様々な事情でどうしてもお金が必要になったとき貴方ならどうするでしょうか。その必要額が少額であれば、親兄弟や仲の良いお友達などにお願いすることもできますが、まとまった金額が必要となるとなかなか頼みにくいものですね。
そうなると、多くの場合は消費者金融や金融機関の様々なローン商品で借入れをするという選択になるのですが、その支払いまでも困難となってしまう可能性が出てきてしまった場合は一体どうしたら良いのでしょうか。
今回は返済が困難になってしまった借金の解決方法の中から、「特定調停」の事を詳しく解説していきたいと思います。特定調停とはどういうものなのか、どのような手続きをしてどのような流れになっていくのか、そして費用はどれぐらいかかるのかなどを詳しくお話しします。
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目次
特定調停とは?
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特定調停というのは、分かりやすく簡単に言ってしまうと、返済が困難で破産まで秒読みという状況まで陥ってしまった場合に(そうなる前に)、調停委員の立会いのもと債権者(お金を貸している側)と話し合いをすることです。
急にまとまったお金が必要となる事は誰にだってあり得ます。そして、お金を借りた時点ではもちろん計画的に返済するつもりです。しかし、色々な事が重なったりして更にお金を借りる、返せない、そしてまた借りるという事を繰り返し、最終的にどうしようもなくなってしまうのです。
債務整理の決意
本当なら、返済が困難になってにっちもさっちも行かなくなる前に手を打つべきなのですが、いわゆる自転車操業のような事を繰り返していて寝ても覚めても返済の事で頭がいっぱいになってくると、とにかく「どうやって返済しよう」という事しか考えられず、冷静な判断もできなくなります。
そして、いよいよどうしようもないと気づいた時に初めて「法の力を借りる」という手段を自ら思いつく、または見かねた知人などからアドバイスを受けて「そんな方法があったのか」と知ることになります。
返済したい気持ちはあっても貯蓄はもちろんありませんし、収入の額から判断しても絶対に返済が続けられないとなれば、「債務整理」を考えます。何の知識もない場合は自分1人の力だとどうしようもない事がたくさんありますので、ほとんどの場合は弁護士さんや司法書士さんに依頼するのが一般的です。
3つの選択肢
上記のような状況に陥ると、頭に浮かぶのは「自己破産」ではないでしょうか。しかし、いきなりリスクの高い自己破産を選択しなくても大丈夫です。他にも「任意整理」、そして今回のテーマである「特定調停」という選択肢だってあるのです。
自己破産をすると、その後の返済義務がなくなりますので「借金がなくなる」とか「借金がチャラになる」という言い方をされていますが、決してそんな甘いものではありません。
自己破産をした後の生活には、色々な制限もありますし数年間は新たな借金ができません。クレジットカードを持つこともできませんしローンを組むこともできなくなるのです。車が壊れても、現金一括でないと購入できなくなるのです。
次に任意整理ですが、簡単に説明すると「任意で債権者側と直接話し合いをして、今後の返済方法や利子の交渉などをすること」です。つまり、返す意思はあるけど現状でこれまで通りの返済が難しいという事を伝えたうえで、返済金額を下げて貰えないかなどの希望を直接交渉するものです。
特定調停のメリット
特定調停は任意整理と少し似ていますが、直接交渉するのではなく調停委員が間に入ってくれることでスムーズな和解が望めます。また、必ずしも弁護士さんなどに依頼する必要がなく、自分でする場合は費用も安く抑えることが可能です。
そして、自己破産と違うのは全ての借金を対象とはせずに、自分が残したいものは残せるという特徴があります。どういう事かというと、例えば古くからお世話になっている人(個人)に借りたお金などは、「人間関係を壊したくないのでこのまま最後まで完済したい」と後々の事を考えて残すことが可能なのです。
特定調停できる条件
誰でも特定調停の申立てができるわけではなく、特定債務者のみに限られます。特定債務者を簡単に説明すると、借金のある人で経済的に破産する恐れがあると判断された人という事になります。
そして、確定債務に対して3年間(最長5年)を目処に延滞や滞納などの可能性がない返済計画が立てられることが条件です。どう頑張ってもムリと判断されれば特定調停を進めることはできませんので、その場合には自己破産など他の手続きをするしかなくなってしまいます。
特定調停の手続き
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ここからは、具体的に特定調停についての色々なお話しを進めていきたいと思います。借金が膨らんでしまって、これ以上の返済ができないという状況になってしまっている方は安易に自己破産をするのではなく、まずは特定調停のことを知ってください。
手続きの流れ
特定調停は、上記でお話しした通り債務整理の方法のひとつで「民事調停の特例」の制度ですので、申請は裁判所(簡易裁判所)となります。
1.簡易裁判所への申立て
管轄の簡易裁判所で申立てをしますが、申立てには「特定調停申立書」が必要です。これは裁判所へ行けばもらえますし、弁護士さんや司法書士さんなどに依頼する場合は依頼を受けた弁護士さん(司法書士さん)が貰って来てくれますので記入するだけです。
この他にも準備しなければならない必要書類などがあります(後述)。裁判所によって必要なものが多少異なりますが、何を準備すればいいのかは特定調停申立書をもらいに行った裁判所で教えてくれますので、1日も早く全てを揃えて申請するようにしましょう。
必要なものが準備できたら管轄の裁判所へ申請します。弁護士さんなどに依頼する場合は申請なども行ってくれますので、依頼する弁護士さんなどに提出することになります。これが受理された時から債権者側からの督促がピタリとなくなりますので精神的な苦痛からは一旦解放されます。
※管轄の裁判所というのは、自分ではなく債権者側の所在地を管轄する裁判所です。
2.出頭(呼び出し)
しばらくすると第一回目の呼び出しがあります。債務者、債権者、そして調停委員会(裁判官1名と調停委員2名)で、今後の返済計画の話し合いをします。この話し合い(調停)は最低でも2回あります。
話し合いの論点としては、3年以内(長くても最長5年)で返済が終わるかどうかという事になります。金利をもう少し低くでないか、月々の返済金額を減額できないかなど、様々な観点からの話し合いをします。
3.調停成立
話し合いの結果、債務者と債権者の双方が納得できて返済の見通しがつけば調停成立となります。そうなれば調停委員会が「調停調書」というものを作成します。
この決定内容には法的効力がありますので、もしも返済が滞ったりすると状況によっては財産や給料の差し押さえなどという強制執行の措置もあり得ます。
※必要なもの
上記でお話しした通り、管轄の裁判所によって必要なものが異なりますので具体的には書けませんが、色々と調べてみた結果をお伝えしますので下記に挙げる物のうち何点か、もしくはそれ以外にもあるかもしれないという事を予めお含みおきください。
- 特定調停申立書
- 特定債務者の資料等
- 関係権利者一覧表 など
- 家計の収支がわかる直前3ヶ月程度の給与明細書など
- 過去2年分程度の源泉徴収票、課税証明書
- 債権者側との取引履歴(借入や返済の動きがわかる領収書や請求書)
- 住民票や戸籍謄本(申立てから2ヶ月以内のもの)
- 本人確認書類
- 預貯金すべて(取引のある金融機関すべての預金通帳など)
- 資産に関する資料
- 生命保険に加入していれば保険証券、解約返戻金の証明書など
- 不動産があれば不動産の登記簿謄本や固定資産評価証明書、査定書など
- 自動車やバイクの車検証や査定書など
かなりたくさん準備するものがありますね。自営業の方であれば、上記に加えて確定申告書の写しや直近3ヶ月程度の売上がわかる帳簿なども必要になります。
調停の不成立
上記のように様々なもの準備をして何度か債権者側と話し合いをしたとしても、お互いが合意するような結果に至らなかった場合は残念ながら「調停不成立」となってしまいます。
そうなった場合は、ストップしていた債権者側からの督促が再び始まるのはもちろん、減額や金利の引き下げなども一切行われませんので、元のままの支払い義務が戻ってくることになります。
しかし、その支払いが困難のため特定調停を開始したのですから支払えるはずがありませんね。こうなってしまうと先にも触れたように自己破産や任意整理、民事調停などという方法に移行するしかありません。
決定までの期間
調停が成立(または不成立)するまでの期間は、債権者側とのやり取りなどもありますので一概には言えませんが、早くても3ヶ月程度はかかると思っていいようです。債権者によっては、履歴などの提出をわざと遅らせたりするところもります。
債権者側としては金利を下げたり減額をするのは利益が減ってしまうのですから、弁護士さんなどに依頼していても快く提出してくれるところは少ないでしょう。なかなか折り合いがつかないという場合は、半年以上かかるようなケースもあるようです。
特定調停にかかる費用
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特定調停をするということは返済が困難になっている状態ですから、そもそも金銭的に余裕があるはずはありません。裁判所で調停をするとなると「莫大な費用が発生するのではないか」という不安から決断できない方もいらっしゃるようです。
弁護士さんなどに依頼する場合
弁護士さんや司法書士さんなどに依頼するとなると、これまた費用がかかってしまうことは明確ですので、ますます「調停なんてとんでもない」と思うかもしれませんね。
もちろん、弁護士さんや司法書士さん(依頼するところ)によって費用の設定はまちまちですが、一般的な平均額は債権者1社につき20,000円~30,000円ぐらいが相場のようです。
他に、着手金や簡易裁判所に出頭した場合の日当などもかかりますので、ごく一般的な流れでいくと20万円~30万円という金額が多いようです。また、ご存知かもしれませんが何に関してもほとんどの場合弁護士さんよりも司法書士さんの方が安い設定になっています。
全て自力でする場合
費用がどうしても準備できないという場合は自分の力だけでするしかありません。※特定調停をするのに必ずしも弁護士さんや司法書士さんが必要というわけではありません。
- 収入印紙代
- 郵便切手代
自分でする場合は上記2つの費用だけです。収入印紙は債権者1社につき500円、郵便切手代は(東京簡易裁判所の場合)債権者1社につき420円分が必要となります。
【例】※債権者が6社だった場合
①.収入印紙…500円×6社=3,000円
②.郵便切手…420円×6社=2,520円
合計金額は5,520円です。自分ですると費用はたったこれだけで済む事になります。しかし、借入から返済全ての履歴などが手元にきちんと保管されていれば別ですが、自力で債権者側と交渉して取り寄せたりするのは非常に困難といえます。
そのような部分だけを弁護士さんなどにお願いして、自分でできることは自分でするというような形をとれば、最初から最後まで全てお任せするよりも費用はかなり抑えられます。
ただし、上記の収入印紙代も郵便切手代も手続きの進行具合などによって追加となる場合もありますし、裁判所によっても異なる場合があります。
調停成立後の時効
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借金やローンには時効がある事をご存知でしょうか。学生時代に小銭が足りずお友達から借りた100円も、とっくに時効を過ぎているかもしれません。
どのような借金かによって時効までの期間は異なります。特定調停が成立した後の債務に関しても時効の期間が設定されているのですが、特定調停が成立した後の時効は「10年」となります。
時効までの期間
時効のカウントが始まるのは一体いつからなのでしょうか。まず、特定調停をすると、それまで返済をしてきた全ての借金に対する時効がリセットとなります。特定調停が成立したら、その時から10年という新たな時効のカウントが始まる事になるのです。
では、成立後10年の間ずっと返済せずにやり過ごせば時効となって返済しなくても良いという事になりますが、世の中そんなに甘くはありません。時効が成立するためには、①.債権者側からの督促を受けないこと、②.債権者側が中断しないこと、という2つの条件があります。
どんな借金やローンも、返済が遅れれば債権者から督促の電話や通知がきます。それを受けた時点で「①.債権者側からの督促を受けない」という条件を満たさないことになります。
例えば、督促の電話が来て債権者と会話をすればその時点でリセット、届いた通知を見て見ないふりを続けても最終的には内容証明郵便などが届きますからこれを受け取ったという事実が証明されますのでリセット、という風に逃げ得などできないのです。
では、電話を解約して夜逃げでもすれば督促の電話も来ないし郵便物も受取れないから支払わなくて良くなるのでは?と思うかも知れませんが、実は時効には「中断」というものがあります。
夜逃げの事実を知った債権者側が時効の中断を裁判所に提訴したすれば時効は中断される事となり、判決の日から時効期間がリセットされるのです。時効が成立していると思って10年経過後に元の生活をしようと思っても無理、結局のところ逃げる事は出来ないです。
特定調停のメリットとデメリット
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ここまで特定調停について色々とお話ししましたが、特定調停をするにあたっての一番のメリットとは何でしょうか。そして逆にデメリットだってありますので、ここからはメリットとデメリットについて見ていきたいと思います。
上記との重複もあると思いますが、改めて詳しく見ることで特定調停をすべきなのか否かの判断材料にもなりますので、考えながらご覧ください。
メリット
特定調停をする一番のメリットは、返済が楽になるという事でいいと思うのですが、詳しく言うと借金をした当初にさかのぼって、利息制限法の上限金利まで金利を引き下げて再計算することになるため、もしかしたら完済している事が判明するかもしれません。
また、必ずしも弁護士さんなどに依頼する必要がないので、費用が安価で済むというのもメリットです。その他にもいろいろとメリットはあります。
- 家族などに知られず(内緒で)手続き可能
- 仕事の有無は関係ないので無職の人でも手続きが可能
- 調停委員が間に入ることで客観的に判断してもらえる
- 将来の利息をカットして元本のみを分割で返済可能になる
- 自己破産とは違って自宅や土地などの不動産を売却したり保険商品を解約しなくて良い
デメリット
特定調停はあくまでも民事調停なので、腕のいい弁護士さんなどに依頼したところで100%成立するとは限りません。調停委員の方が間に入ってくれるというお話しをしましたが、これもあくまでも第三者として中立な立場で判断してくれるだけです。
通常の裁判のように裁判長から「こうしなさい」という判決のようなものももちろんありませんので強制力がないのです。また、離婚調停などと同じで和解すらできない可能性があります。
そして、任意整理などであれば再計算した結果これまで返済してきた金額が過払いであったとなれば、払い過ぎたお金が返ってくる場合もあります。しかし特定調停の場合は、いくら過払い金があっても戻ってはきません。単に支払い義務がなくなる(完済扱いになる)だけにとどまります。
また、自己破産の手続きなどした時と同様、信用情報機関に事故情報が登録されますので、いわゆるブラックリスト者となってしまいます。特定調停をするという事は支払いが困難だという事が明確なわけですから仕方ないといえば仕方ありませんが。
特定調停の成立後
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調停が成立すれば、新たに計画された返済方法の通りにコツコツと返済して完済の日を待つだけなのですが、自己破産も考えるほど切羽詰まった状況から解放されて全ての日常生活が元に戻ってくるわけではありません。
調停が成立したかといって、当然のことですが何もかも無かったことになるはずはありません。いろいろと制限もありますので最後にそのあたりを注意点も踏まえて見ていきたいと思います。
強制執行
税金の滞納者などが財産の差し押さえを受けている様子などをテレビなどでご覧になった事はありますか?彼らは税金を支払えるだけの十分な財産(資産)があるにも関わらず、長年にわたって督促を無視して税金を支払わなかったために強制執行を受ける事になったのです。
特定調停が成立するということは、「この金額なら(金利なら)支払っていけます」という本人の状況と、「この方法で支払ってもらえるのなら」という債権者側との合意が得られたという事ですから、再び支払えなくなるというのは本人の責任です。
当初は真面目に返済しようと思っていても、少しの気の緩みから無駄な買い物をしたりして支払いができなくなったとします。この場合は税金のように何年も滞納すれば強制執行となるのではなく、たった2回支払いが遅れた時点で即お給料やその他の財産が差し押さえられてしまいます。
分割さえ支払いが困難なのに一括返済を迫られることもあり、貯蓄型や解約返戻金のある生命保険の商品も差し押さえられ、勝手に解約などもできなくなります。また、会社勤めの場合は給与を差し押さえますという旨の通知が発送されますので、会社にもバレることになってしまいます。
もしも、返済の途中で勤務先が変わっていた場合は債権者側は必死になって貴方の勤務先を突き止めるでしょう。いずれにしても逃げることはできないのです。勤務先や住所など、個人情報に変更があった場合は自分の方からきちんと債権者に連絡するように注意しましょう。
また、無駄遣いに限らず突発的な出費だってあり得るのですから、今月はどうしても支払いができそうにないという時は、それが分かった時点で債権者へ連絡をします。正直に事実を話せば待ってもらえたり更に分割してくれる良心的なところも少なくありません。
再びの支払い困難
やっぱりどうしても決定した内容通りの返済を継続することが出来なくなったという場合はどうしたら良いのでしょう。ギャンブルや無駄遣いが原因であれば救いようはありませんが、病気や突然のリストラなどという経済的に誰が見てもどうにもならないという状況であれば個人再生や自己破産の手続きとなります。
特定調停の場合と違って、個人再生なら返済しなければならない負債の総額が最高で5分の1程度まで減額となりますので、この方法でなら決められた期限内(原則3年)で完済できると判断可能な人向けの方法となります。個人再生で例え5分の1に減額されても支払いの継続が困難だという場合は自己破産の手続きをするしかありません。
個人再生であれば特定調停と同じように家や土地などの不動産などを処分する必要はありませんが、自己破産の手続きをする場合は不動産や生命保険など、全ての財産を処分することになります。
まとめ
今回は特定調停についてのお話しをしましたがいかがだったでしょうか。ギャンブルなどで借金を繰り返す人は別として、本当にどうしようもない事情で借金が膨らんでしまった方は、今こうして私が記事を書いているこの瞬間も返済に追われているかもしれません。
もしも貴方の近しい人が借金で苦しんでいるのなら、ぜひ1日でも早く何らかの手を打つようアドバイスしてあげてください。そして、この記事が少しでも借金に苦しんでいる方の参考になれば幸いです。