株に関するニュースを見ていると、必ずと言っていいほど「ニューヨーク証券取引所(NYSE)」という言葉を聞きませんか?
今回は世界で最も影響力があるといわれているニューヨーク証券取引所について見ていきたいと思います。
目次
ニューヨーク証券取引所の歴史
まずはニューヨーク取引市場の歴史から確認しておきましょう。
ニューヨーク証券取引所、通商NYSEは、インターコンチネンタル取引所(ICE)が所有・運営している、アメリカ合衆国のニューヨーク州・ニューヨーク市のウォール街にある世界最大の証券取引所のことです。
ニューヨーク取引市場誕生のきっかけですが…最初はとても小さな株式売買が始まりでした。
1792年にウォール街のプラタナスの木の下で売買手数料を定めた「Buttonwood Agreement(=すずかけ協定)」に基づき、ほんの24人のブローカーが始めた株式売買が起源となってます。
後にこの「Buttonwood Agreement(=すすがけ協定)」は1817年に「New York Stock & Exchange Board」に改称され、非営利会員組織として取引所の運営を開始します。
1861から1865年にかけて米国でおこった南北戦争によってたくさんの国債が発行され、また、西部開拓による鉄道建設のために株式や社債が大量に発行されたことが証券市場を活気づけ、ニューヨーク証券取引所に活況をもたらしました。
その後1903年にウォール街に立派な取引所建物が立てられて以来、ウォール街は米国の株式市場の中心地としてその名をはせていくことになります。
第一次世界大戦が始まると世界の金融中心地は次第にヨーロッパからアメリカへと移っていくことになります。
私たちの誰もが一度は耳にしたことがあるように、「ニューヨーク証券取引所」は米国で最も長い歴史と伝統を誇り、名声を持っています。
伝統と高品質な取引所の評判を維持するため、その上場審査は世界一厳しいと言われており、その上場企業には米国の大型優良企業や各国のグローバル企業などが数多く名を連ねています。
また、世界の証券取引所の中でも影響力と注目度は突出しており、その株価動向は世界の株式市場に日々大きな影響を及ぼしています。
過去の激動の歴史を振りかってみると、1929年のブラック・サーズデー(暗黒の木曜日)の株価大暴落、1987年のブラック・マンデー(暗黒の月曜日)の株価大暴落、2001年の米同時多発テロによる株価大暴落、2008年の世界金融危機による株価大暴落など、米国発で世界に影響を及ぼした経済危機の起点になっています。
以下、基本情報をまとめてみました。
通称 | ビッグ・ボード(Big Board) |
---|---|
所在地 | アメリカ合衆国ニューヨーク州ニューヨーク市 |
立会時間 | 9:30~16:00 (日本時間で23:30~翌朝6:00、サマータイム期間中は1時間早まる) |
証券コード | シンボルコード(ティッカー)と呼ばれる各企業を表す1~3桁の アルファベットがNYSE内で用いられる |
株価指標 | ・ダウ工業株30種平均(NYSE以外の銘柄も含まれる) ・NYSE Composite Index(NYSEの全上場企業から構成) |
(参照:https://www.ifinance.ne.jp/glossary/market/mar034.html)
上場基準
先ほど、ニューヨーク証券取引所における上場基準はとても厳しいとお話しました。
果たしてどれほど厳しいのか気になるところですよね。日本の証券取引所の上場基準と比較しながら考えてみましょう。
非アメリカ国籍企業である日本企業は、全世界上場基準またはアメリカ国内上場基準のいずれかを満たすことができればニューヨーク証券取引所において上場することができます。
しかし、いずれかを選んだ場合でも、株式分布状況等に関する基準と財務基準を満たす必要があります。
全世界上場基準
世界の証券取引所で上場するための基準の一部を紹介します。
- 取引単位の株主数:5,000名
- 公開株主数:250万株
- 公開株主時価総額:1億ドル(100億円)
- 過去3年間税引前利益額の総額:1億ドル(100億円)
- 直近2年間における各年の最低利益額:25百万ドル(25億円) など
アメリカ国内の上場基準
アメリカ国内で上場するための基準の一部は、以下の通りです。
- 取引単位の株主数:2,000名
- 総株主数及び月間平均取引高(6ヵ月):2,200名、10万株
- 総株主数及び月間平均取引高(12ヵ月):米国内で100万株
- 公開株式数:110万株
- 直近年度の税引前利益額:2.5百万ドル(2億5000万円)
- 前年及び前々年度の税引前利益額:2.0百万ドル(2億円)
- 過去3年間の税前利益の総額:6.5百万ドル(6億5000万円)
- 直近年度の最低利益額:4.5百万ドル(4億5000万円) など
(参照:https://www.o-hara.ac.jp/grad/pdf/annual/12/01.pdf)
日本国内の上場基準
日本国内で一部上場するための基準は下記の通りです。
- 取引単位の株主数:2200名
- 流通株式数:2万単位以上
- 流通株式数(比率):上場株券等の35%以上
- 時価総額:250億円以上
- 利益の額:最近2年間の利益の額の総額が5億円以上。満たない場合は時価総額が500億円以上。
時価総額に関して世界基準とさほど変わりませんが、やはり一定の利益を出し続けているかどうかに関しては、ニューヨーク証券取引所の方が厳しいですね。
(参照:https://www.jpx.co.jp/equities/listing/criteria/listing/index.html)
ニューヨーク証券取引所が発端となった金融危機
先ほど、ニューヨーク証券取引所が発端となり起こった金融危機がいくつかありましたね。それらの金融危機について簡単に説明しておきます。
1929年ブラック・サーズデー(暗黒の木曜日)
ブラックサーズデー(暗黒の木曜日)は、「ウォール街大暴落」とも呼ばれて、1929年10月24日(木)から約1カ月間、アメリカ合衆国のウォール街(ニューヨーク株式市場)で起きた、「一連の株価の大暴落」のことです。
20世紀前半の歴史上で壊滅的な打撃を与えたといわれるブラック・サーズデーですが、その発端は、1929年10月24日(木)に最初の暴落でした。
続く10月28日(月)と10月29日(火)に壊滅的な大暴落が起こり、その後暴落は約1カ月間続きました。
その結果、米国だけでなく世界の株式市場まで大きく揺るがしました。
1929年当時の米国経済は好調で、熱狂的な投機ブームが起こっていました。これらのことから、過去6年間でニューヨークダウ(NYダウ)は上がり続けて当初の約5倍になり、1929年9月3日に最高値381.17を付けました。
しかしながら株式市場がバブルで踊る一方で、不動産価格が低落時期に来ており、また1929年夏以降には工業指標が下向き始め、市場に雲が見え始めました。
一部で株高を危ぶむ声もありました。そういった状況の中で、一連の大暴落が発生し、1929年11月13日には198.60の底値を付けることになりました。
この大暴落後、相場は思いのほか急速に回復し、1930年4月17日には294.07という史上2番目の高値を付けました。
ただこれも一瞬の出来事でした。相場は再び下げ始め、1932年7月8日に41.22を付けるまで下げ止まらず、最高値と比べて89%の下落となりました。
その後NYダウは、1954年11月23日まで、1929年に達した水準まで長い間戻ることはありませでした。
実はまだ明らかになっていないのです。
ブラックサーズデーと世界恐慌の関係については、学術的に多くの議論や研究がなされてきましたが、株価の大暴落が世界恐慌を引き起こしたのかは未だに明確にはなっていないのです。
しかしながら1つ言えることとしては、“ブラックサーズデー”と“世界恐慌”が「20世紀の最大の経済危機」であったということでしょう。
(参照:https://www.ifinance.ne.jp/glossary/world/wor026.html)
1987年のブラック・マンデー(暗黒の月曜日)
ブラックマンデーは、「暗黒の月曜日」とも呼ばれ、1987年10月19日(月)にアメリカ合衆国のニューヨーク株式市場で起きた、史上最大規模の株価の大暴落のことをいいます。
実は、大恐慌時の1929年10月24日の木曜日に起きた急落が「ブラックサーズデー(暗黒の木曜日)」と呼ばれたことに倣ってつけられたようですよ!
この日、ニューヨーク・ダウ(NYダウ)は、1日の取引で終値が前週末より508ドルも下落し、その下落率では、1929年10月24日のブラックサーズデーの12.8%を上回り、22.6%でした。
この株価暴落は、翌日、世界の株式市場へも波及し、ニューヨーク市場に次いで東京市場、ロンドン市場、フランクフルト市場などでも株価が暴落しました。
翌日の東京市場の日経平均株価も大暴落し、なんと3836円安となり、戦後最大の下落率14.9%を記録しました。
一般に挙げられるブラックマンデーの大暴落の要因について簡単にまとめてみました!
・米国の財政赤字と貿易赤字が拡大傾向にあったこと
・1985年のプラザ合意以後のドル安(インフレ懸念=物価上昇への懸念)打開のために、ドルの金利が引き上げられる観測が広がっていたこと
・旧西ドイツの金利高め誘導を米財務長官が批判し、国際協調体制に綻びが見られたこと
・当時普及し始めていたコンピュータによるプログラム取引(売買)が、ある程度株価が下落すると損失を最小限にしようと自動的に売り注文を出すため、売りが増え価格が下がったこと
が挙げられるようです。
その、世界を揺るがした株価暴落は、主要国の金融当局による政策協調によって世界恐慌を招くことなく終結し、また再発防止策としてサーキットブレーカー制度などの規制措置の導入にもつながりました。
サーキットブレーカー制度とは、株式市場や先物取引において価格が一定以上の変動を起こした場合に、強制的に取引を止めるなどの措置を採る制度のことです。
ちなみに当時、金融緩和政策を取っていた日本は、世界同時株安の影響から一早く離脱し、その後の「バブル経済」へと突き進むことになりました。
2001年の米同時多発テロによる株価大暴落
米国で起こった同時多発テロで、ニューヨーク市場が大打撃を受け、一時マーケット機能が停止ししました。その結果、株価は全面安となり、世界はこれ以降、長期的な不況に突入してしまいました。
なお、為替は一時的に円高に振れたものの、2週間ほどで元のレベルに戻りました。
2008年の世界金融危機による株価大暴落
リーマンブラザーズの破綻から約1カ月余り経った2008年10月24日、100年に1度とも言える歴史的なクロス円の大暴落が起こりました。
理由としては、世界的な信用不安により、行き場を無くした資金がやむを得なく円に流れたためです。逃避先として円が選ばれたということです。
ニューヨーク証券取引所に上場するグローバル企業
先ほど、ニューヨーク証券取引所に上場することはとても難しいといいました。果たしてどのような会社たちが名を連ねているのでしょうか。少し見ていきましょう。
上場する米国有名企業
下記が上場する米国企業なのですが、どれも有名な企業ばかりですね。
・General Electric Company(GE)-コングロマリット
・Exxon Mobil Corporation-石油
・Boeing Co.-航空機
・Caterpillar Inc.-建機
・Dow Chemical Co.-化学
・Alcoa Inc.-アルミニウム
・International Business Machines Corporation(IBM)-IT
・HP Inc.-IT
・General Motors Corporation(GM)-自動車
・Ford Motor Company-自動車
・Pfizer Inc.-医薬品
・Johnson & Johnson Inc.-ヘルスケア
・Procter & Gamble Co.(P&G)-日用品
・JPMorgan Chase & Co.-金融
・Wells Fargo & Co.-金融
・Citigroup-金融
・Bank of America Corporation-金融
・Goldman Sachs Group Inc.-金融
・The Travelers Companies-保険
・Berkshire Hathaway Inc.-保険
・American Express Company-クレジットカード
・AT&T Inc.-通信
・Time Warner Inc.-メディア
・McDonald’s Corp.-ハンバーガーチェーン
・The Coca-Cola Company-飲料
・Wal-Mart Stores, Inc.-小売 他
上場する日本企業
さて、日本企業についても見ておきましょうか。
・ソニー(SNE)-電気機器
・本田技研工業(HMC)-輸送用機器(自動車)
・京セラ(KYO)-電気機器
・三菱UFJフィナンシャル・グループ(MTU)-銀行
・日本電信電話(NTT)-情報・通信
・オリックス(IX)-その他金融
・トヨタ自動車(TM)-輸送用機器(自動車)
・キャノン(CAJ)-電気機器
・野村ホールディングス(NMR)-証券
・NTTドコモ(DCM)-情報・通信
・みずほフィナンシャルグループ(MFJ)-銀行
・三井住友フィナンシャルグループ(SFMG)-銀行
・LINE(LN)-情報・通信
おわりに
ニューヨーク証券取引所の概要について理解できましたか?
ニューヨーク証券取引所以外にも、世界各国には多くの取引所が存在しています。これらの取引所で売買される株の価格などが日本の株式市場に多大な影響を及ぼすことも多々あります。
株式投資をはじめる際には日本のみならず世界各国の市場の動きも頭に入れておきましょう♪