基礎年金番号がわからない!そんな時の調べ方や照会方法とは?

基礎年金番号というものをご存知ですか?それはずばり、みなさんの年金を管理する番号のこと。意味はわかっていても、いざ基礎年金番号が必要になった際に、番号がわからない方や、調べ方、照会方法などを急いで探す方も多いのではないでしょうか?

平成29年8月より、老齢年金の受給条件が改正され、加入期間が25年以上から10年以上に短縮されることが決定されました。それにより、これまで無年金(年金を受けとれない)だった64万人の方が新たに年金を受給できるようになるのだとか。

ところで、平成19年頃には、「宙に浮いた年金記録」や「消えた年金記録」という言葉が話題となり管理する国側の姿勢に疑問符が打たれました。現在までに管理体制は強化されていると思いますが、未だに誰のものか特定できない納付履歴が2,000万件近くも残っているのだそうです。

そもそも、管理は人間がやることですからミスをなくすこと自体が困難だとも思いますし、年金に関しては自分自身できちんと把握することが結果的に自分自身の安心につながるのではないでしょうか。

この機会に、”自分がいくら年金を納め、将来いくら受給できるのか”、”その金額が国側の管理と一致しているのか”を確認しておきませんか。その上で、受給額の計算方法を元に、新制度による増額をケース別にシミュレーションすることでライフプランを立てる手助けになれればと思います。

まずは、ご自分の基礎年金番号を把握することから始めましょう。

日本経済新聞(平成29年著者調べ)

目次

基礎年金番号とは

 

まずは基礎年金番号とは何かについて簡単に説明します。

 

基礎年金番号って何?

実は基礎年金番号は平成9年1月に導入されました。それまでは公的年金は国民年金、厚生年金、共済年金と別々に管理されていましたが、基礎年金番号として統一することにより、転職や退職をした場合などにも記録を引き継ぐことが可能となり、行政サービスが正確でスムーズに行えるようになりました。

厚生労働省「基礎年金番号とは」(平成29年著者調べ)

3つの年金制度って何?

先ほど公的年金に関して、国民年金、厚生年金、共済年金と3つ挙げました。大雑把に説明しますと、自営業者や学生などが加入するのが「国民年金」(1号と呼びます)、サラリーマンなどが加入するのが「厚生年金」、公務員などが加入するのが「共済年金」(いずれも2号と呼びます)です。因みに、1号に扶養制度はありませんが、2号の場合には、配偶者の扶養に入ることができます。扶養に入っている妻(夫)は3号となります。

例えば転職した場合や失業した場合には、加入制度が変更になり、申請手続きが必要です。

どこで確認できるの? ~年金手帳を見よう~

基礎年金番号はみなさん10桁です。一番正確なのは「年金手帳」にて確認する方法。

日本年金機構のホームページよりイラスト入りでわかりやすく説明されていますので、下記の参照先よりご確認下さい。年金手帳には、オレンジ色のものや青色のものがありますが、手帳を受け取った時期により記載の仕方も変わってきます。ちなみに平成29年3月時点では、平成22年以降のものが最新で青色です。

日本年金機構(平成29年著者調べ)

 

手帳が手元にないときは?

年金手帳が手元にない場合は、「基礎年金番号通知書」や「納付書」などでも確認できます。

基礎年金番号通知書は、平成9年の基礎年金番号制度の導入に先駆け、平成8年12月に加入者に対して送られました。その為、平成8年12月時点で、20歳未満の場合や、退職などの理由により加入していない場合には、通知書は送られません。

また、20歳未満の場合には、その後加入した時点で基礎年金番号が記載された年金手帳が交付されることとなります。

手帳も通知書もないときは?

国民年金の場合は、納付書や領収書でも確認できます。厚生年金は原則的に給与天引きとなりますので、天引きの間は納付書も領収書もありません。

また、その他に「年金証書」、「ねんきん定期便」にて確認できることがあるそうです。さらに、それでも確認できない場合には日本年金機構に問い合わることになります。詳しくは下記の参照先よりご確認下さい。

日本年金機構(平成29年著者調べ)

年金手帳をなくしたら?

年金手帳を紛失またはき損してしまった場合は、被保険者自身が再交付の手続きを受けることになります。

加入している制度が1号(国民年金)なのか、2号(厚生年金)なのか、3号(配偶者の扶養)なのかにより、手続きは変わりますので、詳しくは日本年金機構のホームページよりご確認下さい。

日本年金機構(平成29年著者調べ)

混同しがちな番号 マイナンバーとは違う?

平成28年よりマイナンバー制度が開始し、国民の情報を一括で管理できるようになりました。その際に交付されたマイナンバーは12桁で、今回の基礎年金番号(10桁)とは異なります。

ですが、平成29年1月より日本年金機構ではマイナンバーを利用した年金に関する相談や記録の照会が可能となったそうです。詳しくは下記のリンク先をご確認ください。

日本年金機構(平成29年著者調べ)

混同しがちな番号 雇用保険の被保険者ナンバーとは違う?

雇用保険に加入している場合、被保険者ナンバーがありますが、この番号も基礎年金番号とは異なります。失業した場合などにハローワークにて手続きをする際に必要となる番号で、こちらは11桁です。

「ねんきんネット」を利用しよう!

「ねんきんネット」という日本年金機構が運営するサイトを利用すると、自分の年金記録や受給見込額がいつでも確認できます。基礎年金番号があれば、スマートフォンやパソコンからすぐに登録できますので是非活用して下さい。

自分の納付状況と国側の記録が一致しているのかを把握しておくと安心できますよね。

ねんきんネット(平成29年著者調べ)

老齢年金の受給資格期間が25年から10年に短縮!

 

 

老齢年金は25年(300月)以上の加入期間等がないと受け取れないというのが従来の制度でしたが、平成29年8月からは10年(120月)以上に短縮され、より多くの人が年金を受給できるようになります。

ですが、10年以上納付していないという方も諦めてはいけません。加入期間等が10年以上というのは、実際に納付した期間や月数だけを指すのではありません。さらに、もしも少しだけ足りない場合には遡って納付することも可能ですよ。

ここでは、受給資格の基準となる加入期間や納付の猶予について確認したいと思います。

厚生労働省(平成29年著者調べ)

老齢年金とは

先ほど老齢年金という言葉を使いましたが、一般的に年金は老齢年金のほかに障害年金(障害者となった場合)と遺族年金(遺族となった場合)があります。老齢年金とは受給資格を満たした場合に、65歳以上から亡くなるまで受け取れる年金のことです。(65歳未満からも受け取れる場合がありますが詳細は割愛します)

ここからは年金と記載した場合でも、老齢年金に限った話となります。

年金の受給資格期間って何?

日本年金機構によると、受給資格期間とは「保険料納付済期間+保険料免除期間など+合算対象期間(カラ期間)」だそうです。そして、その合算期間が10年以上あれば老齢年金を受け取ることができるようになります。

受給資格期間をそれぞれ説明します。

保険料納付済期間って何?

保険料納付済期間とは、国民年金、厚生年金、共済年金に加入し実際に納付した期間です。その内、配偶者が厚生年金と共済年金に加入している場合(=2号)には、扶養に入ることができます。

扶養に入っている妻または夫(=3号)は、実際に納付しなくとも国民年金を納付したこととみなされ、納付済期間としてカウントされます。

保険料免除期間などって何?

保険料免除期間とは収入の減少や失業により保険料を納めることが困難な場合に免除となった期間を指します。例えば退職した場合、学生の場合、またはパートやアルバイト等で勤め先にて厚生年金に未加入の場合などに免除申請することができます。

そして、申請後の審査を通過すると免除期間として受理され、受給資格期間に算入することができます。免除に関する詳細は下記のリンク先をご覧ください。

ただし、年金を受給する際の計算には制限がありますので注意が必要です。計算に関しては後ほど、まとめます。

厚生労働省「免除と猶予」(平成29年著者調べ)

 

合算対象期間(カラ期間)って何?

合算対象期間(カラ期間)とは、年金制度への加入が任意であったために、加入していなかった期間を指します。昭和61年3月以前のサラリーマンの配偶者だった期間や、海外に在住していた期間などですが、詳しくは上記リンク先または、下記リンク先をご確認ください。

この期間は受給資格期間には含まれますが、受給金額の計算上は反映されないので「カラ期間」と呼ぶそうです。計算は後程まとめます。

厚生労働省(平成29年著者調べ)

10年に満たない方でも、これから納付できる可能性あり!

以上の3つの期間を合算した期間が10年(120月)以上であれば受給資格がもらえることになりますが、もしも足りない場合にも、これから増やすことができます。その条件や制度について説明します。

60歳以上でも任意加入できる

国民年金は原則的に20歳から60歳までの40年間が義務としての納付期間となりますが、任意で60歳から65歳までの5年間加入することができます。

さらに、加入期間が10年に満たない場合、最長で70歳まで延長することもできます。ただし、細かい条件がありますので、下記のリンク先をご確認ください。

厚生労働省(平成29年著者調べ)

過去5年以内の納め忘れを後納できる

過去5年以内に保険料を納め忘れている場合には、任意加入期間中のものであっても遡って納付することができます。この制度は平成30年9月までの限定となります。納付には申し込みが必要となりますので、先と同じリンク先をご確認ください。

 

3号から1号への申請漏れによる未納扱いを変更できる

以前からニュースになっていた問題でもありますが、サラリーマンである夫(2号)の扶養に入っていた妻(3号)が、夫が自営業となったり定年退職したりした場合に、扶養から抜けたにも関わらず自身の年金加入手続きをしなかったことで未納扱いとなることがありました。

本来であれば、3号(被扶養者)から1号(国民年金被保険者)へと変更しなければならないのですが、そのことを知らなかった為に申請し忘れているケースが多数明らかになったのです。年金は2年間(平成30年9月までは5年間)を過ぎると納付できなくなりますから、未納扱いとなることで資格期間が足りず無年金となる恐れがありました。

この問題を受けて、平成25年より法が改正され、この未納期間を受給資格期間へと算入することが可能となりました。ただし、手続き(「特定期間該当届」の提出)が必要ですので該当される方は下記の日本年金機構のホームページをご確認ください。

日本年金機構(平成29年著者調べ)

10年分を遡って追納できる

先の3号から1号への申告漏れを訂正し、「特定期間該当届」を提出すると受給資格期間へと算入することが可能となりますが、一方で実際の納付はされていませんから受給金額には反映されません。

その為、受給額を増やしたい場合には「特例追納」といって過去10年分を遡って追納することができます。追納できる期間は平成27年4月1日から平成30年3月31日までとなります。追納することで増額される受給額については、計算の項目でまとめます。

約2,000万件の未統合記録がある

日本年金機構によると、持ち主のわからない年金記録は平成28年9月時点で1,971万件あるそうです。旧姓による記録や読み間違いの多い読み方で届け出をした場合など、心当たりのある方は年金事務所にて相談できるそうですので、下記のリンク先をご覧ください。また、先ほど紹介した「ねんきんネット」には、「持ち主不明記録検索」という機能もあるようですので、併せてご確認下さい。

その結果、ご自身の納付記録だとわかれば受給資格期間をクリアして年金が受け取れたり、受給額が増えたりする可能性もあります。諦めずに探ってみましょう!

日本年金機構(平成29年著者調べ)

日本年金機構「ねんきんネッ」(平成29年著者調べ)

 

遡って受給することはできない

平成29年8月より資格期間が10年以上に緩和されることになりましたが、遡って受給することはできません。例えば、平成29年8月時点で70歳の方が国民年金を15年間納めていたとすると、8月以前は無年金です。(25年未満なので)

国民年金は65歳から受給できますから、それまで受給できなかった5年分の年金を、8月以降に遡って受け取ることが可能なのかと言うとそうではありません。

飽くまで平成29年8月からが算定の対象となります。

受給額の計算方法とシミュレーション

FirmBee / Pixabay

ここまではご自身の年金に関する管理番号(基礎年金番号)の調べ方と、制度改正の内容について説明しました。ここからは年金の受給額の計算方法や、実際に制度改正により受給額はどの程度上がるのか、また追納した場合にはどれだけ得するのかをシミュレーションしたいと思います。

受給額の計算方法

厚生年金は報酬(給与)により納付する保険料も受給額も変わってきますが、国民年金は全国一律です。給与の額に関係なく納付する保険料が決められ、納付した月数に応じて受給額も決まります。ですから、今回は国民年金の場合について紹介します。

まず、国民年金の計算方法は40年間払い続けた場合を満額として計算します。満額は、物価変動などを踏まえて毎年度変動しますが、以下の計算式は変わりません。

満額(毎年度変動)×(保険料納付済月数+免除月数×所定の割合)÷480月(40年×12ヵ月)

ややこしいので具体例を挙げます。平成28年度の満額は780,100円となりますので、こちらで計算します。

 

例1)35年間納付した場合

780,100×420(=35年間)÷480≒682,587/1年 ≒56,882円/1ヵ月

日本年金機構(平成29年著者調べ)

免除を受けた場合の計算方法

先の計算式の通りですが、免除の場合には“免除の月数”に“所定の割合”を乗じることになります。前項で失業や学生で納付が困難な場合に免除を受けることができると書きましたが、個人の状況により半額免除ですとか全額免除ですとか、免除される割合も変わってきます。

その上で“所定の割合”が決まるのですが、全額免除月数には“4/8”、4分の1納付月数には“5/8”、半額納付月数には“6/8”、4分の3納付月数には“7/8”を、“免除月数”に乗じることになります。下記の計算例をご覧ください。

 

例1)38年間(456ヵ月)納付し、2年間(24ヵ月)全額免除となった場合

780,100×(456+24×4/8)÷480月=760,597/1年

≒63,383円/1ヵ月

この例では全額免除が2年間ですので、24ヵ月×4/8(全額免除の割合)となります。詳しくは、下記リンク先をご覧ください。

ここで注意したいことは、免除が受理されれば資格期間(25年ないし10年以上)に算入されるだけでなく、全額支払っていない場合でも半額納付したとみなしてくれるということ。

私自身、夫が会社都合で失業した際には申請を行うことで、夫も私(扶養に入った3号でした)も全額免除を受けることができました。失業に限らず、年金を納めることが困難な場合には一度相談することが大切です。

日本年金機構(平成29年著者調べ)

国民年金を10年~25年未満の間、納付した場合の受給額

今回の制度改正により10年以上25年未満納付した人が、新たに受給を受けられることになりました。そこで、それぞれの年数により受給される金額をシミュレーションしたいと思います。(こちらも国民年金の場合です)

例1)10年間納付した場合

780,100×120(10年間)÷480=195,025/1年 (195,025÷12ヵ月≒16,252円/1ヵ月)

例2)15年間納付した場合

780,100×180(15年間)÷480=292,537/1年 (292,537÷12ヵ月≒24,378円/1ヵ月)

例3)20年間納付した場合

780,100×240(20年間)÷480=390,050/1年 (390,050÷12ヵ月≒32,504円/1ヵ月)

例3)24年間納付した場合

780,100×288(24年間)÷480=468,060/1年 (390,050÷12ヵ月≒39,005円/1ヵ月)

このように、これまで全く年金を受けとれなかった無年金の方が、毎月16,000円から39,000円程度受け取れるようになるのですから、大きな変化だと言えますね。

後納または追納した場合のシミュレーション1

先に触れましたが、失業や学生による経済的な理由で免除となっている分は追納制度によって、後で納めることもできます。追納する場合には保険料の負担が発生しますが、納付額に応じて受給額も計算されますから、将来的には受給が増えることになります。ここでは保険料の追納負担額と将来の受給額を比較して、損益の分岐点を検討します。

例1)全額免除を受けていた1ヵ月分を追納した場合

◆追納額(1ヵ月分の保険料)

16,000円(※この金額は次で説明します)

◆追納しなかった場合における1ヵ月分の受給額

780,100×(1ヵ月×4/8)÷480月=812円

◆追納した場合における1ヵ月分の受給額

780,100×1ヵ月÷480=1,625円

→1625円-812円=813円(追納すると813円増額する)

単純計算ですが全額免除を受けた場合、16,000円を追納することで、年間受給額が813円増額します。813円を毎年受給すると、19年~20年以上受け取った時点で、16,000円を超えることになります。(16,000円÷813円=19.6年)つまり、その時点で元が取れるわけです。

国民年金は原則65歳から亡くなるまでもらい続けることができますから、65歳+20年で、85歳辺りからは受給が納付を上回って得することになります。

ただし、これは全額免除の場合です。免除の割合によって計算も変わってきますし、学生免除に関しては、期間に算入されるだけで、受給額には反映されませんので注意が必要です。

国民年金の保険料と受給額は毎年度変動する ~(※)の説明~

先ほどの例で、保険料を16,000円(※)としましたが、実は、国民年金の保険料は物価などに応じて毎年度変動するのです。納付する保険料は、何年度分の保険料なのかによって変わりますが、近年のデータでは15,000円~16,000円となっています。また、未納期間が長い場合には上乗せされることもあるそうですので、詳しくは下記のホームページをご覧ください。

また、受給額に関しても同様に変動します。平成28年度が月額65,008円(年額約780,096円)、平成29年度は月額64,941円(年額約779,292円)です。今回のシミュレーションにて、平成28年度は年額780,100円で計算しています。

厚生労働省(平成29年著者調べ)

日本年金機構(平成29年著者調べ)

後納または追納した場合のシミュレーション2

さて、免除や猶予となった保険料は追納できると言いましたが、他にも過去の分を納付できる制度があります。期間限定ですが、納め忘れた保険料を5年間遡れるという後納制度を先ほど紹介しました。また、3号から1号への変更手続きを忘れ未納となっている場合に、届け出を行えば最高10年分を追納できることにも触れました。

では、その場合の損益分岐点もシミュレーションしたいと思います。(後納と追納の違いについて、この計算上は同じ扱いなので割愛します)

例1)1ヵ月分を後納(追納)した場合

◆追納(後納)額

16,000円

◆受給額

780,100×1ヵ月÷480=1,625円

単純計算ですが、納付する保険料(16,000円/1ヵ月)の1割程度(1,625円/1ヵ月)が受給されますので、例えば10年間で16,250円が受給できれば、その時点で元がとれる計算となります。10年間ですと、75歳以降となりますね。現在の平均寿命からすると75歳での生存確率は決して低くありませんから、追納(後納)する方がメリットがあると言えるかも知れません。

 

後納(追納)による節税をシミュレーション

これまでのシミュレーションでは、10年間または20年間で元が取れるケースを紹介しましたが、それは年金だけに焦点を当てた場合の話。実は後納(追納)することは、節税対策にもなるのです。

会社勤めをしている方は年末調整を、個人事業主は確定申告をすることで、所得税が決まるのですが、その際に社会保険料控除として納めた年金は所得から控除されます。

つまり、納付した年金保険料は収入から引いてくれるので、その分、所得税が低くなるのです。住民税も同じですから、2つの税が節税できます。実際の節税額を見てみましょう。

例1)1ヵ月分の追納(後納)した場合の節税

◆追納額

16,000円

◆所得税の節税額

所得税率5%の方→800円

所得税率10%の方→1,600円

所得税率20%の方→3,200円

◆住民税の節税額

1,600円(一律10%)

 

所得税率が10%の場合、住民税と合計すると3,200円の節税となります。16,000円を納めて、3,200円が還付されるので、実質12,800円の負担という計算になります。

 

例2)2年分を追納(後納)した場合の節税

◆追納額

384,000円(16,000円×24ヵ月)

◆所得税の節税額

所得税率5%の方→19,200円

所得税率10%の方→38,400円

所得税率20%の方→76,800円

◆住民税の節税額

38,400円(一律10%)

所得税率が10%の場合、住民税と合計すると76,800円の節税となります。384,000円を納めて、76,800円が還付されるので、実質307,200円の負担という計算になります。

節税された上に、受給される年金が増額するという点も、追納(後納)のメリットです。

ただし、所得税率は所得に応じて上がりますので節税の幅は人それぞれとなります。税率は5%から45%までありますが、概算で課税所得が200万~300万の方が10%となります。(ただし、課税所得とは経費を控除した後の金額ですので一般的な年収とは異なります)

日本年金機構(平成29年著者調べ)

国税庁「所得税率」(平成29年著者調べ)

補足

先ほども書きましたが、今回のシミュレーションは単純計算によります。年金の保険料及び受給額は物価などに応じて毎年度変動しますし、実際の計算は複雑で端数処理もありますので、飽くまで目安として参考にしてください。

国民年金は65歳から亡くなるまでもらえますから、長生きすることで受給が増えるというのが根本的な仕組みです。でも、人間の寿命は計算できませんので、現実的には経済状況を考慮して納付方法を選択するしかないのだと思います。その際に、より多くの選択肢を知っている方が助けになる場合がありますので、参考にして頂ければ幸いです。

まとめ

いかがでしたでしょうか。今回は基礎年金番号についての説明に始まり、新制度の紹介とシミュレーションを行いました。

国民年金は満額支給の場合に1ヵ月65,000円程度が受け取れます。ですが東京都近郊に住んでいる場合、この金額では家賃さえ支払えるかどうかわかりません。

厚生年金に比べて国民年金は受給額が少ないのは周知のことだと思います。厚生年金は企業側が保険料を負担してくれる分、受給額が増えるのは事実。一方で、企業に対する厚生年金の加入義務には条件があるため、個人事業主でなくとも厚生年金ではない場合もあるのです。

私自身、会計事務所という個人事務所に勤めていた期間は、厚生年金でなく国民年金(1号)でした。出産を機に退職しましたが、夫も個人事務所勤務で国民年金(1号)だったため扶養に入ることはできず、私は無収入でありながら毎月16,000円程の保険料を納めていました。

国民年金には扶養制度がありません。もしも夫が厚生年金であれば扶養に入ることができ、3号として毎月16,000円を支払わなくとも、支払ったとみなされます。

ですがこの件について、不平等だと言いたいのではありません。法律や制度を視野に入れ、一人一人が自分の納付や受給を確認しておくことが大切だと思うのです。そうすることで、確定拠出年金などの新しい制度を検討するなり、現実的で自分に合ったライフプランを立てることが可能となります。

平成29年8月からの改正により10年に短縮しても、26万人の方が依然、無年金のままだそうです。ご自身だけの問題でなく、そういった親を持つ方もいらっしゃるかと思いますが、少しでも楽な生活が送ることができれば安心ですよね。「ねんきんネット」の活用を含め、まずはご自身とご家族の年金についてきちんと知ることから始めてみませんか。