あなたは大丈夫?新設された休眠預金活用法で損しないための基礎知識

あなたは通帳をいくつ持っていますか?その通帳すべてを使っていますか?銀行、ゆうちょ、農協、労金など、いろいろな金融機関で通帳を作っていて、長年そのまま忘れていて使っていない通帳はないでしょうか。

今回のテーマは「休眠預金(休眠口座)」です。もしかしたら貴方の持っている口座の預金が休眠預金になっている可能性もありますので、ここからお話しする内容をぜひご覧ください。

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休眠預金とは

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今回は、使わなくなってしまった口座のお話しです。お金(残高)があるにもかかわらず長年そのままになっている預貯金の口座を「休眠預金」といいます。放置するとどうなるのか?そして、そうなる前にしておく事などを詳しくご紹介したいと思います。

休眠預金が出来てしまう理由

一体なぜ休眠預金が出来てしまうのでしょうか。それは誰にでも起こりうることで、実は本人が知らない事もあります。

【1】あなたが産まれた時に、ご両親やおジィちゃんおバァちゃんがあなた名義の口座を開設してコツコツと貯金してくれていた。就職や結婚を機に通帳を貰ったまま使わずに保管していて出し入れはそこから一切していない。

【2】金融機関の通帳はすでにいくつか持っていたが、勤務先のお給料振込口座が会社の指定金融機関だったので新たに口座を開設。その口座はお給料が振込まれる専用だったため、その会社を退社した後は何年も出し入れしていない。

【3】結婚して苗字が変わったが、独身時代に開設した口座には残高も数百円だったためATMから引き出すことも出来ず、そのためにわざわざ窓口に行くのも面倒で名義変更や住所変更もせずにそのまま放置。

【4】父親が宝くじに高額当選し、あなた名義の口座をあなたには内緒で開設し当選金を預け入れ。その数年後に父が急死したが、遺品整理などでも通帳を発見できなかったため通帳の存在すら知らないままになってしまった。

【5】これまで地方銀行の口座を使用していたが、他県へ引っ越しをしたところ今まで取引していた地方銀行がその地域にはなかった。コンビニエンスストアや他の金融機関のATMだと、入出金をする度に手数料がかかるので全国どこでも入出金できるよう都市銀行に残高を移して解約もせず放置。

などなど、例に挙げたものはごく一部です。誰でもやってしまいそうなものもありますね。このようにして残高が高額なものから数円のものまで、とにかく数多くの休眠預金が増えているのです。

いつから休眠預金になるの?

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休眠預金がどんなものかは分かりましたね。では、一体どれぐらいの期間放置(入出金しない状態)になったら休眠預金になってしまうのでしょうか。実は、その年数は金融機関によって異なります。また、定期預金や普通預金などの口座種別によっても違いがあります。

法律で定められた目安

私たちが金融機関に預け入れる現金は、定期預金などを除いてはいつでも自由に出し入れができますね。それは預金者である私たちが金融機関に対して預金を返してもらえる権利(債権)があるからです。

ただし、銀行は5年、信用金庫などは10年の間まったく出し入れされていない(動きのない)口座は、その権利が消滅してしまうことになっているのです。

※ 郵便貯金の場合 ※

郵便貯金の場合は、いつ口座を開設したかによって異なります。これは2007年に郵便局が民営化になったことに理由があります。つまり2007年の民営化になる前に開設したのか、民営化の後に開設したのかによって休眠預金になるまでの期間が違うという事です。

【民営化前に開設した口座】定額郵便貯金、定期郵便貯金、積立郵便貯金の場合は満期というものがあります。この満期から20年と2ヶ月を経過した時点で払い戻しの手続きされていない口座は権利が消滅してしまいます。

普通郵便貯金、貯蓄郵便貯金の場合は、2007年9月30日時点で最後の入出金から20年と2ヶ月を経過していたなら既に休眠預金となっています。そうでない場合は最後の入出金から10年経過で休眠預金となります。

【民営化の後に開設した口座】10年間まったく入出金がない場合に休眠預金となります。

休眠預金の残高はどうなるのか

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休眠預金があることをずっと忘れていた、亡くなった方の古い通帳が出てきたなどという場合、まずは最後の入出金からどれだけの年数が経過しているかを確認する必要があります。しかし、とんでもなく長い間まったく入出金もなくそのままになっていた場合は気づいた(発見した)時点で既に休眠預金となってしまっている可能性があります。

その場合、口座に預けていた残高(現金)は一体どうなってしまうのでしょうか。権利が消滅してしまうという事は、残高は全て消えて無くなってしまうの?長年その存在を忘れていただけ、老後資金として一定額が貯まったからそのままにしていただけ、などという理由だった場合、かなりの金額となっているはず。

通知の不着

実は、金融機関などでは一定期間まったく動きがなく休眠状態になっている口座をチェックしています。金融機関ごとに異なりますが、その期間を決めて休眠預金となっている対象口座の名義人には、「貴方の口座は○○年からまったく動きがないからこのままだと休眠預金になりますよ」的な通知を発送してくれています。

この通知を受け取る事ができればいいのですが、引っ越して口座を開設していた金融機関に住所変更の手続きを出していなかったりすると通知が届かず、所在不明という事で休眠預金となってしまうのです。その場合、口座に残っている残高は基本的に銀行の収益となってしまいます。

ただし、残高が10,000円未満の場合は通知の対象外となっています。このため休眠預金のほとんどが少額のものだと言われていますが、年間でその額はなんと500億~600億円にもなっているのです。

新設された休眠預金活用法とは?

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休眠預金の残高は金融機関の収入になっているというお話しをしましたが、実は休眠預金に関する新しい法律が制定されて、名義人と連絡も取れず完全に休眠預金となった場合の残高は国が管理することになります。この法律を「休眠預金活用法」といいます。

休眠預金活用法とは

年間約1000億円に達している休眠預金の中で、通知などにより本人と連絡が取れて払い戻しされる金額を差し引いても約500~600億円も宙に浮いている預金。これを様々なことに活用しようというのが「休眠預金活用法」です。

これは2016年12月2日に可決されたもので、休眠預金はまず「預金保険機構」へ移されます。その後、公益活動をする団体(NPO法人、自治会)などが様々な助成、出資、貸付などに利用するという流れになるようです。

国のために、私たちの生活のために、どのように活用するのが良いのか?という議論が行われ、難病の子供を持つ家庭への支援、児童養護施設や障害者の自立支援などに利用するというのが大まかな決定という事です。

というのも、2017年4月現在「休眠預金活用法」の可決はされましたが、まだ施行には至っていないのです。運用するためにはシステムの整備などが必要なため、現在のところ施行までは1年~1年半、実際の運用までは3年ほどかかるのではないかとみられているようです。

休眠預金を確認しよう

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上記で触れたように、10,000円未満の休眠預金に対しては通知も届きませんので、ずっと放置している方の残高は気づいた(思い出した、出てきた)としても、もう遅いのでしょうか。

いえいえ、大丈夫です。例え残高が1円でも、あくまでも「休眠」ですので、基本的には休ませているだけという状況です。本人がきちんと手続きをすれば残高は返してもらう事ができますし、解約や復活ももちろん可能です。※一部、例外の金融機関もあります。

解約方法

休眠預金に限らず、その口座は今後もう絶対に使わないという場合は解約の手続きをすることになります。ただ、場合によってはかなり面倒なことになりますので、まず以下を確認してください。

  1. 通帳やキャッシュカードが手元にありますか?
  2. 口座を開設した時の印鑑(届出印)はありますか? ※印鑑を複数お持ちの場合はどの印鑑か分かっていますか?
  3. 結婚などで苗字が変わっている場合、本人だと証明できますか?
  4. 引っ越しをしているなら当時の住所を覚えていますか?
  5. 口座を開設した金融機関は現在も存在しますか? ※統合などしていませんか?

上記5つ全てがYESだった方はスムーズに解約の手続きができる可能性が高いといって良いでしょう。しかし、1つでもNOがあれば、その内容によっては手間と時間が必要になる可能性があります。

通帳や印鑑を紛失

まず、通帳が見当たらない場合はキャッシュカードがあれば良いのですが、キャッシュカードも無いという場合はどうするのかというと、口座を開設した金融機関(どの支店でもOK)で調査してもらいますが、どこの支店で開設したのかはもちろん、その時の状況を証明するものも必要となります。

当時からずっと苗字が変わっていない方は本人確認書類、変わっている方は前の苗字の人物と現在の自分が同一人物であると証明できるものも必要となる場合があります。

次に印鑑の紛失です。休眠預金に限らずですが、口座を開設した時の届出印を紛失した場合は「改印」という手続きが必要ですね。しかし、こちらの場合もその前に改印しようとしている人が口座の持ち主であることを証明するものがないと手続きはできません。

苗字が変わっている

結婚や離婚などで苗字が変わっている方は、口座を開設した時の苗字の人物と現在の苗字の人物が同一人物だと分かるものが必要です。何度か繰り返している場合は、それぞれの記載がある証明が必要になりますし、現在の本人確認書類ももちろん必要です。

引っ越しをしている

引っ越しの場合も同様で、口座を開設した時の住所に住んでいたという証明が必要となります。以前の住所が思い出せないという方でも、市役所などで解決できますし、現在はマイナンバーの制度を利用すればすぐに判明するパターンもあるようです。

金融機関が統合している

実はこれが一番やっかいです。開設した支店が閉鎖しただけなら別の支店で上記のような対処をすれば良いのですが、金融機関が統合してしまっている場合は、その金融機関が統合された後に口座がどの支店に移されたのかを調べる必要があるのです。

まずは、統合された金融機関の窓口へ行くか電話で問い合わせをしてみてください。尚、下記のサイトで統合(合併)した金融機関を確認できますので参考にしてください。

参考サイト:一般社団法人 全国銀行協会

 金融機関による違い

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金融機関によって、休眠預金に対する考え方や手続き方法などが異なります。全てをご紹介することはできませんが、いくつかを例に挙げてみますのでご覧ください。尚、ここから記載する内容は2017年4月現在の情報となります。

りそな銀行の場合

りそな銀行では最後の入出金から2年以上が経過すれば休眠預金となります。また、2004年4月1日以降に開設した口座について「休眠口座管理手数料」というものが発生してしまいます。ただし、2004年4月1日より前に開設した口座でも注意しなくてはなりません。

一定期間の利用が無かったのに、2004年4月1日以降に取引が再開された場合や取引店を変更した場合なども、一部例外があるものの休眠預金管理手数料が発生するというのです。ただ、開設が旧奈良銀行だった方は2006年1月4日以降に新しく開設した口座のみ対象のようです。

例えば、2003年に口座を開設して、その後は使わないままだったけどまた使いたいと思って2004年5月に入出金を再開したら手数料を取られてしまうという事です。もちろん、事前に通知が発送されますが、到着してから一定期間を経過してしまうと年間で1,296円も手数料を取られてしまうのです。

手数料の徴収方法

通知を発送したのに何の連絡もない、何の手続きもしないままの人からどうやって手数料を徴収するのかというと、休眠預金となっている口座に残っている残高の中から、毎年1,296円が自動的に引かれていくという仕組みになっているのです。

では、残高がたっぷりとある人がその後もそのまま放置していたら毎年の手数料が引かれていって残高が無くなってしまうのでしょうか。それとは逆に、残高が数十円の人は手数料を引くことが出来ないのにどうするのでしょうか。実は、全ての休眠預金に手数料が発生するわけではなく、残高が10,000円以上ある場合は手数料が取られることはないのです。

また、休眠預金がある同じ支店に定期預金や外貨預金などがあったり、国債や生命保険の加入などがあるような場合にも手数料は発生しないことになっています。※借り入れがある場合も同様です。

残高が無くなったら?

上記のような条件ですと、10,000円未満の少額に対して手数料が発生するということになりますが、例えば残高が3,000円だったとすると1,296円×2回(2年分)で残高は408円になってしまい、翌年分の手数料が徴収できなくなってしまいますね。

そのような状態になった場合は自動的に解約扱いとなってしまいます。そして、残っている408円も手数料として徴収される事になります。通知が届いてから3ヶ月以内に解約するか入出金して動きを再開すれば手数料は発生しませんが、期間を過ぎるといきなり1,296円が引かれてしまいます。

もしも、解約扱いとなってしまった後すぐに気づいたとします。その時に慌てて窓口に行って「再開する」と言っても手遅れです。この時点ですでに解約されてしまっているので、引かれてしまった手数料は戻りませんし口座を元に戻す(再開する)ことはできません。

楽天銀行の場合

インターネットが普及して、実店舗のないインターネット専用の銀行もたくさん出来ていますね。その中から楽天銀行を見てみましょう。楽天銀行の場合は、最後の入出金から10年が経過した時点で残高が10,000円以上なのか未満なのかでちょっと異なる流れとなります。

外貨預金・円預金ともに10年を経過した時点で会員登録時に入力したメールやメッセージボックスにお知らせ(通知)が届くとともに、登録している住所宛てに書面での通知も届きます。この郵送の通知がきちんと届けば、それだけで休眠預金とはなりません。

ただし、メッセージやメールが届いただけで郵送の通知が宛先不明などで不着だった場合は、いくらメールアドレスなどが生きていてもダメです。そうなれば休眠預金扱いとなってしまいます。そして、残高が10,000円未満の場合ですが、一応こちらも通知が届きます。

しかし郵送の通知は発送されずにメッセージやメールのみとなり、そのまま休眠預金となってしまうようです。ちなみに、外貨預金の場合の10,000円という金額は、楽天銀行が定めている日(基準日)のレートで換算した金額となります。

休眠預金になった後

楽天銀行の口座が休眠預金になってしまった場合は、休眠預金管理手数料なるものは発生しません。そして、その口座が自動的に解約扱いになるようなこともありません。文字通り「休眠」、一時停止のような扱いにとどまるようです。

楽天銀行に限らず、インターネット専用銀行には基本的に通帳というものが存在しません。利用している方(利用したことのある方)ならご存知だと思いますが、残高照会も入出金明細も通帳ではなくインターネット上にある自分のページで確認することになります。

ですから、実店舗もありませんし手続きなど全てをインターネットで行います。そのため、休眠預金になってしまった口座を再開するためにはインターネット上での手続きが必要となります。休眠預金となった後にマイページにログインすると「取引停止中」と表示されますが、慌てなくても大丈夫です。

下記のカスタマーセンターへ電話またはメールで連絡をして、所定の手続きさえすれば解約も再開も可能です。ちなみに、ログインする際のユーザーIDやパスワードを忘れてしまってログインできない場合でも下記カスタマーセンターに問い合わせれば解決します。

参考サイト:楽天銀行 お問い合わせ

気をつけること

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前述のような引っ越しや改姓などでコツコツと貯めていた預貯金が休眠預金になっても、一部の金融機関を除いてほとんどの金融機関では手続きをすれば残高もそのまま元通りに利用できるようになります。

でも、そうなってしまってから再開するためには、状況によってかなりの手間と時間がかかってしまいます。ですから、休眠預金になる前に、常に気をつけておきたい事をお話ししておきたいと思います。

必要のない口座は解約

休眠預金になるという事は、本当にうっかり忘れていたというものばかりではありません。先にお話ししたように、子供の頃にお小遣いやお年玉を貯めていたけど、残高も少額になってそのまま放置しているというような口座もあります。

今、生活している中で必要ではない口座が1つや2つあるという方は少なくないと思いますので、まずはそういった不要な口座、今後も使わないであろう口座などは思い切って解約してください。

残高がたとえ1円単位でも、面倒がらずに手続きを行って下さい。残高が少ないと恥ずかしく思う方もいらっしゃるようですが、金融機関側にとっては管理費も掛かっていますので、そのまま放置されるよりも「今後使わないので解約します」と手続きしてくれるのはありがたい事なのです。

ご両親などに聞いてみる

子供が生まれた時に貯金を始める親はけっこう多いようです。もしかしたら貴方の知らない貴方名義の通帳が存在しているかもしれません。ぜひ一度ご両親に休眠預金のお話しをしてみてはいかがでしょうか。そして、もしも貴方の知らない通帳があった場合は最後の入出金からどれぐらいの期間が経過しているかチェックしてください。

ご両親の愛情である貴方のための預貯金が、知らない間に休眠預金になってしまっては困りますので、その通帳が現在は存在しない統合された金融機関だったり、10年以上経過しているようなら早めに手続きするようにしてください。

無駄に口座を作らない

人間にはお付き合いというものがあって、お友達が勤めている金融機関で「1000円でいいから」などと頼まれて口座を開設した方も多いと思います。また、転職を繰り返していると会社が指定した金融機関で口座を開設する必要があったりして、転職のたびに通帳が増えるという事もあります。

前者の場合は、単なるお付き合いで少額を入金しただけなので存在を忘れてしまいがちです。後者に関しては「またこの銀行を使うかも」という気持ちから解約という選択をしない方が多いようです。

また、お給料が入ってくる口座と公共料金などが引落される口座を分けている方もたくさんいらっしゃいますが、あまり細かく分けすぎて何か所もの口座を作ってしまうと毎月の振り分けも面倒ですし、面倒になっていくつかをまとめると今度は使わなくなった口座を放置することになってしまいます。

口座は無駄に作りすぎないように心掛けましょう。片付けと同じで、「いつか使うかも」という気持ちを捨てないと後々とんでもなく手間のかかる手続きをしないといけなくなる可能性もありますので、思い切って整理しましょう!

まとめ

いかがだったでしょうか。休眠預金のこと、そして金融機関によって対応が異なることなどが理解できたでしょうか。この記事を読んで、「もしかしたら!」という心当たりがあるなら、ぜひ口座が休眠預金になっていないか確認してみてください。