公的な年金制度が信用を失う中、個人年金保険は自分で支払った保険料に見合った分だけ年金を受け取ることのできる保険として注目を集めています。
老後の生活に不安を感じ、個人年金保険への加入について検討している方も多いのではないでしょうか。年金保険への加入を検討する際には、ご自身のライフプランについてもしっかりと考えておく必要があります。また職業によってもプランの立て方は異なります。それでは具体的にどのように計画立てて行けば良いのでしょうか。
そこで、今回は個人年金保険に加入している100名の方を対象に、個人年金保険にかかわるアンケート調査を行いました。この記事ではfincleの実施したアンケート調査にもとづいて、個人年金保険に加入したタイミング、きっかけ、保険の種類や毎月の保険料などについて分析して行きます。
目次
個人年金保険に加入したタイミングとそのきっかけ
個人年金保険に限った話ではありませんが、保険に加入するにはタイミングが大切です。また、自分に合った計画的なプランを立てるためには、なぜ個人年金保険に加入するのかについても、しっかりと考えておく必要があると言えるでしょう。この項目では、加入のタンミングとそのきっかけについて、実際のアンケートをもとに確認してみましょう。
個人年金に加入したタイミングはいつ?
個人年金に加入するのは、いつが適切なのでしょうか。個人年金保険の支払期間についてもしっかりと考え、適切な時期に加入しておきたいものです。いつ加入するのが良いのか知るためにも、早速fincleが調査したアンケートの結果を確認してみましょう。結果は次のようになりました。
アンケート結果を見てみると、20代での加入が最も多いことが分かります。次に多かったのは30代です。実は、一般的に個人年金保険の保険料は若い頃に加入した方が安くなり、返戻率も高くなるため、加入するのであれば20~30代での加入が良いとされています。
貯金でも、10年かけて200万円貯めるのと、5年かけて200万円貯めるのでは、前者の方が1年あたり・1カ月あたりに負担する額が少なくて済みますよね。その原理と同じで、支払期間を長くする代わりに、1カ月の負担を軽くすることができるのです。
したがって、多くの方が、若いうちに保険に加入して受取期間まで毎月少しずつ保険料を支払う方法を取るのです。アンケート結果を見てみても、20~30代での加入が約90%で、40代以降に加入したケースはほとんど見られません。
ただ、加入の際にはそれなりの目的を持って加入しておきたいところです。既に個人年金保険に加入している方はどのようなきっかけで加入しているのでしょうか。次の項目で確認してまいりましょう。
加入したきっかけは?
個人年金保険に加入している皆さんは、どのようなきっかけで加入を決めたのでしょうか。
一番多かったのは、「老後が不安だった」「将来日本で満足できる額の年金を受け取れるか不安だったため、加入を決めた」というコメントでした。実際に寄せられたコメントには次のようなものがありました。
年金がもらえなくなる可能性は今のところありませんが、受け取ることのできる額は必ず低くなります。したがって公的な年金だけで暮らしていくことは到底できません。
今の日本の状況を踏まえると、2055年には1人の高齢者を1.2人で支えなければないという事態に陥ってしまいます。したがって、保険料を支払っても自分のものとなって戻ってこない公的年金に頼るよりも、自分で払った分がすべて自分に返ってくる個人年金保険に頼ろうと判断する方が多いのです。
また、セールスレディや保険外交員、保険会社に勤めている知り合いから勧められて個人年金保険に加入したケースもいくつか見受けられました。
ちょうど個人年金保険に加入しようと思っている時に誘われると、加入するきっかけにもなるのですね。保険会社に勤めている知人や友達からの誘いであれば、すでにある程度の信頼関係ができているので、こちらも安心して加入を検討することができます。
また、このようなコメントも寄せられています。
特に女性の場合、離婚した方や、結婚の予定が無い方は、将来のためにも個人年金保険に加入しておくことが大きな安心材料となるでしょう。自分を支える頼りになるのは、このような個人年金保険であるのです。
個人年金保険のタイプと種類は?
一口に個人年金保険と言っても、その種類・タイプはいくつかあります。それらの種類・タイプにはどのような特徴があるのでしょうか。そして、実際に個人年金保険に加入している方はどのタイプ・種類の保険に加入しているのでしょうか。ここでは、種類・タイプの内容について確認しながら、アンケート結果を分析してみましょう。
個人年金保険はどちらのタイプ?
個人年金保険には3つのタイプの保険があります。その3つの保険とは「終身年金」「有期年金」「確定年金」です。アンケート結果を確認する前にこの3つのタイプについておさえておきましょう。
個人年金保険の3つのタイプとは
個人年金保険には「終身年金」「有期年金」「確定年金」の3つのタイプがあります。そして、それぞれの特徴は次の通りです。
「終身年金」
終身年金とは、保険の加入者が亡くなるまで一生涯年金を受け取ることのできるタイプの年金です。一生涯年金を受けとることができ、安心ではありますが、保険料は比較的高くなります。
さらに、仮に保険加入者が死亡してしまった時、受け取ることのできる金額が今までの支払総額を下回る場合もあるの(=元本割れ)で、損をしてしまう恐れもあります。
「有期年金」
有期年金とは、一定の期間のみ個人年金を受け取るタイプの年金です。保険料が安いという点が大きなメリットです。
しかし、この保険では年金の受取期間に保険加入者が死亡した場合、個人年金を受け取ることができなくなってしまいます。したがって、終身保険と同じく、受取金額が支払総額を下回ってしまう可能性があるのです。
「確定年金」
確定年金とは有期年金と同じように、限りある一定の期間内(通常5年~15年)に個人年金を受け取る年金です。個人年金保険に加入している場合、このタイプの保険に加入するのが主流となっています。
確定年金であれば、年金の受取期間中に加入者本人が亡くなってしまっても遺族の方が個人年金を受け取れます。したがって、年金の受取総額が支払総額を下回ることはありません。
アンケート結果は?
さて、前の項目では個人年金の3つのタイプについて確認してみました。この3つの中でも主流は「確定年金」であるとのことでしたが、実際のところはどうなのでしょうか。
そこで、fincleが調査したアンケート結果を参考にその実態を確認してみますね。アンケート結果は以下のようになりました。
アンケート結果を見ても、やはり確定年金の割合が一番多いことが分かります。確定年金の場合、年金を受け取ることのできる期間は5年、10年、15年などと限られてしまっていますが、この受取期間中に保険加入者本人が亡くなってしまっても、残りの分を遺族が受け取ることができる点が大きなメリットです。
こつこつと支払ってきた分だけしっかりと受け取ることができるので、損をすることがないのですね。残された遺族としても、お金を受け取ることができるので、家計の助けにもなります。さらに、確定年金の場合は毎月の保険料も、終身年金と有期年金の中間なので、保険料・内容共に非常にバランスのとれたタイプの年金保険であることが分かります。
一方で、終身保険と有期保険はぴったりと同じ割合になりました。それぞれの内容を確認してみても、どちらも等しく一長一短あることに気づきます。
先ほど確認しましたが、終身年金の場合には保険が一生涯続く代わりに、保険料が高く、保険加入者が死亡した場合には元本割れの恐れがあります。その一方で有期保険の場合には一定期間のみ年金を受け取り、元本割れの恐れがある代わりに保険料が安いという利点があります。
このことから、「年金の受取期間中に死亡する確率は低いだろうから、多少保険料が高くても一生涯安心して年金を受け取りたい」方は終身年金を、「年金の受取は一定期間のみで構わないし、受取期間中に死亡する可能性も低いだろうから、できる限り保険料を安くしたい」という方には有期年金を選んでいることが分かります。
以上から、「一生涯」を重要視する場合は「終身年金」を「加入者死亡後の遺族への給付」を大事にする場合には「確定年金」を、「保険料の安さ」を重要視する場合には「有期年金」を選ぶのが適切だと分かりました。
全体のバランスを考えれば、アンケート結果からも窺えるように、確定年金が一番適切だといえるでしょう。
個人年金保険の種類は?
個人年金保険には3つのタイプに加え、3つの種類が存在します。その3つの種類とは一体どんなもので、実際に個人年金保険に加入している方がどの種類を選んでいるのかについて、この項目で探ってまいりましょう。
個人年金保険の3つの種類とは
個人年金保険の3つの種類とはどのようなものなのでしょうか。それは「円建て」「外貨建て」「変額」の3つです。アンケート結果を見る前に、それぞれの特徴を確認してみましょう。
「円建て」
円建てとは、名前の通り円を積み立てる個人年金保険のことです。したがって、為替の変動による影響を受けることはありません。このことから、満期保険金や解約返戻金の見通しを立てられるというメリットがあります。
ただ、外貨建てと比較した場合、利率が低い点が短所だと言えるでしょう。こつこつと手堅く積み立てを行ないたいのであれば、円建てが適切な方法です。
「外貨建て」
外貨建ての個人年金保険とは、資産形成が目的の金融商品です。この種類の保険を利用すれば、円より高い金利の通貨を運用することで効率的に貯蓄できます。また、予定利率が高いため、保険料は円建てよりも安くなりやすいのが特徴的です。
さらに、外貨建てでの個人年金保険の場合、契約時と比べて満期時・解約時に円安となる場合、為替レートの差から高額の満期保険金・解約返戻金を受け取ることが可能です。ただし、その反対に契約時よりも円高になってしまった場合には。為替の差が大きな損にもなってしまいます。また、外貨を円に替える際には為替手数料もかかってしまいます。
このように、外貨建てはメリットも大きい分デメリットも大きい、リスクのある種類の個人年金保険であるのです。
「変額」
変額の個人年金保険は2009年から発売されている新しい種類の保険です。この保険は、”保険会社に投資する保険”とも言えるものであり、保険会社が支払った保険料を運用して、実績に応じて受け取る年金が戻るという仕組みを取っています。
つまり運用次第で大きな年金額を受け取ることができるのです。ただし加入者の支払う保険料は変わりません。
その代わりに上手く行けばリターンが大きい分、リスクも非常に高く、受取総額が支払総額を下回ってしまうこともあります。
また、この保険では安定した運用を目指す必要があり、加入者には金融商品についての知識が求められます。したがって、知識を持ち合わせていない方には、おすすめできないといえるでしょう。
アンケート結果! みんなどの種類の保険を選んでいるの?
さて、「円建て」「外貨建て」「変額」について確認したところで、実際個人年金保険に加入している方がどの種類を選んでいるのか、早速アンケート結果を見てみましょう。結果は次の通りです。
圧倒的に「円建て」が多いことが分かりますね。約90%の方がこの種類の個人年金保険を選択しています。やはり、「外貨建て」や「変額」でリスクを冒してまでも高い年金を受け取るよりは、地道に保険料を支払って手堅く個人年金を受け取ることを希望するのですね。
「外貨建て」や「変額」は前項でも確認したように、上手く行けば非常に多くの年金を受け取れますが、失敗してしまうと大きな損を被ってしまうのが怖いですね。確実に年金を受け取りたい方は「円建て」を選択するのが適切だといえるでしょう。
個人年金保険の月々の保険料はいくら?
個人年金保険の毎月の保険料はどのくらいなのでしょうか。生活保険文化センター「生命保険に関する全国実態調査」によると、一般的には月額で1万5000円程度になることが分かっています。そしてfincleの調査でも次のような結果が出ました。
やはり、一般に言われている保険料と同じく、10000円から15000円程度であることが分かりました。次に多かったのが10000円以下ですね。15000円以上の保険料を支払っているケースはかなり少数派です。
公的な年金の保険料は、自由業・自営業者の場合毎月15000円程度、会社員・公務員の場合は20000~25000円となっているので、それと比べると個人年金保険の保険料はかなり抑えられていることが分かります。
個人年金保険の場合、終身年金タイプを選ぶと保険料は高くなる傾向がありますが、アンケート結果を見てみると、終身年金への加入であっても毎月の保険料が10000円未満、あるいは10000~15000円であるケースが多く見られました。
このように、終身年金なのに保険料が安いケースのほとんどは、個人年金保険に加入した年齢が20代である場合が多く見受けられました。したがって、終身保険に加入したい場合は、できる限り若いうちから加入しておくのが得策だと言えます。
参考元:生活保険文化センター「生命保険に関する全国実態調査」(2017年著者調べ)
年金の年額はいくら?
個人年金保険への加入を検討する際には、将来どのくらいの年金を受け取ることができるのか、見通しを立てておく必要があります。公的年金と合わせて生活費用に不足が無いよう、しっかりと計画を立てたいものですよね。
そこで、実際に個人年金保険に加入している方がどのくらいの年額を設定しているのか、アンケート結果を見てみましょう。アンケートに結果は次の通りです。
最も多かったのは24万円未満、次に24~35万円、そして60~71万円となりました。今回のアンケート結果は一般的な個人念人保険の基本年金年額よりも少ないことが分かりました。
生命保険文化センターの「平成24年度 生命保険に関する全国実態調査」を参照してみると、一世帯の個人年金保険の基本年金年額は平均して111万9千円となっています。
ただ、生命保険センターの調査でも、60~72万円未満の年額を受け取っている割合は15%と多かったので、この点に関しては予想通りの結果であったことが分かります。
年額はご自身のライフプランに合わせて決まるものですが、職業によっても大きく異なります。一般的に国民年金に加入している自営業者は、厚生年金に加入している会社員よりも受け取る公的年金額が少ないので、個人年金で受け取る年額を高く設定する傾向があります。
生命保険文化センターの調査によると自営業者の平均年額は1361,000円、会社員の平均年額は1149,000円となっています。
参考元:生命保険文化センター 平成24年度「生命保険に関する全国実態調査」(2017年著者調べ)
年金の受給開始年齢と受給期間について
個人年金保険の受給開始年齢と受給期間は自分で自由に設定することができますが、いざ設定するとなると、どのタイミングでどれくらいの期間に渡って受け取るのがベストなのか悩むでしょう。そこで、この項目ではfincleが集計したアンケート結果をもとに適切な受給開始年齢と受給期間について考察していきましょう。
年金の受給開始年齢は何歳?
一般的に年金の受給開始年齢は55歳から70歳となっています。受取開始年齢を決める際にはどのようなポイントをおさえる必要があるのか、そして実際に個人年金保険に加入している方は何歳に設定しているのかについて、この項目で確認してみましょう。
個人年金の受取開始年齢を決める基準
個人年金の受取開始年齢を決定する際には「受け取った個人年金をどのように活用したいのか」という点について考える必要があります。この点について考えることで、年金を受け取り始めるのに最適な時期を割り出しやすくなります。
早期退職を考えている方であれば55歳からの個人年金受取を検討する必要があります。というのも55歳から個人年金を受け取ることで、厚生年金や国民年金保険を受け取るまでのつなぎとなるためです。
60歳から個人年金を受け取る場合、受け取った年金は国民年金受取開始までの5年間のつなぎ年金となります。
その一方で、65歳から個人年金保険を受け取る場合には定年まで働き、退職以降は公的年金に加える形で個人年金を受け取ることができます。
そして、定年を過ぎてもしばらく働きたい場合には、個人年金の受取開始年齢を70歳に設定してその年齢まで働き、その後公的年金と個人年金の両方を受け取ります。
このように見てみると、個人年金の受取開始年齢はご自身の働き方を考えて設定する必要があることが分かります。
アンケート結果は?
それでは、実際個人年金保険に加入している方は、受取開始年齢を何歳に設定しているのでしょうか。アンケート結果は次のようになりました。
一般的に個人年金の受取開始年齢は60歳~64歳が多いということですが、fincleのアンケート結果でも、60~64歳に受け取りを開始する方が半分以上を占めていることが分かります。国民年金が支払われる65歳までのつなぎ年金として活用したい方が多いのですね。
次に多かったのが65歳から69歳での受け取りです。この年齢に設定した方は、定年後も仕事をしたいという方が多いのでしょう。
60歳未満、あるいは70歳以上での受け取り開始は少数でしたが、人によっては早期退職、あるいはできる限り長く働きたい場合もあるので、ご自身の働き方に合わせて受取開始年齢を設定するのがよいでしょう。
個人年金保険は保険料の振込期間が長いほど、返戻率が高くなります。したがって、受取開始年齢を遅らせることで、一層多くの年金を受け取ることができます。そのため、定年を迎え、公的な年金を受け取り始めたタイミングで、しばらく個人年金を受け取らなくても困らない場合には、受取を先延ばしできます。
というのも、個人年金保険では受取開始年齢に達した時点で、受取時期を変更することができるからです。この点については、ご自身の生活状況をしっかりと考慮した上で判断しましょう。
年金の受給期間は何年?
個人年金保険の受給期間は、一般的に10年が多く、10年以下での契約は少ないと言われています。というのも、年金の受取期間が10年位以上であれば個人年金保険料控除の対象となるためです。
ここでは、実際に個人年金保険に加入している方が受給期間をどのくらいに設定しているのか確認してみます。アンケート結果は次のようになりました。
やはり受給期間を10年から14年に設定している方の割合が多いですね。終身保険の場合は、一生涯年金を受け取ることができますが、その分保険料が高く、早く亡くなってしまった場合には受取総額が支払総額を下回ってしまう恐れがあります。
そのリスクを踏まえて、保険料もちょうどよい10年受取期間が選ばれているということでしょう。このように設定することで、公的な年金を受け取るまでのつなぎ年金として活用したり、あるいは公的年金に上乗せする形で年金を受け取ったりすることができるのです。
ただ、個人年金保険の受取期間は加入者の職業によっても、適切な長さが異なります。具体的に言えば、「国民年金保険」に加入しているのか、それとも「厚生年金」に加入しているのかで受取期間の設定は変わってくるのです、言い換えれば、自由業・自営業者か、それとも会社員・公務員かで異なるということです。
会社員・公務員の場合、つまり「厚生年金」に加入している場合は、国民年金よりも多くの年金を受け取ることができるため、個人年金保険の受取期間も10年となる場合が多くなっています。
一方で、自由業・自営業者の場合、つまり「国民年金保険」に加入している場合には、年金の受給額が少ないので、個人年金の給付期間を10年以上にしている方が多いのが現状です。
最後に
今回見てきたように、個人年金保険は様々なタイプ・種類があります。保険を選ぶ際には、将来自分は何歳まで働きたいのか、ご自身の職業(自由業なのか、会社員なのか)、年金の支払われる期間はどのくらいにしたいのか、といったことについて考えた上で選ぶ必要があります。
保険の加入と一緒に自分のライフプランについても見直せるので、保険加入の検討とともにしっかり計画を立てましょう。特に20代の方は、早く加入することで、余裕を持って保険料をおさめることができるので、個人年金保険の必要性について熟考してみましょう。
母親を亡くしてすぐだったこともあり、保険の有り難味を痛感していたので、医療保障と積み立てのような感じで個人年金に加入しました。