返済利率が低く上限設定もある奨学金はやっぱりお得な理由とは

わが国における公的な奨学金を管理する日本学生支援機構(JASSO)には、平成30年度から給付型の奨学金が創設され、平成29年度から先行して実施されています。しかし、主な奨学金は貸与型です。貸与型には返済時に利息が付くものがあります。奨学金の利息について理解しておきましょう。

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貸与型奨学金

JASSOの奨学金は、学生が自立して学ぶことを支援するために学生本人(奨学生)に貸し出されるお金です。卒業後に返還されたお金は次の世代の奨学金として使われ、先輩から後輩へとリレーされていくのです。返還の義務のない奨学金を「給付型奨学金」と呼ぶのに対し、奨学金を返還する義務が生まれるのが貸与型奨学金です。JASSOの貸与型奨学金は、国内での進学を対象とするものと、海外へ留学生を対象とするものがあります。

国内の学生を対象とする貸与型奨学金

  • 第一種奨学金
  • 第二種奨学金
  • 入学時特別増額貸与奨学金

海外への留学を対象とした貸与型奨学金

  • 第一種奨学金
  • 第二種奨学金
  • 留学(入学)時特別増額貸与奨学金

このうち、第一種奨学金は利息が付かないので元本のみを分割する無利子奨学金です。第二種奨学金は借入元本に利息を上乗せしたものを分割して返済するので、有利子奨学金と呼ばれます。入学時特別増額とは、入学時の諸費用負担を補うことを目的として、初回の奨学金振込時に増額して貸与するものです。日本政策金融公庫の「国の教育ローン」の融資を受けられ なかった世帯の学生を対象に、第一種もしくは第二種奨学金の利用者が追加で申し込むことができる有利子奨学金で、この奨学金だけを借りることはできません。

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奨学金の返還利率

奨学金の返還利率には次のような特徴があります。

  • 在学中は利息が付かない
  • 返還利率は奨学金の貸与が終了した時点で決定するので、貸与年度で異なる
  • 返還利率には年(365日あたり)3%の上限がある

日本学生支援機構の奨学金は在学中の返済が必要無いだけではなく、他の教育ローンよりもはるかに低利で教育資金を調達できます。返還利率が貸し出した年によって異なるのは、国の財政融資資金の借入金利に連動して変動するからですし、国からの借入利率が年3%を超えた場合でも、返還利率は法令で年3%が上限と定められています。ただし、上限が決められているのは基本貸与月額分だけで増額部分に上限はありません。

奨学金の利率算定方式

奨学金の利率の算定方法として、

  1. 利率固定方式
  2. 利率見直し方式

のうち、いずれか一方を選択します。選択するのは第二種奨学金を申し込む時で、選択した「利率の算定方法」は貸与期間終了後は変更できません。また、貸与中であっても、

  • 振込保留中
  • 振込休・停止中
  • 保証変更中

など、変更できない場合があります。

利率固定方式

利率固定方式とは、貸与終了時に決定した利率が返還完了まで適用される方式です。 将来、市場金利が上昇した場合も、反対に市場金利が下降した場合も返還利率は変動しません。

利率見直し方式

利率見直し方式とは、返還期間中、おおむね5年ごとに見直された利率が適用されます。 将来、市場金利が上昇した場合は、貸与終了時の利率より高い利率が適用されますし、反対に市場金利が下降した場合は、貸与終了時の利率より低い利率が適用されます。

利率算定方式の変更について

直近5年間の3月に貸与が終了した奨学金の返還利率は以下の通りです。いずれも平成19年4月以降に奨学生として採用された人が対象です。

参考:JASSOのホームページから筆者作成

表から明らかなように、増額部分の貸与利率は原則として基本月額に係る利率に0.2%上乗せした利率です。また、利率見直し方式の方が利率固定方式より金利が低くなっています。住宅ローンにおいても変動型の方が固定型よりも金利が低いのと同じで、利率固定の場合は、将来の金利上昇時には貸し出す側がリスクを負うことになるため、高めの金利が設定されているのです。では、奨学金を申し込む時は金利が低い「利率見直し方式」を選択し、金利が上昇してきたところで「利率固定方式」とすることはできるのでしょうか?これも貸与期間中ならできることになっていますが、詳しくは奨学金を申し込む時点で確認しておきましょう。

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まとめ

奨学金の返還困難者が増え滞納額も多額になっていることから、奨学金の利用については慎重にならざるを得ません。しかし、国の奨学金は、貸与されている間は無利息で、貸与が終了した翌月から数えて7か月目から口座振替により、月賦または月賦・半年賦併用で返還すれば良いのです。これは他の教育ローンには無いメリットですし、何より金利もかなり低めです。また、返還が困難になった場合のセーフティネットも充実していますので、進学資金が不足すると思ったら、迷わず奨学金を申し込むことをお勧めします。