遺言書と合わせて準備しておきたい財産目録の書き方と注意点

自分が他界した後の相続争いなどを避けるために準備しておくものとして、誰もが思いつくのが遺言書ですね。それも、確実に執行するためには、単なる遺言書ではなく公正証書遺言を準備します。しかし、それで完璧でしょうか。

今回は、自分の亡き後に相続問題などが起きて家族や親族が揉めたりしないために、遺言書もさることながら絶対に準備しておいた方が良い「財産目録」のお話しをしたいと思います。

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財産目録とは

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まずは、財産目録とはどのようなものなのかをご説明します。「自分には関係のない」と思っている方、「争うような財産なんて無いから大丈夫」と思っている方、この記事を読み終える頃には財産目録の大切さをきっと知って頂けると思います。

何のために財産目録は作るもの?

万が一のために準備するものと言えば遺言書ですが、いきなり遺言書を作成した方にとても多いのが財産・資産の記載モレです。例えば、家や土地などは絶対に忘れないと思います。でも、意外と忘れているものが多く、思い出すたびに遺言書の書き換えをしている方も少なくありません。

そこで今回のテーマ「財産目録」です。ゆっくりと時間をかけて、いろいろと思い出して財産目録を作成しておけば、自分が他界した後に起きるかもしれない財産争いなどを避けることができるのです。簡単に言うと、所有している財産を詳細に記入する財産一覧というイメージです。

万が一の時のために準備するものと言えば、ライフエンディングノートというものもありますね。これは、自分が亡くなったら預貯金はどこにあるとか、財産をどうしたいとか、どこで最期を迎えたいかまで記入することが出来るもので、自分の希望を綴っておくノートです。

だったら財産目録と同じように使えるのでは?という思いもよぎりますが大きな違いがあるのです。ライフエンディングノートには法的な効力は一切ありませんので、死後このノートが見つかったところで遺言書の代わりにはならないのです。

※自己破産の手続きなどをする際にも財産目録の記入が必要となります。自己破産手続きの場合は、書き出した財産(資産)が大きく関係してきますが、今回は遺言書とセットで考える財産目録に絞ってお話しします。

財産目録はいつ必要なの?

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財産目録は一体いつ必要になるのでしょうか。上記を見て分かるように、遺言書を作成する前に準備するもので、まずは財産目録に財産の詳細を記入して、それから遺言書に書き写すものは書き写すというような流れが一般的です。

書式や決まりは?

「財産目録」をネットで検索すると、ExcelやWordで作成された無料のひな形やテンプレートがたくさん見つかります。それらを1つ1つ見てみると色々な様式となっています。縦型もあれば横型もありますし、一枚ものもあれば複数枚にわたるものまで実に様々です。

そうなんです。実は財産目録には書式や様式に決まり事がなく、全ての財産のことが分かりやすくまとまっていれば、極端な事を言ってしまうと新聞広告(チラシ)の裏でも良いのです。どこかの機関で取り寄せる必要もなく自分で勝手に作成できてしまうという事です。

という事は、パソコンのない方は手書きで書けばいいですし、パソコンをお持ちなら沢山あるひな形の中から気に入ったものをダウンロードして作成してもいいわけです。また、文字の入力が苦手なら用紙のみダウンロードして印刷、そこへ手書きで記入すればOKですし、入力してそのまま自分のパソコンに保存も出来ますね。

※自己破産の手続き等で必要な財産目録の場合は裁判所によって決まっている書式(様式)があります。

記入する内容

様式が決まっていないし、「これをこうして、このように記入しましょう」的な決まりもありませんが、最低限これだけは書いておいた方が良いという項目があります。では、財産目録に記載すべき内容を1つづつ見てみましょう。

【預貯金】財産の1つである預貯金は遺言書作成の際に絶対忘れてはいけないものですね。預貯金を記載する前に全ての通帳を確認してみてください。長年使用していなかった通帳、キャッシュカードだけで出し入れしていて記帳をしていなかった通帳などはありませんか?

また、ご自身が開設した金融機関の口座はそれで全てですか?ネットバンクに口座をお持ちではありませんか?インターネット上やATMだけで入出金などをするネットバンクの場合は基本的に通帳がありませんので、記載忘れのないようご注意ください。

そしてもう一つ、長年そのままになっている口座は一定期間を経過すると休眠預金となってしまい、場合によっては(金融機関によっても異なります)解約扱いになってしまう事もありますので、一度お取引している金融機関で記帳をしてみましょう。

【生命保険】ご自身が加入している生命保険や損害保険は漏れのないよう記載しましょう。保険商品の場合は、医療保険や万が一の時のための死亡保険などは覚えていても、貯蓄商品(年金保険や一時払いで加入した積立保険)や掛け捨ての損害保険などは忘れがちですのでよく思い出してください。

ただし、受取人が被相続人以外の場合は相続財産にはなりませんので、財産目録に記載しなくても大丈夫です。しかし、万が一の時は解約の手続きなどを遺族にしてもらう必要がありますので、そのままでいいというわけではありません。

【不動産】これも財産目録には欠かせないものとなります。住んでいる家はもちろんですが、所有している土地や建物、山林、貸している宅地なども全て漏れのないように記載します。

【ローンなど】財産というのは、貯蓄や不動産などだけではありません。知人などに借りた借金やローンも全て含めて財産なのです。ですから、これらも漏れなく記入しておかないと亡くなった後に「○○円貸していたので返して欲しい」という人が突然現れるなんて事もあります。

【その他】株主になっている方やゴルフ会員権などをお持ちの方は、これらの有価証券も忘れないように記入します。保険商品もそうなのですが、株券や証券などを紛失している場合があります。探しても見つからない時は、何かしらの通知や担当者の名刺などから直接問い合わせてみましょう。

財産目録の作成方法

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では、実際に記入する方法を見ていきましょう。前述の通り様式などに決まりはないのですが、誰が見ても分かりやすい書き方で、1つ1つが事細かで詳細な内容であることが重要です。人によって記入する財産の項目が異なりますので、一通りの項目を1つづつ詳しく見ていきたいと思います。

不動産について

不動産を記入する際は、名称や住所などはもちろん、借地権・賃貸権・抵当権などまで全て詳細に記入しなくてはなりません。宅地に関しては、固定資産税納税通知書に記載してある価格や評価額も記入します。

誰かに貸している土地や建物がある場合や、農地・山林なども忘れないようにします。逆に自分が借りている土地や建物についても財産(借地権)となりますので、これらも財産目録に記載する必要があります。

【記入例】※登記簿謄本や固定資産評価証明書などを見ながら記入します。

地目所在地面積評価額備考(利用状況等)
建物住居東京都千代田区○○12番98.00㎡8,000,000円自宅
建物住居東京都千代田区○○456番72.00㎡11,000,000円借家として賃貸中
土地山林福島県会津若松市○○123番400.00㎡3,000,000円
借地権宅地神奈川県横浜市○○789番800.00㎡28,000,000円共同住宅用敷地
合計金額     50,000,000円

評価額の算出方法

不動産の評価額を算出する方法として一般的なのは、固定資産税評価額と路線価というものです。固定資産税評価証明書に記載してある評価額は上記の通り誰にでも分かりますが、路線価となると「分からない」という方がいらっしゃいます。

路線価というのは、その土地の路線(人が行き来する主要な道)に面している宅地の1㎡あたりの評価額のことです。実は、固定資産税の評価額を算出している方法が路線価です。ですから、毎年届く固定資産税の納税通知書だけあれば自分で路線価を計算する必要はありません。

預貯金について

預貯金は、所有している全ての金融機関について漏れなく記入します。金額は「これぐらいだったかな?」というアバウトにものではなく、1円単位まで正確な金額を記入しますので、事前に記帳をして残高を把握します。放置していた通帳があって解約手続きをされていた場合は復活の手続きをしてください。

また、ネットバンクの口座をお持ちの方は、マイページからログインして残高照会をしましょう。そして自宅の金庫などに現金を置いている方はもちろん、作成時点で持っている現金(所持金)も合わせて記入しますので、記入前にきちんと正確に数えてください。

【記入例】※金融機関の通帳などを見ながら正確に記入します。

金融機関名支店名種別記号.番号金額(残高)管理者備考
みずほ銀行○○支店普通12345671,200,000円本人名義人(本人)
 ○○銀行本店定期456789010,000,000円本人名義人(妻)
ゆうちょ銀行○○支店普通123-4567895,200,000円本人名義人(本人)
 —現金1,830,000円本人金庫(1,800,000円)
合計金額  18,230,000円

保険商品について

自分が亡くなった場合に、配偶者や子供たちに残すための死亡保険などはもちろん、加入している全ての保険商品について細かく記入します。保険証券が見当たらない場合は、加入している保険会社に契約者本人が問い合わせをしてください。

保険会社は、例え配偶者であっても契約内容などを教えてはくれません。口頭で教えてもらってメモしても構いませんが、念のため契約内容のわかる契約要項や契約概要といったものを郵送してもらうようにしましょう。

【記入例】※契約者、被保険者、受取人に至るまで詳細に記入します。

保険会社種別証券番号契約者被保険者受取人保険金額備考
○○生命死亡00-1234567本人本人20,000,000円(妻)○○花子
○○生命貯蓄11-1234567本人本人6,000,000円(子)○○太郎
○○保険医療22-1234567本人12,500,000円(妻)○○花子
○○損保傷害123-4567-892本人本人12,000,000円(妻)○○花子
合計金額  49,500,000円

負債について

負債に関しては、家族の誰もが知らなかった借金なども含めて漏れなく記載しておく必要があります。万が一のとき、資産よりも負債の方が大きかった場合は、相続した人に返済義務が生じますので、後々のことも考えて記入しなければいけません。

また、友人などに借金をしている場合は借用書を取り交わさないケースが多々あります。これは、毎回の返済を金融機関などから振り込んでいる場合ならその振込明細があれば借用の証明になります。それも無い場合はその方の住所や氏名などをきちんと記入します。

【記入例】※どんなに金額が小さくても全ての負債を記入します。

区分借入先借入金総額返済方法返済残金備考
住宅ローン○○信用金庫60,000,000円口座引落し12,000,000円
自動車ローン○○銀行2,000,000円口座引落し300,000円 ナンバー○○
借入金○○金融1,500,000円振込み200,000円振込用紙
借入金○○ 二郎800,000円手渡し240,000円借用書あり
合計金額64,300,000円          12,740,000円

その他

上記の他に、株式や社債、ゴルフ会員権、自動車、貴金属や宝石、美術品なども全て記入します。どこに置いてあるのか(飾っているのか、保管しているのか)も、誰が見ても分るような書き方で細かく記入します。また、借金ではなく自分が誰かに貸しているという場合も、その人の住所をはじめとする情報を記入します。

個人の情報を記入する際は、固定電話も携帯電話も両方記入しましょう。FAX番号もあればもちろん記入すべきですし、その人が引っ越したりした場合の事を考慮して実家の住所なども分れば記入しておくと良いですね。

財産目録を作成するメリット

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財産目録のことはだいたい分かりましたね。では、財産目録を作成するメリットについて見てみましょう。まず、言えることは「残された遺族のため」なのですが、財産目録を作成しておくことによってどのように役に立つのかをお話ししたいと思います。

【遺産分割を円滑にします】

先にも触れていますが、財産というのは不動産や預貯金などだけではなく、借金などのマイナス分(負債)も含まれます。これが後から発覚して遺族が揉めるという事案はとても多く、「知らなかった」では済まされない事になりますし決して他人事ではないのです。

例えば、あまり仲の良くない兄弟がいたとします。兄は父の事業を継いでいましたが弟は他県に住み一般企業でサラリーマンをしていました。父の会社は経営が悪化していて兄は自転車操業を繰り返していたのですが弟はそんな事を知る由もありません。

父が亡くなって数ヶ月、ようやく弟が重い腰をあげて実家へやって来ました。ここで弟は初めて負債がたくさんあった事を知り「そんな遺産(負債)は相続放棄する」と言ったところで手遅れです。相続放棄は3ヶ月以内に手続きをしないといけない事になっているのです。

極端な例を挙げましたが、離れて暮らしている親族も含めて相続対象となっている人全員が、負債も含めて財産の詳細を知っていればトラブルを防ぐ事ができるのです。上記のように兄弟仲の良し悪しに関わらず、常に連絡を取り合う事も大切です。

【相続税のための準備】

財産を相続すると相続税が発生しますね。自分の財産を全て書き出すことで相続税がかかるもの、かからないものが一目瞭然となります。財産目録を作成すれば、それを基に相続税の金額(納付額)まで知ることができるのです。

相続したはいいけれど、相続税として納める金額が大きくて手続きなどに時間と手間をかけたわりに実際の受け取り分がほとんど残らなかったなんてことも少なくありません。財産目録を作成すると見えてくる相続税を少しでも低く抑える方法はたくさんありますので、作成段階でその対策ができるのも大きなメリットといえます。

例えば、預貯金などの現金をそのままにしておくよりも保険商品にして少しずつ子供たちに渡していくのも良い方法です。年間110万円までは非課税(2017年4月現在)ですので、貯蓄商品を利用して現金を移して減らしていけば最終的に一括で相続するよりも相続税が少なくて済みます。

早めに作成するメリット

財産目録を作成するのは誰でも何時でも自由にできるのですから、出来るだけ早く作成するようにしましょう。まだ遺言書は早いだろうと思われる年齢であっても、いつどんな災難が降りかかるかは誰にも分かりません。遺言書と考えると重たいイメージなので軽く考えてください。

自分が気をつけていても突然の事故に巻き込まれてしまう事だってあります。また、認知症が始まってしまうと記憶も曖昧だったり判断能力も低下しますので、年齢には関係なく早めに作成する事が望ましいのです。そうする事で、何時どんな事があってもスムーズに事が流れるのです。

財産目録作成の注意点

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上記で簡単な例を挙げて記入方法などをざっくりとお話ししましたが、財産目録を作成するにあたって大切な金額について触れておきたいと思います。金額はどの時点のどの金額を記入するのかなど、特に注意が必要なものをお話しします。

預貯金

預貯金に関しては、金融機関の通帳を見て残金を記入するとお話ししましたが、財産目録を作成するその日現在の残高です。数ヶ月入出金していないからと、数ヶ月前に記帳した時点の残高を記入してはいけません。その日から本日までの間に利息が付いているかもしれません。

また、自分ではすっかり忘れていた保険商品や積立商品の年払い(年に1回)の引き落としがその間に引かれているという可能性もゼロではありません。書き出す前に必ず記帳することを忘れないで下さい。通帳が見当たらない場合はキャッシュカードがあればATMで残高照会を。

不動産

不動産に関してはいくつか注意点があります。まず土地や建物の場合は固定資産税の納税通知書で把握できるのですが、それ以外の不動産については登記事項証明書などでそれぞれ調べる必要があります。

また、納税通知書は所有している不動産すべてを把握できる反面、共有しているものや1月1日以降に何かしらの変動があったものについては記載されていないため、このような場合も登記事項証明書で1つづつ調べることになります。

土地の評価というのは大変難しいものと言われていて、実際に相続税の計算には時間がかかったり相続人同士が評価額でトラブルになったりする事案がたくさんあります。そのような事態をできるだけ避けるためにも自分でできる事は事前にしておくようにしましょう。

そして、もう一つ厄介なのが借地権です。貸している側も借りている側もきちんと把握する必要があるにもかかわらず、借地権の場合は登記していないというケースが非常に多く、登記簿謄本では確認することができず土地の借用書などからしか調査できないため時間がかかります。

宝石や美術品

宝石、貴金属、骨董品、美術品など、その価値は興味のあるなしに関わらず素人に判断できるものではありません。これらの評価額を出すにはプロに鑑定してもらわなければなりません。

そんなの面倒くさいからとあえて記載しない方や、昔購入した価値あるものをうっかり記載し忘れていたという方もいらっしゃいますが、どちらの場合も後になって発覚すると場合によっては追徴課税で多く支払うことにもなりかねませんので、漏れなく記載しましょう。

亡くなった後に形見分けをして子供たちがそれぞれ欲しいものを持っていくというような話しをよく聞くのですが、お金に換えられる物(価値のある物)というのは相続税の対象となりますので、見落としがちな小さな物まで全て書き出しておく事が必要なのです。

こんな時はどうする?

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財産目録を作成していて、「これはどうするんだろう」という疑問が出てくる事があります。これまでに私が見聞きした中から、代表的な(よく聞かれるもの)2つを最後にご紹介します。

①.とても安価とはいえない墓石はもちろん、墓地なども記入する必要がある?

とても個性的な墓石を特注で作ってもらったり、希少な天然石(庵治石など)を使った墓石は一般的な価格よりもはるかに高額なものとなります。これも財産の1つであると思いがちですが、実はこれらは相続対象ではありませんので、財産目録に記載する必要はありません。

②.不動産と動産の違いがよく分からない。

【動産】自動車、オートバイ、パソコンやテレビなどの電化製品、ペット、貴金属、美術品、骨董品、家具などを動産といいます。法律上では「不動産以外のもの」という定義がありますが、そのすべてが相続税の対象となるわけではありません。

【不動産】土地、宅地、山林、農地の他に、借地権、借家権、抵当権、地上権などの権利も不動産に含まれます。

まとめ

いかがだったでしょうか。今回のテーマ「財産目録」について理解できたでしょうか。遺言書の事は知っていても、財産目録は知らないという方が意外と多くいらっしゃいます。

賃貸だし土地も持ってないし財産なんて無いと思っている方でも、車や預貯金、生命保険があるのではないですか?借金やローンはありませんか?ぜひ一度ご自身の所有している財産を書き出してみてください。

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