてではなく、医療保険の保障内容そのものに組み込まれている場合もあります。
放射線治療給付金
これは放射線治療を受けた時に、受け取ることのできる補償です。
三大疾病・七大生活習慣病の保障
この保障は三大疾病や七大生活習慣病の中でも、所定の病気について手厚く保障してくれるものです。ちなみに三大疾病とはがん、急性心筋梗塞、脳血管疾患の総称であり、七大生活習慣病とは三大疾病に加え、糖尿病、肝疾患、腎疾患、高血圧性疾患を含めた総称です。
女性疾病入院特約
乳がん・子宮がんなど女性特有の疾病にかかってしまった時に、受け取ることのできる補償です。「医療保険」の特約ではなく、「女性保険」という保険もあるので、詳しく知りたい方は女性保険についての記事もご参照くださいね。
関連記事:20代と30代におすすめ!女性保険の選び方や比較ポイントについて
加入条件
民間の医療保険が公的医療保険と大きく異なる点は、「誰でも加入できるわけではない」という点です。なぜなら、民間の医療保険に加入するためには審査を受け、無事通る必要があるからです。
どのような人が審査に通るのかというと、「健康に問題のない人」です。審査の時点で怪我・病気を患っている方は加入することができません。なぜなら、医療保険では、病気にかかったり、怪我を負ったりした「まさにその時」に、給付金を受ける必要があるためです。
このように大雑把に言ってしまうと「健康な人」が審査に通るのですが、この審査基準となるのは2点です。それは、「現在治療中の怪我・病気はないか」、そして「過去5年間にかかった病気、負った怪我はないか」という点です。この2つの基準を無事満たすことができれば、保険に加入することができます。
ここで気になるのは、病気を患った人は医療保険に加入することができないのかということです。実は、絶対に加入できないというわけではありません。
というのも、医療保険には過去に病気を患ったことがあっても加入することのできる「無選択型医療保険」、「引受基準緩和型医療保険」という種類の保険があるからです。それぞれの特徴は次の通りです。
無選択型医療保険
「無選択型医療保険」は無条件で加入することができます。
ただし、保険金・給付金の上限が低く設定されており、万が一の場合にも数百万円しか受け取ることができない場合もあります。
また、保険料が高いこともデメリットの一つに数えられます。振込総額が、万が一の場合に受け取ることのできる保険金を上回ってしまうこともあるので、非常に割が合わないのです。
さらに、以前患っていたけれども現在は治っている病気(既往症)が再発したことによる入院・手術は補償の対象となってしまう点に注意が必要です。
引受基準緩和型保険
「引受基準緩和型保険」は通常の医療保険よりも審査基準が緩いという特徴があります。
引き受けてもらうことのできるハードルは低くなりますが、その代わりに保険料は1.6~2倍と高くなります。また、病気を患っていても加入することは可能ですが、契約から1年経つまでは補償額が半分になってしまうという難点もあります。
メリット
医療保険に加入する前にはご自身にとって本当にメリットのあるものなのか知っておきたいところです。ここでは、医療保険に加入することでどのようなメリットを受けることができるのか確認してみましょう。
・家計への負担をおさえることができる
医療保険のメリットとしては、病気などで医療費がかかってしまった時に、給付金が支払われるという点です。先進医療を受ける場合には一度の治療で200万円以上もかかってしまうこともあります。これほど多くの出費を抱えてしまうと、貯蓄が十分に無い限りは家計に負担がかかってしまいます。しかし医療保険に加入していれば、先進医療の費用も負担してもらうことができるので安心です。
このように医療費を負担してくれるため、医療保険に加入しておくと万が一の場合にも収入が減ってしまうのを少しでも防いでくれるのです。
病気になりやすい高齢期を安心して過ごせる
終身タイプの医療保険であれば、病気や怪我をしやすく収入も減る高齢期を安心して過ごすことができます。
充実していると言われる日本の公的医療保険ですが、高齢化の影響で医療費が増加し続けているため、将来も現在のような手厚い保障を受けることができるかどうかは分かりません。したがって、将来の高齢期に備えて医療保険に加入しておくのは非常に安心でしょう。
リスクに見合った特約を付けることができる
医療保険は入院給付金と手術給付金を基本のセットとして、さらに様々な特約を付けることができます。特約としては、放射線治療に備えた「放射線特約」、子宮がんや乳がんに備えた「女性特約」、公的医療保険で対象外となる「先進医療特約」を挙げることができます。
これらの特約は数百円程度で付加することが可能です。人それぞれ自分のリスクは異なるため、これらの特約から必要なものを選択し、自分に合った医療保険にできる点が魅力です。
税金優遇がある
医療保険に加入していると、保険料の金額によっては税金を安くすることができます。というのも、医療保険は生命保険控除の一部であり、死亡保障などの生命保険料とは別枠で控除申請を行うことができるからです。年間で払った保険料のうち、一定額までが所得控除の対象となるため、所得税・住民税が安くなるのです。
デメリット
メリット以上にデメリットが大きいのではないか。そのように心配される方も多いでしょう。加入する意味が本当にあるのか見極めるためにも、デメリットを確認しておきましょう。
日本の健康保険は充実しているため、医療保険が不必要な場合も
医療保険のもう一方である「公的医療保険」は国民皆保険であるため、本来日本国民全員が加入しているはずの保険です。
この保険に入っているだけで、実は非常に手厚い補償を受けています。なぜなら、公的医療保険には「3割負担」と「高額療養費制度」というものがあるからです。
「3割負担」とは、健康保険証を病院の窓口で提示することで、医療費をわずか3割負担すれば良いものです。本来10万円かかる医療費が3万円で済むのです。
一方で「高額療養費制度」とは、医療機関や薬局の窓口で1カ月間に支払った金額が、個々の収入に応じて決められた自己負担の限度額を超えた場合に、その超過分を「高額医療費」として受け取ることのできる制度のことです。「高額療養費制度」については次の記事で詳しく紹介しているので、ご興味のある方はご参照くださいね。
関連記事:得する高額療養費制度はいくらから? 仕組みや計算について徹底解説!
このように公的医療保険から、大きな恩恵を受けているために、人によっては医療保険に入ってもあまりメリットを感じられない場合もあるのです。
メリットがないのに、毎月保険料を払い続けるのはお金の無駄ですよね。たとえ月々の保険料が少なかってとしても、「ちりも積もれば山となる」。何十年も払い続けると金額が大きくなります。月々数千円の保険料は数十年後、数百万円にもなるのです。
保険は安心材料にはなりますが、万が一のことが起らない限り、お金の無駄になってしまいます。自分が抱えるリスクと保険に入ることのメリットをしっかりと吟味して加入を決めましょう。
医療保険に加入しても全額補償してくれるわけではない
医療保険には「支払限度日数」というものがあり、この範囲内でのみ給付金を受け取ります。したがって、入院日数が定められた限度を超えてしまった場合には、超えた分に関しては補償を受けることができないのです。
あくまでも契約の時点で取り決めた限度の金額までしか給付金を受けることができないので、全額負担してくれるわけではないのです。
提供している会社は?
さて、医療保険の内容について詳しく確認してまいりましたが、これから加入したいと考えている方にとっては、どの医療保険がベストなのかということが問題でしょう。ここでは、まず医療保険の選び方を確認し、その次に各社が提供している保険の特徴についてご紹介します。
医療保険の選び方
保険を選ぶ際にはいくつかおさえておきたいポイントがあります。そのポイントを重視して保険を吟味することで、ご自身にとって最善の保険を選ぶことができるのです。
保険を選ぶ際に注目したいポイントは5つ。
- 入院給付金日額
- 入院の限度日数
- 特約
- 保険料払込期間
- 保健期間
この5つのポイントをしっかりと確認して選ぶことが大切です。人それぞれ自分に合う条件は異なるので、ご自身の場合には何が必要なのか熟考した上で保険を選びましょう。
おすすめの保険
医療保険の選び方をしっかりとおさえたら、次はおすすめの保険について見てみましょう。先ほどもお伝えしたように、個人によって保険で重視するポイントは異なります。ご自身に合った保険を選ぶことができるように、保険の内容にはしっかりと目を通しましょう。
メットライフ生命
メットライフ生命からは「フレキシィ」が医療保険として提供されています。こちらの特徴は次のような利点があります。
- 7大生活習慣病が原因となって入院する場合、特約を付加していれば支払日数が無制限となる
- 3大疾病の範囲が他の保険よりも広い
入院の支払日数が無制限となるのは非常に大きなメリットです。通常であれば、たとえ医療保険で入院の補償を受けることができていても、日数の制限を超えてしまうと、その後の入院費は自己負担となります。その部分をしっかりとカバーしてくれるので、入院費用について不安な方にはおすすめの保険です。
また、3大疾病の範囲について、フレキシィは「心疾患」「脳血管疾患」など疾患全体を補償してくれるので、疾患の一部しか補償してくれない保険よりも非常に安心です。
このようにフレキシィは特約を付加することで、手厚い補償を受けることができる点が嬉しいものですが、その反面デメリットもあります。それは保険料が高いということ、またインターネット申込の場合には終身保険しが選択することができないということです。「定期型」の保険を申し込みたいのであれば、保険ショップで申し込む必要があるということをおさえておきましょう。
ホームページ:メットライフ生命
オリックス生命
オリックス生命は「新キュア」という医療保険を提供しています。
この保険の場合は、3大疾病による入院であれば支払いの日数が無制限となる点が特徴的です。一方、7大生活習慣病による入院には日数制限が設けられており、120日までとなっています。また、がん一時金を年に1度受け取ることができます。
これだけでも、かなり補償が手厚いのですが、さらにティーペック社の健康相談サービスが付いており、これを無料で利用することができます。実はこのサービス、個人で利用すると1年あたり10万円以上もかかってしまいます。それを無料で利用できるのですから、利用したい方にとってはかなりお得ですね。
公式ホームページ:オリックス生命
メディケア生命
メディケア生命は医療保険「メディフィットA」を提供しています。「メディフィットA」の特徴としては、3大疾病が原因となった入院の支払い日数が無制限であること、7大生活習慣病による入院の日数制限が120日までとなっている点が挙げられます。
かなりオーソドックスな内容ですが、比較的に保険料も手ごろで補償が手厚いのが嬉しい保険です。
これ以外の特約としては「先進医療特約」「通院治療特約」「女性疾病入院特約」「がん入院特約」「抗がん剤治療特約」「がん診断特約」など豊富に揃っており、ご自身にとってリスクの高いものに応じて選ぶことが可能です。
公式ホームページ:メディケア生命
アフラック
アフラックの医療保険は「ちゃんと応える医療保険EVER」を提供しています。この保険は手軽な保険料で今の医療の現状に合わせた医療保険に加入したい方におすすめ。大きな特徴は4つあります。
- 日帰り入院をはじめとした短期の入院をしっかりと保障
- 病気・怪我の入院前後の通院治療を保障
- 入院中の手術のみならず外来による手術・放射線治療を受けた場合にも保障
- 特約の付加で、がん・急性心筋梗塞・脳卒中などの三大疾病を手厚く保障
これらの特徴だけでなく、健康や医療に関して相談したい場合には「24時間健康電話サービス」診断、治療方法について相談したい時には「セカンドオピニオンサービス」、専門医を探したい場合には「専門医紹介サービス」を利用することができます。
公式ホームページ:アフラック
最後に
医療保険は、必ずしも入らなければならない保険ではありません。この記事でも確認したように、貯蓄が十分ある方や会社員であり手厚い保障を受けることができる方にとっては不必要です。
ただ、貯蓄の少ない方、自営業の方はいざという時に医療保険に加入しておくことで、経済面で大きな助けを得ることができます。
それぞれの状況を慎重に判断した上で医療保険への加入を検討しましょう。