今更聞けない?!寄付金控除とは。控除を受ける条件や申請方法について

引用元:photoAC

「控除」の制度には様々なものがありますが、これは基本的に年収が同じ人であっても、独身であったり家族がいたり、健康な人もいれば病気を抱えている人もいるという、個々の事情に応じた課税の公平性を図るために定められた制度です。

そんな「控除」の中でも、今回ご紹介する「寄付金控除」はあまり馴染み深くない存在かもしれません。しかし”ふるさと納税”といった制度において寄付金控除が活用できることから、ご存知の方がいるのも事実です。そこで寄付金控除の基礎知識について今回はご紹介していきます。

寄付金控除の恩恵を理解しやすい”ふるさと納税”についてもお話していきますよ。

寄付金控除について

引用元:photoAC

寄付金控除はその名の通り、寄付を行なった際の所得税や住民税の額に対して税額控除を認める制度のことです。申請条件についても一緒に見ていきましょう。

寄付金控除とは

個人が公共団体などに対して寄付を行なった場合、所得税や住民税に対して、寄付した金額について税額控除を受けることができる制度です。欧米では寄付の文化が根付いているために、寄付金控除の制度が充実していることが知られています。日本でも近年、寄付金控除を充実させるための法改正がなされていると言います。

また政治活動や認定NPO法人等、ある条件に対する寄付金のうち一定のものに関しては、所得控除ではなく税額控除を選ぶこともできます。

 

控除を受ける条件は?

控除を受けることのできる条件は、寄付をする相手が関係してきます。

まず国または地方公共団体に対する寄付金が、寄付金控除に値する寄付金として当てはまります。ただし、寄付した人がその寄付した団体の設備だけを集中して利用したり、その他の特別な利益が寄付した人に及ぶ場合には、この条件は外されます。

寄付はあくまでも相手に”贈る”ものですから、その点を考えると、上で紹介した内容のように「お金払ったんだから優先的に使わせてね」「利益ちょうだいね」といった考えは寄付に値しないということですね。

また公益社団法人等、公益を目的とする事業等に対する寄付金も寄付金控除の対象です。これも上と同様、「お金払ったんだから〜」の場合は認められません。ただし単純に公益を目的とする事業への寄付ならOKというワケでもなく、以下の条件が必要になってきます。

  1. 広く一般に募集される寄付
  2. 教育・科学の振興、文化・社会福祉等公益の増進に寄与し、緊急を要するものに充てられるもの

また特定公益増進法人と呼ばれる上記の条件に値する法人への寄付も、寄付金控除の対象となります。例えば

  • 独立行政法人
  • 自動車安全運転センター
  • 日本司法支援センター
  • 日本私立学校振興・共済事業団
  • 日本赤十字社
  • 社会福祉法人
  • 更生保護法人

などが当てはまります。こう見ていくとかなり数多くの団体への寄付が認可されているように思います。恐らく寄付したい団体を見つけた場合、その寄付の項目には「”寄付金控除”が可能です」といった旨の説明書きが追記されていると思いますので、気になる方は寄付したい事業や団体へ事前に問い合わせることをおすすめします。

控除額はいくら?

控除額ですが、以下のような計算式で求められます。

”その年に支出した寄付金の合計額” または ”その年の総所得金額等の40%相当額” のいずれか低い方−2千円=寄附金控除額

総所得金額等というのは、純損失や雑損失など損失の繰越控除後に算出される金額のことを指します。

ただ”ふるさと納税”等の「寄付金控除」を受ける場合には、分かりやすい”その年に支出した寄付金の合計金額”の方で考える方が一般的となるでしょう。私のような、一主婦の行なうことのできる寄付は、そこまで規模の大きな話にならないと思いますから笑。

参考文献:一定の寄附金を支払ったとき(寄附金控除) 国税庁

東日本大震災に関わる義援金の扱いについて

ちなみに寄付金控除には”東日本大震災に関わる義援金”も関係してきます。義援金によって、東日本大震災で被害を受けた地域を援助した人も少なくないでしょう。しかし義援金の支出先によって、所得税や法人税の取り扱いが少々変わってくるため、控除の手続きをする場合には注意が必要です。

個人で義援金等を支出した場合、その義援金が国や地方公共団体に対する寄付金等に値する場合には、寄付金控除の対象となります。

法人が義援金等を支出した場合、それらが「国又は地方公共団体に対する寄付金」「指定寄付金」に該当する場合には、寄付金控除ではなく、支出額全額が”損金”、いわば”費用”の一部として経理上、計算することができます。

参考文献:東日本大震災に関わる義援金等にに関する税務上(所得税、法人税)の取扱いについて

申請方法について

引用元:photoAC

それではいよいよ気になる申請方法についてご紹介していきます。一般的な所得控除の場合、サラリーマンなど会社に勤めている人であれば、年末調整時に書類を書くだけでOKなのですが、この寄付金控除に関しては”必ず”自分で確定申告をする必要が生じます。どういうことか、早速見ていきましょう。

申請方法は?

年末調整で計算してもらえる控除には「保険料控除」や「配偶者控除」が挙げられます。しかし「医療費控除」や「雑損控除」そして今回ご紹介する「寄付金控除」に関しては、会社の経理や事務担当の方が計算してくれる項目、ではありません!

「保険料控除」や「配偶者控除」とは違い、「医療費控除」や「寄付金控除」ができる支出というのは、少人数にしか生じない支出です。そのため会社側も、そのような少人数にしか発生しない支出をいちいち計算するワケにはいきませんから、控除を受けるためには個別に「確定申告」を行なう必要があるのです。

 

確定申告の方法

確定申告をする際には、「確定申告書」と「源泉徴収票」、また「控除の対象者であることを証明する書類」が必要になります。確定申告書は税務署か国税庁のWEBサイトで作成することができます。

確定申告は億劫な印象があるかもしれませんが、書類の作成自体は決して難しいものではありません。まず確定申告書を作成するために、所得額や基礎控除額等、必要事項を書く必要がありますが、これは「源泉徴収票」に全て記載されていますから、票に記されている通りに記載していきましょう。

各種控除を入力する欄には、「寄付金控除」の枠に上記で紹介した計算式、分かりやすく言えば「その年に寄付した金額ー2,000円」を書きます。

最後に「控除の対象者であることを証明する書類」を合わせ、提出するだけです。この書類は例えば、認定NPO法人に寄与した場合の領収書や計算明細書がこれに当たります。基本的には「控除を受けたいので証明書類をください」と言えば受け取れるものばかりですから、忘れずにいてくださいね。

源泉徴収票を貼り付ける箇所がありますが、これは会社から受け取った源泉徴収票をそのまましっかりと貼り付けるだけでOKです。

インターネットでも作成可能

私も会社を退職した際に確定申告書を作成したことがありますが、書き損じなどが生じないように書くのはやっぱり少し面倒くさいです笑。確定申告の時期が近づくと、税務署窓口で相談を受けながら作成することもできますが、それすらも面倒くさい・・・と思いませんか笑?

ただ現在では国税庁のWEBサイトへ行けば、インターネット上で必要書類を作成することのできるサービスも展開されています。指示に従って必要事項を入力するだけで、最後に印刷、押印をすれば完了です。ちなみに郵送でも確定申告を済ませることもできますから、慣れてきたらインターネット上で作成することをおすすめします。

注意点

確定申告にはいくつか注意点があります。まず確定申告は「翌年2月16日〜3月15日の間」と期間が決められており、3月に入ると窓口が混み合うのがある意味冬の風物詩とも言える状態です笑。窓口だけでなく電話等での相談、問い合わせに関しても非常に混み合いますから、2月中に済ませることをおすすめします。

また先にも述べた通り、必要書類には「寄付をした証明書」が必要になります。「寄付の領収書」は必須ですから、寄付した分の領収書は必ず事前に入手しておき、確定申告の時期まで失くさないよう保管しておくことが鉄則です。

ふるさと納税とは何が違うの?

引用元:photoAC

「寄付金控除」について調べていると、「寄付金控除 ふるさと納税 違い」という検索ワードがひっかかりました。結論から言えばこれら2つに違いがある訳ではなく、「ふるさと納税という制度は寄付金控除を利用してお得に返礼品を受け取ることができますよ〜」というお話です。

ただ「寄付金控除」の存在が広く認知されるようになったのも、ふるさと納税のおかげとも言えるのではないかと考えています。そこでこの章ではふるさと納税に着目して、お話をしていきます。

ふるさと納税とは

ふるさと納税は、”税”と名称についていますが、これも寄付金控除を受けることのできる寄付制度の一つです。

この制度の基盤についてお話します。ふるさとで育った子供が成長し、税金を納めるようになっても、その税はその人が”今”住んでいる土地に納められます。しかし、ふるさとへのお礼を込めて自由に寄付ができるようにならないだろうか?という考えから発展し、ふるさとへ寄付することのできる制度、ふるさと納税へとなっていったのです。

とはいえ”ふるさと”は出身地ではなくても問題はありません。お世話になった場所、これから発展してほしい場所、様々な”ふるさと”を選ぶことができる、納税する人自身がお金の使い道を選ぶことができる制度なのです。

ふるさと納税のメリット

ふるさと納税は「寄付金控除」を受けることができます。寄付金控除を受ける際には、寄付した人自身がその寄付した場所が発行する領収書を用意、申告書へ添付し、確定申告を行なう必要がありますが、そのおかげで節税することが可能です。

自己負担額である2,000円は必ず支出することになりますが、2,000円を超えた金額に関しては控除が適用されるため、もし年間10,000円ふるさと納税を行なえば、寄付金控除の対象は8,000円となる訳です。30,000円なら28,000円、50,000円なら48,000円といった感じです。

もちろん寄付金控除には上限額があり、それは自身の家庭環境や収入によって異なります。ただ総務省のふるさと納税ポータルやその他ふるさと納税サイトには、控除額や上限額のシミュレーションが掲載されていますから、簡単に確認することができますよ。

返礼品がお得に受け取れる?!

また”ふるさと納税”が話題になった背景に、その土地が提供する返礼品の存在があります。自治体によって内容は様々ですが、大抵その土地の特産品が「寄付のお礼」として受け取ることができます。

特典には様々なものが用意されており、お米や野菜、肉や果物が代表的なものですね。家電や金券といった商品が用意されている自治体もあります。なおかつ、実質自己負担金が2,000円のため、高価格帯のものが実質2,000円で手に入るという点で話題を呼んだのも事実です。実際、2,000円で良いお肉が食べられたら嬉しいですよね笑。

参考文献:「ふるさと納税」を知ろう!ふるさと納税応援サイト

参考文献:【2017年版】ふるさと納税ってお得?メリットとデメリットは何?20以上の自治体からおすすめの特典と納税のやり方を紹介します

一方でこんな問題も

ただこのお得な返礼品が、昨今”ふるさと納税”の存在意義を危ぶむ問題点として挙げられています。

というのも寄付した側は返礼品の分だけ「もうけ」を手に入れたという考えにもつながるからです。返礼品の存在は”ふるさと納税”を有名にする十分な材料ではありましたが、「返礼品を豪華にしなければ、寄付してもらえないのでは?」という本来の趣旨とはずれた考え方に到達してしまったのです。

その結果が、寄付額に対する返礼品の価格の高騰です。貴重なはずの寄付の5割〜8割、なかには9割が返礼品に充てられているという現状があります。本来の趣旨は、「寄付側がふるさとへのお礼ができるように」という意味合いが込められていたはずでした。しかし今は、自治体が半ば寄付してくれる側においつめられるような状態とも言えるのです。

加えて家電製品や金券という返礼品が、そのままオークションで転売されていることが報じられました。「税金が個人によってお金に還元されている」と表現されています。総務省もこれら返礼品の自粛を呼びかけていますが、すぐになくなるような話ではありません。

自治体の中には、すでに「返礼品はありません」と潔く宣言している所もあります。

富裕層の節税対策という声も・・・

また”ふるさと納税”について調べていて気になったのが、富裕層の節税対策になっているだけではないか?という意見です。というのもお金がある人ほど多くの税金を控除できるようなしくみになっているからです。なんだか心境が複雑になってきました笑。

例えば夫婦2人子供1人の家庭で、年収400万円の場合、全額控除可能な寄付金額は3万円ほど。しかし年収2500万円の場合はおよそ82万円まで全額控除が可能です。もし返礼品が高価なものであれば、実質の負担は2,000円な訳ですから、かなりの儲けが手に入る・・・なんて考えてしまうのは野暮でしょうか笑。

ただこのような問題点の指摘から、返礼品に対する制限も提案されているようですね。金券のような換金されやすい返礼品の禁止や、寄付額に対する返礼品の比率に制限を設ける、返礼品の代わりに税額控除はなくすという案も挙がっています。

さてこれから”ふるさと納税”はどのように様変わりしていくのでしょうか。

参考文献:「急増!ふるさと納税を問う」(時事公論)

具体的な寄付の方法について

引用元:photoAC

最後に寄付の方法についてご紹介していきます。メジャーな団体の寄付方法についてご紹介していきますが、基本的には自分が「寄付したい」「応援したい」と思ったところに寄付を行い、その分控除を受けることを考えてください。「寄付金控除」を主軸に捉えてしまうと、”寄付”の意義からは離れてしまいますよ。

日本赤十字社の場合

日本赤十字社に一定額以上の寄付を行なった場合、個人であれば所得税、個人住民税、相続税が控除対象に、法人であれば法人税が控除対象となります。ちなみにこれは赤十字社の会費の場合も、一時的な寄付金の場合も同様に対象となります。

もし個人で寄付をした場合、日本赤十字社の事業全般 に対する寄付であれば、「特定寄付金」の扱いとなり、所得控除を受けることができます。この場合は、寄付金全額(上限は寄付した人の年間所得総額の40%まで)から、 2,000円差し引いた額が控除されます。

日本赤十字社の各都道府県支部 への寄付で、 総務大臣の指定を受けた事業 に対するものの場合、寄付金全額(上限は寄付した人の年間所得総額の30%)から2,000円差し引いた額の10% が、住民税額から控除されます。

相続または遺贈による財産から、日本赤十字社事業全般に寄付を行なった場合には、相続税の非課税を受けることができます。寄付した相続財産価格は、納めるべき相続税の課税価格には入らなくなります。

寄付したお金の使われ方

赤十字社へ寄付したお金の使われ方は様々です。例えば活動資金、これは日本赤十字社が行なう活動のために必要なお金であり、会費や寄付によって得られた活動資金のおかげで、東日本大震災では医療救護活動や救援物資を届けることができました。

また義援金として使われるお金は、被災地へと全額送金され、義援金配分委員会によって被災者に届けられます。このお金に関しては、あくまでも被災者のためのお金なので、国等の復旧事業等に使われることはありません。

海外救援金として利用される場合には、被災国の赤十字社が行なう支援活動に使用されます。医療や衣食住支援、保健衛生活動に用いられることがほとんどです。

参考文献:日本赤十字社

学校法人等への寄付金

また学校法人を含む公益社団法人への寄付も可能です。寄付先は定められていますが、支払った年分の所得控除として控除が適用されるか、または税額控除の適用を受けるかを選ぶことができます。

ただし、冒頭にも述べたように「寄付した人が有利になるようなお金」に関しては寄付金に該当しません。例えば寄付によって入学が可能になる、特別な利益が及ぶといったものは寄付金に該当しません。

参考文献:公益社団法人等に寄付したとき

寄付をしたいと考えている人へ

「寄付金控除」の話をしていく中で、「今まで関心がなかったけれど寄付を行ないたい」と思ってくれた方もいるかと思います。寄付をしたいと考えている場合には、まず寄付をしたいと思う関心事に目を向けてみましょう。

寄付の対象は様々ですが、「環境問題を解決したい」のか「困っている人を助けたい」のか、人それぞれ目的は違うと思います。純粋な心で寄付を行なうためには、自分が関心を抱いていることを固めてから望むことをおすすめします。

また寄付の方法も様々です。募金箱へのお金の投入だけが寄付ではありません。

私が個人的に寄付の方法として活用しやすいと考えているのは、クレジットカードに付随している寄付の機能やポイントを寄付できる制度です。寄付を行なうことのできるクレジットカードは、カード会社等が利用額の数%(0.5%程度)をNPOなどに自動的に寄付する仕組みができています。普段のお買い物の中で寄付に貢献できていると考えると、抵抗なく社会貢献できた気がしませんか?

またポイント等が貯まったら、その使い道を寄付に向けるというのもひとつの手です。

もしもっとしっかり寄付に参加したいのであれば、NPO法人の会員になるのも良いでしょう。年会費(〜10,000円程度)を支払うことで寄付を行なうことができる上、会員誌などを受け取ることができるため、より社会貢献に参加している感覚を味わうことができます。

毎月寄付を行なうことができる制度もありますから、自動引き落としで決まった額、寄付を行いたいという場合には、この制度を活用するのもおすすめです。

また地震大国でもある日本では、災害時に自分のできる範囲で寄付を贈る人も少なくありません。金融機関を利用して振り込むこともできますし、会社等の取り組みでまとめて寄付金を募集する場合もあります。

先に紹介したようなふるさと納税サイトでも、災害に見舞われた土地への寄付専用サイトが立ち上がっており、そこには”返礼品を希望しない”という選択肢も用意されているほどです。

個人的には、金銭面での寄付も大切ですが、観光に出向くというのも一つの支援になるのではないかと考えています。災害に見舞われた地域に直接足を運び、地元の名産品にお金を落とすのも、立派な寄付なのではないかと考えています。

寄付の考え方は人それぞれ違いますが、もし少しでも支援したいと思ったのであれば、すぐにでも行動に起こしましょう。

参考文献:寄付上手になろう パーフェクト寄付ガイド

まとめ

今回は「寄付金控除」についてご紹介しました。国や地方公共団体に対して贈った寄付金に対して、税控除を受けられる制度です。所得控除の制度は様々な種類が用意されていますが、寄付金控除に関しては、年末調整を行なってもらえるサラリーマンの身であっても、自ら確定申告を行なう必要があります。

とはいえ確定申告書に必要事項を記載すること、寄付の証明書を用意することさえできれば、特別難しい手続きが必要という訳ではありません。寄付を行なった場合には、しっかり確定申告を行なうことをおすすめします。