奨学金の貸与にある、2種類の保証制度とは?

貸与型の奨学金は将来返還しなければならない借金ですね。一般的に金融機関がお金を貸し出すには、借り手がお金を返済できる人であるという「信用」を得ることが条件になります。公的な機関である独立行政法人日本学生支援機構(JASSO)といえども信用できない相手にお金を貸すことはできません。しかし、借り手の学生は学業優先で給与などの収入はないはずですし、親の扶養の下にある方がほとんどですから、預貯金などの資産も多くはないでしょう。信用力の乏しい学生が奨学金を利用することができるのは保証制度があるからです。詳しく見てみましょう。

奨学金の保証制度

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JASSOの貸与型奨学金を申し込む際には、

  • 人的保証制度
  • 機関保証制度

のいずれか(海外への留学に関する奨学金は両方)の制度を選択しなければなりません。

保証制度の目的

学生が奨学金を返還できない場合、学生に代わって保証人または保証機関が返還するという約束をします。この保証制度があってはじめて学生本人に信用を付与(与信)することができるのです。

保証制度の変遷

JASSOの前身である日本育英会では人的保証のみでしたが、平成16年4月に独立行政法人化したのを機に、平成16年度以降の貸与奨学金の採用者に対しては機関保証制度も選択できるようになりました。

人的保証

第三者が奨学金の返還を保証する制度のことで、人的保証制度を選択した場合には、申込みの際に連帯保証人と保証人がそれぞれ必要となります。

連帯保証人

連帯保証人とは、 あなたと連帯して返還の責任を負う人です。

参照元:JASSO
すなわち、連帯保証人とはお金を借りた本人と同等の責任を負う義務を有する人です。学生本人が奨学金を返還できないと連帯保証人に返還義務が課せられます。責任が果たせなかった場合に督促が及ぶのも本人と同じです。連帯保証人には印鑑証明書と収入証明書の提出が求められます。

保証人

保証人とはあなたと連帯保証人が返還できなくなったときに、代わって返還する人です。

参照元:JASSO

保証債務には「補充性」があり、主たる債務者が「履行しない」ときに、履行すればいいということになっています。ですから保証人は、学生本人または連帯保証人から返還してもらって下さいと主張することができ、いきなり保証人が支払をする必要はないと民法で定められているのです。これを催告の抗弁権といいます。

債権者から請求を受けた保証人は,まず主たる債務者に履行を催告せよと抗弁することができること (民法 452) 。検索の抗弁権とともに,保証債務の補充性に基づいて認められたものである。したがって,連帯保証人はこれらの抗弁権をもたない (454条) 。

参照元:コトバンク

保証人には印鑑証明書の提出が求められます。

連帯保証人および保証人の条件

連帯保証人・保証人共通の条件

連帯保証人・保証人共通の条件として、以下の人を選ぶことはできません

  • 本人の配偶者・婚約者
  • 未成年者・学生・債務整理中(破産等)の人
  • 貸与終了時(貸与終了月の末日時点)に本人が満45歳を超える場合は、その時点で60歳 以上の人

連帯保証人の条件

連帯保証人は原則、父母で

  • 奨学金を借りる本人が未成年者の場合は親権者
  • 奨学金を借りる本人が成年者の場合は父母。父 母がいない等の場合は4親等以内の親族

となります。

保証人の条件

保証人は

  • 父母以外
  • 奨学金を借りる本人及び連帯保証人と生計を別にしている
  • 連帯保証人の配偶者・婚約者以外
  • 奨学金を借りる本人の4親等以内の親族
  • 進学届提出日時点で65歳未満

の条件を満たす人ですので、原則、おじ・おば・兄弟姉妹等です。

延滞した場合

JASSOでは、返還金を延滞すると、本人、連帯保証人、保証人に対して、文書と同時に電話による督促を行うことを明記しています。具体的には、

  1. JASSOのみならず、JASSOが業務委託した債権回収会社からの電話による督促がある
  2. 平日、休日ともに9時~21時の間に電話による督促がある
  3. 自宅・携帯番号の登録がない等、他に連絡を取る方法がない場合には、本人の勤務先に督促の電話をすることがある

ということです。

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機関保証制度

連帯保証人や保証人になってくれる人がいなくても奨学金の申込みができるように、貸与を希望する本人が保証機関の連帯保証を受けることができる制度です。学校窓口で奨学金を申し込むと同時に機関保証制度への申込みを行うことができます。

保証の範囲

奨学金の貸与中、または返還中の

  • 奨学金元金
  • 第二種奨学金の利息
  • 延滞金(遅延損害金)

を保証します。

保証料

保証料は

  • 貸与月額
  • 貸与月数
  • 返還期間
  • 貸与利率(第二種奨学金)

によって違います。平成27年度採用者の場合、第二種奨学金を毎月5万円を48か月貸与された大学生の場合、保証料は月額2,132円でした。

延滞した場合

奨学金を借りた本人が延滞した場合、保証機関が本人に代わって債務を一括してJASSOに返還する、代位返済を行います。代位弁済が行われても債務が消滅するわけではなく、その後保証機関が本人に返還を要求します。

まとめ

機関保証制度ができる以前、奨学金を利用するには親類に保証人になってもらいました。軽い気持ちで保証人の印鑑を押したものの、その後学生本人も連帯保証人も返還せず、この親類に返還請求が来たという話を身近に聞いたことがあります。

今は、親類間にわだかまりを残す心配のない機関保証制度を選択する人がほとんどだと思います。しかし、代位弁済が行われた後、保証協会に一括返済を迫られ、応じない場合には年10%もの遅延損害金を課されることもあり、最終的には法的手段に訴えられることにもなりかねません。親や親類に頭を下げなくても良いとはいえ、代位弁済の怖さも承知して利用することが重要です。