高校、大学時代に奨学金を借り返還期限が近付いても
- 就職できない
- 給与が低い
など、月々の返済が難しい方もいらっしゃるでしょう。
もし、返還できないまま放置すれば延滞金が付加されて返済総額は膨らみ、ますます返還できないことになってしまいます。
経済的な事情を説明して奨学金返還を待ってもらうなど、きちんと手続きをすることで、将来返還できるようアドバイスももらえます。
進学はしたいけれど奨学金の利用には不安がある、そんなあなたのために、奨学金の返還制度とセーフティネットについて考えてみましょう。
目次
奨学金とは
奨学制度とは、おもに経済的理由のために修学できない人に学資を給付、または貸与して修学という目的を達成してもらうための制度です。
企業や大学が優秀な学生に給付する奨学金もありますが、ここでは、公的な機関である独立行政法人・日本学生支援機構(JASSO)の貸与型奨学金についてセーフティネットを確認します。
参照元:日本学生支援機構(JASSO)
奨学金の対象者
日本学生支援機構(JASSO)の貸与型奨学金の対象者は
- 国内の大学・短期大学
- 高等専門学校
- 専修学校(専門課程)
- 大学院
で学ぶ人です。
奨学金の種類
日本学生支援機構(JASSO)の貸与型奨学金には
- 第一種奨学金
- 第二種奨学金
- 入学時特別増額
の3種類があります。
第一種奨学金は貸与されたお金に利息がつかない無利息型なのに対し、第2種は利息がつくので返還時には貸与された額以上を返さなければなりません。利息が付く第二種奨学金は、無利息型の第一種奨学金よりも貸与の条件が緩く、総額も多くなっています。
なお、第一種奨学金を貸与された人の「所得連動返還型無利子奨学金制度」については、ここでは触れません。
奨学金の貸与総額
日本学生支援機構(JASSO)によれば、平成27年度は132万人の学生に1兆638億円が貸与されました。対象学生の38.0%、2.6人に1人がJASSOの奨学金を利用していることになります。
平成28年度3月に終了した大学、学部生一人当たりの平均貸与額は
- 第一種奨学金が236万円
- 第二種奨学金は343万円
ということです。
奨学金の返還義務
日本学生支援機構の貸与型奨学金の「貸与」という意味は、奨学金制度が次世代への循環資金で成り立っているという意味です。
奨学金によって教育の機会を得た人は、「返還」という行為を通して、次の世代の人が教育の機会を得る支援をするのです。
奨学金の延滞と法的措置
奨学金は、法律によって「特定金銭債権」と定められ、債権回収会社がこの債権の管理および回収を行うことを法務大臣から許可されています。
奨学金を延滞すると、
- 債権回収会社から自宅へ電話、文書にて督促される。連絡がつかなければ勤務先への電話、訪問もあり得る。
- 本人と連絡が取れない場合は、保証人に督促される。
- 延滞の約束をして期限が過ぎると年5%もの延滞金が賦課される。
- 延滞が3か月以上になった場合は個人信⽤情報機関に延滞 者として登録されることがある。
など、本人にとって不利なことが起きる上、最終的には返還残額の一括返還請求などの法的措置をとられてしまうこともあるのです。
奨学金延滞金の額
平成27年度末までの奨学金の総貸付額はおよそ9兆円ですが、返還されずに延滞している債権額は同年度末で880億円にのぼります。
ただ、返還が3か月以上延滞した人の数は、平成21年度末の21万1千人から、平成27年度末には16万5千人と減少しています。その背景には、奨学金返還相談センターを設置して相談体制を充実させたり、セーフティネットを充実させたりというJASSOの取組があります。
奨学金のセーフティネット
災害、傷病、経済困難、失業などの返還困難な事情が生じた場合には、
- 減額返還制度
- 返還期限猶予制度
という2つのセーフティネットが準備されています。
いずれの制度も申請し、審査を通ることが条件です。
また、利用者本人が死亡または所定の障害状態になった場合には、免除制度もあります。
減額返還制度
月々の返済額を2分の1に減額して、低い賃金の人にも返還しやすいようにと考えられた制度です。減額返還適用期間に応じた分は返還期間が延長されます。
すなわち、
- 1回当たりの返還金額は少なくなる
- 返還期間は長くなる
ので、返還すべき奨学金の総額は同じです。また、すでに延滞してしまっている人は利用できません。
返還期限猶予制度
一定期間、返還を停止し先送りにする制度です。
注意点は
- 先に延ばした分、返済終了は延長される
- 返還すべき元金や利息が免除されるわけではない
ということです。免除ではなく、あくまでも猶予だということをお忘れなく。
いずれの制度も期間は最長10年間、毎年申請する必要があります。
まとめ
貸与型奨学金制度は、利用者が卒業後に就職でき、自立した生活を営みながら返還できるだけの給与をもらうことを前提に成り立つ制度です。
JASSOが設立された平成16年以降は、卒業後に正規労働者として就職することが難しい上に、実質賃金が低く抑えられる時代が続き、奨学金を返還できない利用者が増大するなど社会問題化しています。
お金を返せない経済状態にある場合には、延滞金で返済総額が膨らまないよう、「返還する意思があるのに、今は無理」ということを申し出ましょう。
まちがっても職場に督促の電話がかからないよう、早め早めに手を打って下さい。