税金がもどってくる?節税対策になる特定口座の確定申告とは

今回は特定口座の確定申告についてご紹介しています。

株式投資を始めるにあたって、まず証券会社に口座を開きますが、その際に「特定口座、源泉徴収あり」を選んだ方は、利益から所得税と住民税が天引きされるため、原則として確定申告が不要となっています。

ですが、場合によっては確定申告を行うと払い込んだ税金が戻ってくることもあります。

還付金があると嬉しいですよね。では、どのようにすれば税金が戻ってくるのでしょうか。

還付申告とは?

falovelykids / Pixabay

納め過ぎた税金を返還してもらう申告のことを還付申告と言い、確定申告と同様の手続きを行います。

申告できる期間は確定申告とは違い、還付金が発生する事柄の翌年1/1から5年以内であれば、いつでも申告することができます。言い換えると、5年前までさかのぼって申告することができます。

還付申告専用の用紙というものはなく、通常の確定申告と同じ用紙で申告することができます。

医療控除や生命保険控除などは一般的に知られていますが、株などの配当金にも控除制度があります。

控除制度は3パターンある

還付申告をした方が良いケースとしては以下の通りです。

1.株や投信の配当金があり、年収1000万円以下の方(配当控除)

2.株の利益や配当の合計が38万円以下で、それ以外に所得がない方(所得控除)

3.株・投信・FXの譲渡損失が出た方(損益通算・繰越控除)

それぞれ配当控除所得控除損益通算などの制度が適用されるため節税効果があります。

申告制度も3パターンある

どのような課税を選ぶのか、言い換えると株などの譲渡益、配当金にかかる税金の支払い方は、以下の3通りに分けられます。

・申告不要制度

・総合課税

・申告分離課税

まずは、申告不要制度から見ていきましょう。

申告不要制度

特定口座、源泉徴収アリの場合は、原則として申告不要制度をとっているため、確定申告をする手間が省ける代わりに、かかる税率は一律20.315%、他社株との損益通算は出来ません。

総合課税と申告分離課税

還付申告をする場合、総合課税申告分離課税を選ぶことができますが、どちらを選んでもよいという事ではなく、配当控除、所得控除を受けるなら総合課税、損益通算・繰越控除をするなら申告分離課税を選ばなくてはなりません。

先の例でみると、

年収1000万円以下の方は、配当控除を受けられるので、総合課税を選ぶ。

株の利益や配当の合計が38万円以下で、それ以外に所得がない方は、所得控除の対象なので、総合課税を選ぶ。

株・投信・FXの譲渡損失が出た方は、損益通算・繰越控除ができるので、申告分離制度を選ぶ。

といった具合になります。

それでは、それぞれを詳しく見ていきましょう。

その1:配当控除のケース

Markgraf-Ave / Pixabay

特定口座、源泉徴収アリの場合、譲渡益だけでなく配当に対しても20.315%(内訳: 所得税15.315%、住民税5%)が課税されます。ですが本来、誰もが必ずしもこの税率で計算されるわけではありません。

配当を含めた年収が1000万円以下の方は、還付申告をすることで課税率がぐっと下がります。

正確に言うと、課税される所得金額695万円以下(年収1000万円が目安となります。)の方は、課税率が下がることになります。

その理由は、所得税の税率にあります。

所得税と住民税

所得に対する課税の内訳は、所得税住民税に分けられます。これは配当金に対しても同様で、還付申告をすることで所得税と住民税のどちらも配当控除が受けられます。

配当控除の税率

配当控除の税率は、所得税、住民税のどちらも課税される所得金額が1000万円を基準として、控除税率が変わります。

課税される所得金額が1000万円以下の場合

所得税10%住民税2.8%合計12.8%分が控除されます。

課税される所得金額が1000万円以上の場合

所得税5%住民税1.4%合計6.4%控除となります。

課税される所得金額が695万円を超えると源泉徴収の方が税率は低くなりますので、還付申告は課税される所得金額が695万円以下かどうかを基準に判断してください。

課税される所得額で課税率が変わるというのは、所得税が累進課税(所得が多いほど税率が高くなる)で計算されるからです。一方、住民税の税率は所得に関係なく一律10%が課税されます。

ちょっとここで、所得税と住民税の配当控除を個別に見ていきましょう。

所得税の税率

課税される所得金額が695万円以下であれば、還付金が戻ってくる可能性が出てくるわけですが、この金額を更に3段階に分けることができます。

・課税される所得金額が195万円以下 

・課税される所得金額が195万円~330万円以下

・課税される所得金額が330万円~695万円以下

それぞれ配当控除を受ける前の所得税率に違いがあるため、配当控除の10%を同じように差し引いても控除後の税率に違いが出てきます。

3段階に分けられてはいますが、計算すると330万円を基準にして控除後の所得税率が変わります。

それでは計算式を見てみましょう。

・課税される所得金額が195万円以下の方

配当控除される前の所得税率は5%となっています。

5% (所得税率) – 10% (配当控除) = 0% (所得税率を超える額は還付されません。)

・課税される所得税率が195万円~330万円以下の方

配当控除される前の所得税率は10%となっています。

1o% (所得税率) – 10% (配当控除) = 0%

・課税される所得税率が330万円~695万円以下

配当控除される前の所得税率は、20%となっています。

20% (所得税率) – 10% (配当控除) = 10%

このように、330万円以下なら所得税率が0%、330万円以上だと所得税率は10%となります。

源泉徴収の所得税率15.315%と比べると、還付申告をすることで税率が0%と10%にまで下がるのですから、申告しない手はありません。

では、住民税の方はどうでしょうか。

住民税の税率は?

住民税の場合は、一律10%の税率ですから、

10% (住民税率) – 2.8% (配当控除) = 7.2%

配当控除後の税率も一律7.2%となります。

こちらも還付申告をした方がよさそうですね。

このように課税される所得金額が695万円(年収およそ1000万円)以下であれば、課税率がぐっと下がります。

その2:所得控除のケース

所得控除には14種類の控除がありますが、ここでお話しするのは誰でも持っている基礎控除についてです。

基礎控除は38万円あり、すべての人に適用されます。

例えば専業主婦の方などは給与所得がありません。そういう方が仮に株の利益や配当を受け取ったとしましょう。その合計金額が38万円以下であれば、基礎控除によって所得税と住民税を免除されます。

株の利益や配当の合計が38万円以下で、それ以外に所得がない方は、還付申告をした方が払いすぎた税金を返還してもらえます。扶養家族から外される心配もありません。

その3:損益通算・繰越控除のケース

 

今現在の証券税制では、株で損をしてしまっても他社株での利益や配当と損益通算して相殺ができます。

ですが、他社株との損益通算をするためには、株での損失を還付申告しておかなければなりません。この場合は申告分離課税を選んでください。総合課税を選んでしまうと、損益通算だけでなく繰越控除も受けられなくなりますので注意してください。

損益通算をしてもまだ損失が残る場合は、その損失を翌年以降3年間、繰り越して控除することができます。

損失を申告しておけば、翌年から3年間、投資で利益が出たとしても損失分の税金を支払わなくてすみます。

損失を3年の間繰り越せるのですから、申告した方がお得ですよね。

まとめ:還付申告をして節税しましょう

 

いかがでしょうか。

還付申告をすれば控除を受けられたり、株での損失を相殺したり繰り越せたりと行ったケースがあります。

お心当たりのある方は、一度税務署に行けば詳しい説明を受けられるので、足を運んでみてもいいと思います。

せっかく出た利益を無駄にしないためにも、節税対策は万全にしてくださいね。

この記事が少しでも参考になれば幸いです。

 

参考元: 国税庁ホームページ(2017年著者調べ)

優しい株のはじめ方(2017年著者調べ)

MFクラウド(2017年著者調べ)