地震保険には加入すべき!? 必要性や補償内容をわかりやすく解説!

東日本大震災を経て、地震保険はますます注目されるようになりました。保険には様々なものがありますが、自然災害が原因で甚大な損害を被った場合、どの保険においても補償の対象外となってしまうことがほとんどです。しかし、地震保険であれば多くの保険でカバーしきれない部分を補うことができるのです。

ただ、現状を見てみると、地震の多い日本で暮らしているにもかかわらず、それほど多くの方が加入しているわけではありません。それはなぜなのか、そして地震保険に加入する必要はあるのか、自分の身を守るためにも慎重に考えておく必要があります。

そこで、今回は地震保険について取り上げ、その仕組みやメリット・デメリット、保険の必要性などについてご一緒に確認して行きましょう。

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地震保険とは

名前を聞けば、なんとなく「地震の時に役立つ保険かな」と想像できる保険ですが、そもそも地震保険とはどのような保険なのか、しっかりと基本を把握する必要があります。そこで、この項目では地震保険の基本事項について見て行きます。

地震保険とは

地震保険とは、地震・噴火・津波が起きた際に、損害を受けた住宅・家財の再建にかかる費用の一部を補償してくれる保険のことです。

その大きな特徴は、民間会社だけで運営されている保険ではなく、政府と協力して運営されている保険であるという点です。

大地震が発生した時には甚大な被害が多数の人に及ぶため、民間の保険会社だけでは保険の責任を負うことができません。そのため、政府がその責任のうち一定額以上を請け負うことで、加入者に給付する保険金を賄っているのです。

また、地震保険は通常火災保険とセットになって提供されており、原則として単体で加入することのできない保険ですあり、火災保険と地震保険を組み合わせると保険料が非常に高くなってしまうことが特徴的です。

地震保険の特徴とは?

地震保険は地震による被害を受けた住宅・家財の再建を補償してくれる保険ですが、より具体的にはどのような特徴が挙げられるのでしょうか。まずは地震保険の対象について確認してみましょう。

地震保険の対象は、前項で確認したように「建物」と「家財」となっています。「家財」にあたるものについては「火災保険は契約10年がお得!? 賃貸でも入るべき火災保険を徹底解説!」の記事で詳しくご紹介しているので、ご興味のある方はそちらをお確かめ下さい。

このように「建物」と「家財」について補償を受け取ることのできる地震保険ですが、その対象については例外もあります。まず、住居として利用されていない建物は保険の対象外となります。

また、家財に関しても対象外のものがあり、貴金属や宝石、骨董品、自動車や小切手など30万円以上の貴重品は対象の範囲に含まれていません。加入を決める前にはこの点についてしっかりとおさえておく必要があります。

また、地震保険においては保険金額にも大きな特徴があり、火災保険の保険金額の30%~50%までしか保障されないという特徴があります。したがって、たいていの場合、建物に対しては5000万円、家財に関しては1000万円が補償金額の限度となっています。(ちなみに地震保険の場合は、保険会社が政府と協力して運営しているので、保険料・保険金はどの保険会社も同じ設定になっています。)

つまり、地震保険は受けた被害の全額を補償してくれる保険ではないのです。これは大きなデメリットにもなる点ではありますが、詳しくはまた後ほど地震保険の必要性について考える際に触れることにしましょう。

そして、どの程度の被害を受けた時にどのくらいの補償を受け取ることができるのかという点についても気になりますよね。どのくらいの保険金を受け取ることができるかは、受けた被害の規模に応じて決まります。被害の規模は「全損」「半損」「一部損」の3つの区分に分けられています。

建物や家財が全壊してしまった時、つまり「全損」の場合には、契約金額の100%を受け取ることが可能です。ただし、全壊した時に受け取れる保険金は、先ほど触れたようにあくまでも火災保険の保険金額の30%から50%だけです。

建物が「半損」した場合には、契約金額の50%の割合の保険金を受け取ることが可能です。さらに、一部のみ破損した場合には契約金額の5%が補償されます。

地震保険の保険料は?

地震保険は、政府と民間企業が協力して行っている保険であるため、どの保険会社の地震保険を選んでも同じ保険料を支払うことになります。しかし、日本のどの地域に住んでいても保険料が変わらないというわけではありません。火災保険と同様に、建物の構造と住んでいる地域によって保険料は異なるのです。

建物の構造に関しては「耐火構造」あるいは「非耐火構造」のどちらかに分類され、基本的には「耐火構造」の方が保険料も安くなります。

また住んでいる地域について、地震保険の保険料が高くなるのは、南海トラフ地震などの大規模地震の恐れのある四国地方、東海地方、そして関東地方の地域です。その一方で、中部地方や中国地方においては地震の起こる確率も比較的少ないため、保険料も安くなります。ただし、保険料は地震の予測が変わると改定されるため、決して不動のものではありません。

地震保険の割引制度

地震保険においては保険料の割引制度が設定されています。割引には主に4種類あり、それぞれ「建築年割引」「免震建築物割引」「耐震等級割引」「耐震診断割引」となっています。それぞれの内容は次のようになります。

「建築年割引」

建築年割引の対象建物は、昭和56年6月1日以降に新しく建てられた建物であり、10%の割引を受けることができます。

「免震建築物割引」

免震建築物割引の対象となるのは、「住宅の品質確保の促進等に関する法律」に基づいた免震建築物であり、50%の割引を受けることが可能となります。

「耐震等級割引」

この割引の対象となるのは次の基準のどちらかを満たしている場合です。

  • 国土交通省の定める「耐震診断による耐震等級の評価指針」において設定されている耐震等級を有する場合
  • 「住宅の品質確保の促進等に関する法律」に規定する日本住宅性能表示基準で定められている耐震等級を有する場合

これらの基準を満たしており、耐震等級1であるなら10%、耐震等級2であれば30%、3であるなら50%の割引が適用されます。

「耐震診断割引」

耐震診断割引が適用されるのは、地方公共団体が行う耐震診断あるいは耐震改修を経て、建築基準法の耐震基準を満たした場合です。割引は10%と設定されています。

液状化の被害の場合にも地震保険が適用される

以前地震保険において、液状化被害は補償の対象となっていませんでした。なぜなら、柱と基礎以外には大きな損傷を見出すことができない場合がほとんどであったからです。

しかし、東日本大震災を経て、地震保険の補償対象が見直されたため、現在においては液状化による被害であっても「全損」であれば保険金額の100%、「半損」の場合には50%、「一部損」であるならば5%が支払われるようになりました。

地震保険の必要性は?

前の項目でも確認したように、地震保険は被害を受けた場合に損失の全額を補償してくれる保険ではありません。一部しか保障されない保険であるにもかかわらず、なぜこのような保険が存在するのでしょうか。

その理由について知るためには、地震保険の本来の目的について理解しておく必要があります。実は地震保険で受け取ることのできる保険金は自由に使用することができます。つまり、生活費や怪我の治療費、引っ越しのための資金など、制限なく加入者の思うように使うことができるのです。

要するに、地震保険の本来の目的とは、被災者が生活を立て直すために必要としている資金を与えることにあり、家を再建すること自体にあるわけではないのです

このように、そもそもの目的が家の再建にあるわけでなく、「生活の復興」のためにあるために、十分でない保険金が給付されることになっているのです。

地震保険への加入が必要な場合とは?

地震保険には加入する必要のある場合と地震保険が不必要である場合の2つに分かれます。加入した方が良い場合とは、どのような場合なのかここで確認してみましょう。

地震保険に加入すべき人は、家を新しく建てたばかりの方住宅ローンの残債の多い方、そして津波や地盤沈下などの被害を比較的受けやすい地域に住んでいる方です。

住宅ローンの返済がまだ何十年分も残っている場合、新しい住居にかかるお金を支払いながらローンを返して行くことは非常に難しいものです。したがって、たとえ損害額の一部しかカバーすることのできない地震保険の保険金であっても、このような二重負担を回避するためには非常にありがたい助けとなるのです。

また、一人身で頼りになる家族・親族のいない方十分な貯金のない方も加入しておくと安心な保険です。

さらに、分譲マンションにお住いの場合も、地震保険に加入していると非常に安心です。分譲マンションの場合、ご自身が済んでいる専有部分と、それ以外の共有部分の2つに保険をかけることになります。共有部分については地震保険に加入していますが、個人が地震保険に加入し、専有部分にも保険をかけておくことで、共有部分だけ損害を受けたケースにおいても保険金を受け取ることができるのです。

地震保険料控除を受けることができる

地震保険に加入すると、地震保険料控除を受けることが可能となります。この控除においては、50,000円の所得税を限度として地震保険料すべてが所得控除の対象とされているのです。

さらに、住民税についても25,000円を限度として、地震保険料の2分の1が所得控除の対象をなっているのです。控除を受けることができるのは、地震保険の契約者自身、あるいは生計を共にしている配偶者や親族となります。

また、控除を受けるためには申告が必要とされています。申告には保険会社から届く控除証明書が必要となります。そして、実際の手続きとしては、自営業者であれば確定申告、会社員であれば年末調整が必要となります。

基本的に地震保険は保険会社が提供するものですが、保険会社以外にも都道府県民型の新型火災共済というタイプの地震保険も存在します。この都道府県民型の新型火災共済に加入している場合には、残念ながら地震保険料控除を受けることはできません。

さらに、コープ共済や全労済、そしてJA共済などでも地震補償を受けることができますが、こちらの場合は控除の対象となります

加入メリット

地震保険への加入を検討する際には、メリットについて知っておきたいところです。加入して万が一の場合にどのような対応を受けることができるのか、この項目で確認しましょう。

所得控除対象となる

地震保険は所得控除の対象となり、保険料が年間で5万円以下の場合には支払った全額が所得控除の対象となります。また、保険料が年間5万円を超えた場合には5万円までが所得控除の対象となります。

他の保険でカバーできない地震被害をカバー

保険商品は実に多く存在しますが、実は地震などの自然災害をカバーしてくれる保険は少ないものです。たとえば、火災保険においては地震・津波が原因で火災被害を被った場合には補償の対象外となってしまいます。また、自動車保険においても地震によって車が損害を受けた場合には補償の対象外となります。

しかし、地震の被害に対する補償に特化した地震保険であれば、地震や津波の被害を受けた場合はもちろん、噴火の被害を被った時にも補償を受け取ることが可能です。したがって、地震の不安が大きい地域に住んでいる場合には非常に心強い保険であると言えるでしょう。

加入デメリット

一方で、デメリットについてはどのようなことが挙げられるのでしょうか。地震保険加入後にデメリットを知り、損した気持ちにならないよう、先取りして周到に確認しておきましょう。

住居の立て直しに必要な額を、全額受け取ることが不可能

加入のデメリットとして一番に挙げられることは、地震や津波、そして噴火で受けた被害として、建物が損傷を受けた場合、再建に必要な費用を全額負担してもらえるわけではないという点です。

この理由については先にもご紹介しましたが、地震保険の本来の目的が「被災者の生活の復興のため」にあるからです。そもそもの目的は建物の再建ではないのです。したがって、地震保険は補償の不足した保険となってしまうのです。

また、この理由以外にも、地震保険は保険でありながらも、相互扶助としての保険、という在り方に適合していないことが挙げられます。大地震が起ると広範囲に被害が及び、不特定多数の人が被害を受けてしまいます。

本来保険は加入者同士で共用の財布にお金を入れて、誰かが必要としている時にその財布から必要な分を引き出すといった仕組みで成り立っています。しかし、地震の被害に遭い、一度に多くの保険加入者が共用の財布からお金を引き出してしまうと、財布を管理している保険会社も対応しきれません。

つまり、そもそも地震は保険で取り扱いにくいものなのです。そのため、地震保険には政府が関与しているのですね。このような点を考えてみると、受け取れる保険金の額が十分でない理由が納得できるでしょう。

火災保険に加入しなければならない

前述の通り、地震保険は火災保険と一緒に契約する必要があるため、地震保険のみの加入はできません。したがって、火災保険が不要だと考えている方も、地震保険に加入したいのであれば、火災保険に加入しなければなりません。加入する必要がないと考えている保険の保険料まで支払わなければならないので、大きな負担になってしまいます。

ただ、既に火災保険に加入しており、後から地震保険を付け足したい場合には途中でも加入することが可能です。

保険金が支払われない場合もある

先ほどご紹介したように、受け取ることのできる保険金の金額は「全損」「半損」「一部損」の3つの場合に沿って決まられています。

「全損」や「半損」に当てはまらなくても、「一部損」の場合であっても保険金を受け取ることができますが、「一部損」には基準が存在しており、その基準を満たさない限り、保険金を受け取ることはできません。「一部損」として保険金を受け取ることのできる基準は次の通りです。

  • 半損以上ではないが、床上浸水または地面から45cmを超える浸水被害を受けている
  • 家財の場合、全体の時価の10%以上30%未満

これらの基準のうち、いずれかを満たしていない限り、保険金を受け取ることは不可能なのです。

地震保険以外にも地震共済がある!

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地震保険と言うと民間保険会社が提供しているものを思い浮かべがちですが、実は民間保険会社以外の提供する「地震保険」以外にも「地震共済」というものが存在します。

民間の保険会社は不特定多数の方を対象にしていますが、「地震共済」の場合には、特定の地域に住んでいる方、あるいは特定の職業に就いている方が対象となっています。

「地震共済」としては「県民共済」「全労済」「JA共済」「日本震災パートナーズ」が代表的です。ここではそれぞれの特徴について確認してみますね。

「県民共済」

県民共済では新型火災共済が提供されています。この共済では、地震などで住宅が「半壊」あるいは「半焼」以上の場合に見舞共済金を受け取ることができます。民間企業が提供している地震保険の場合には「全損」「半損」「一部損」の3つのレベルが設定されていましたが、新型火災保険では「半壊」あるいは「半焼」以上でないと見舞共済金を受け取ることができないのです。

さらに、見舞共済金は加入額の5%の範囲内で、支払いは最高300万円となります。保障は少ないものの、掛け金が安いこと、そして決算後に余剰金が戻されるため、掛け金をできる限り抑えたい場合には重宝する共済であることが分かります。

「日本震災パートナーズ」

日本震災パートナーズは地震補償保険「リスタ」を提供しています。この保険の最大の特徴は地震補償保険に単独で加入することができるという点です。民間の保険会社が提供する地震保険は火災保険とセットで加入する必要があり、単独で加入することはできません。この点において、「リスタ」は非常にユニークな保険なのです。

また、民間の地震保険だけでは物足りないと感じている場合には、この「リスタ」を上乗せすることも可能です。保険料も非常にお手頃なので、地震に対する備えは行いたいけれども、保険料は安く抑えたいという場合には最適な保険だと言えるでしょう。

ただし、地震保険と比較した場合保障される額が少ない点がデメリットだと言えます。実際に保険金額の最高額は世帯人数によって分かれており、人数が1人の場合には最高300万円、3人の場合には600万円、5人の場合には900万円となっています。

また、保障額は「全損」の場合保険金額の100%、「半損」の場合は保険金額の2分の1、「一部損」の場合は6分の1となっています。

さらに、家財に対して保障を受けることはできず、あくまでも建物に関する保険であることに注意する必要があります。

「全労済」

全労済では「自然災害保障付火災共済」が提供されています。「自然災害保障付火災保険」という名前の通り、全労済の地震共済に加入するためには一般の地震保険と同じように、全労済の「火災共済」に加入する必要があります。つまり、全労済の地震共済である「自然災害共済」単独で加入することは不可能なのです。

全労済の「自然災害保障付保険」では、建物と家財の両方、あるいはどちらかのみを選択することができます。また、この共済は「標準タイプ」と「大型タイプ」の2種類を提供しており、前者であれば加入限度額は火災共済の2割で最高額は1,200万円となり、後者であれば3割で最高額は1,800万円となります。さらに、毎月の支払額も安ければたった数千円からなので非常にお得な共済です。

「JA共済」

JA共済の地震共済は「建物更生共済 むてき」です。この共済は、民間の保険会社ではカバーできない、自宅以外の店舗や事務所などの損害も保障してくれるというメリットがあります

さらに、保険料が掛け捨てではないとい点も大きなメリットです。というのも、地震共済の契約が完了した時には「満期共済金」を受け取ることができるからです。

料金はどの都道府県においても違いはなく、全国一律となっています。ただ、「満期共済金」を受け取ることができる代わりに、地震保険よりも割高となります。受け取り方も、一括受取と分割受取のどちらかを選ぶことができるので非常に柔軟な共済であると言えるでしょう。

以上が民間の地震保険とは異なる特徴を持った地震共済の内容です。民間の地震保険と地震共済の両方を比較して、ご自身の必要とする保障を受けられる保障、あるいは共済を選びたいところです。

また、民間の地震保険に加入する場合は、セットで加入しなければならない火災保険を選ぶ必要があります。火災保険については、各保険会社で異なるプランや特徴を持ったものが提供されているので、比較した上でご自身の希望にそぐう保険商品を選ぶと良いでしょう。

代表的な各保険会社の火災保険については「火災保険は契約10年がお得!? 賃貸でも入るべき火災保険を徹底解説!」の記事で詳しくご紹介しているので、そちらをご参照くださいね。

最後に

引用元:photoAC

地震列島の上で生活を営む日本人であれば、是非とも知っておきたい地震保険ですが、「被災者の生活の復興のため」という本来の目的を知らない限り、役に立たない保険という認識で終わってしまう点に注意が必要です

したがって、地震保険に加入する際には「住居を立て直す費用を賄えるか」という点に着目するよりも「被災後の生活の助けになるか」という観点を持つことが大切です。自由に使える地震保険の保険金で、生活がどれほど楽になるか分かりません。

特に地震の多い地域にお住いの方は、今一度地震保険の内容を確認し、必要か否かしっかりと見極めてみてくださいね。