ちゃんと知ってる?税金と社会保険の「扶養制度」を徹底解説




みなさん、扶養や扶養控除についてきちんと知っていますか?私はいわゆる子持ちのパート主婦で、同じ状況のママ友とよく世間話をします。彼女たちと話していると「ダンナさんの扶養の範囲で働いている」という言葉をよく耳にします。

プライベートな内容なので深くは聞きませんが、兼ねてから「どの扶養のことを言っているのだろう」と疑問に思っていました。恐らく“扶養の範囲に収まるように”、職場側が労働時間を調整しているのだと思いますので、パート主婦は職場を信頼し、あまり気にしないのかも知れません。

でも、扶養には「税金」と「社会保険」の2種類があるのをご存知でしたか?そして、ご自身がどちらの扶養を基準として働いているのか把握できていますか?

「103万円の壁」「106万円の壁」「130万円の壁」という複数の壁が存在するのは有名かも知れません。その違いは、2種類の扶養の内どちらを基準にするのかという違いがあるのですが、実は、どの壁を選ぶのが最適かというのは、個人の状況によってそれぞれなのです。ですから、現在採用している壁が最適ではない可能性もあるということ。

今回は扶養という制度についてお話ししたいと思います。税金の扶養控除制度と社会保険の扶養制度の違い、平成29年4月に改正された配偶者控除も視野に入れて紹介したいと思います。この内容が、ご自身の働き方を見直すきっかけになれば思います。

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目次

扶養とは?

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まず、扶養という言葉について、全体のお話をしたいと思います。

 扶養には2種類ある

先ほど言ったとおり、扶養には2種類あります。1つ目は税金(所得税と住民税)で、2つ目は社会保険です。この2つは元になる制度及び法律が異なりますので全く別物なのですが、考え方が似ているので混同しやすいのが特徴です。それぞれ分けて説明します。

税金の扶養

まず、税金の扶養について。税金の扶養制度とは、納税者に扶養親族がいる場合に一定の金額の所得控除が受けられるというもの。簡単に言うと、高校生の子供が父親の扶養に入ることで、父親の所得税及び住民税が低くなります。子供がアルバイトをしている場合など、子供の収入には制限がありますので後ほど紹介します。

因みに配偶者の扶養については、配偶者控除という制度があり、税法上は別々に規定されています。

社会保険の扶養

一方、社会保険の扶養とは、一定の条件を満たす被扶養者がいる場合に被保険者の扶養に入れるという制度。簡単に言うと、パートで働く妻が夫の社会保険の扶養に入ると、妻は社会保険料(健康保険及び厚生年金)を納める義務がなくなるということです。

その際のパート収入には制限がありますので、後ほど詳しく説明します。

色々な壁がある理由

この2つの扶養制度は扶養認定の基準が異なります。いずれも“関係の範囲”と“収入”という2条件で決められる点で共通していますが、具体的な内容が異なります。そのため、「103万の壁」や「130万の壁」といった具合に複数の壁が存在することになり、複雑でややこしい印象を与えてしまうのだと思います。

それぞれ壁の特徴

これから詳しく説明しますが、社会保険の基準は「106万の壁」又は「130万の壁」といって、“収入がその金額未満であれば扶養に入れる”という風にはっきりとしています。

一方、税金の壁は「103万(改正後は150万)の壁」なのですが、それを超えた場合には141万(改正後は201万)まで控除が受けられる別の制度が用意されています。

社会保険のように壁を超えるか超えないかで扶養に入れるか否かが決まるのではなく、103万(150万)を超えた場合には141万円(201万)まで段階的に控除が受けられるというグラデーションです。

従って、社会保険はハッキリとした壁で、税金は緩やかな壁という特徴があります。

扶養控除とは  (税金)

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最初に税金の制度である「扶養控除」について詳しく説明します。税金とは具体的に「所得税」と「住民税」を指しますが、2つは根本的な考え方が似ていますので、まずは所得税について説明し、後で住民税について補足します。

扶養控除とは

扶養者がいれば税金が低くなるというシステムは既にご存知かと思います。では、実際どのような計算を行うのかをという話しですが、簡単に言うと、扶養人数に応じて、納税者の所得を引いていくことになります。

所得税額の計算のイメージは以下の通りです。

収入-経費=所得

所得×所得税率=所得税額

この式の「所得」の部分が少なければ「所得税額」も低くなります。そして扶養人数に応じて、一定の金額を「所得」からマイナス(=控除)していくのが、扶養控除です。(実際の税額計算では他の控除もあり複雑ですので、ここでは簡素化しています。イメージで考えて下さい。)

扶養控除の条件

計算のイメージを説明したところで、今度は扶養控除を受けるための条件に移ります。扶養控除を受けることができる要件は下記のとおりです。国税庁のホームページに載っているものを簡略化して載せます。

1. 配偶者以外の親族又は里子などで、16歳以上であること(※1)

2. 納税者と生計を一にしていること

3. 年間合計所得が38万円以下(給与収入だけの場合に103万円以下)であること

4. 青色(白色)申告者の事業専従者として給与を得ていないこと

※1 配偶者は「配偶者控除」という別の制度がありますので扶養控除では除外されます。また、親族の範囲などについての詳細はリンク先の国税庁のホームページでご確認下さい。

簡単に一例を挙げますと、年収103万以下の子供や親がいる場合に当てはまると思います。4の青色申告者に関しては、青色(又は白色)の個人事業主から専従者として給与を受けていなければ関係ありません。

参考:国税庁「扶養控除」(平成29年著者調べ)

扶養控除の控除額

上記の条件を満たした場合に扶養控除が受けられますが、実際にいくらぐらい控除されるのかというと以下の通りです。

1. 一般の控除対象扶養親族(16歳以上)   38万円

2. 特定扶養親族(19歳以上23歳未満)     63万円

3. 同居老親等以外の者(70歳以上)     48万円 ※1

4. 同居老親等(70歳以上)         58万円 ※1

※1 同居老親の「同居」及び「老親」の定義に関しては先と同じ国税庁リンク先「扶養控除」よりご確認下さい。

扶養控除による減税額

控除額について説明しましたが、この金額を税額からマイナスするわけではありません。所得からマイナスしますので、実際にいくらぐらい減税となるのかを計算してみたいと思います。

減税額の計算例

先ほどの計算式にて「所得×所得税率=所得税額」としました。この所得税率は一律でなく、個人の所得によって5%から45%まで変動し、所得が高ければ税率も上がる仕組みです。

◆ 税率10%の人が「一般の扶養控除(38万円)」を受ける場合の例

38万円×10%(※1)=38,000円の減税

※1 所得税率10%とは、所得金額が195万円超~330万円の方です。(所得金額の考え方は次で説明)

◆ 税率20%の人が「特定扶養親族控除(63万円)」を受ける場合

63万円×20%(※2)=126,000円の減税

※2 所得税率20%とは、所得金額が330万超~695万円の方です。

単純計算なので計算の目安として下さい。(税率一覧は下記リンク先参照)

参考:国税庁「所得税税率」(平成29年著者調べ)

所得金額の考え方 所得と収入は違う

先の例で、税率を出す際に「所得金額が195万超~330万円の方」としましたが、この「所得」は収入(年収)ではありません。先ほど計算式にしたとおり、「収入-経費=所得」となります。

経費とはサラリーマンであれば給与所得控除と呼ばれるもの。詳しい説明は割愛しますが、給与所得控除は金額が決められていますので、下記にリンク先よりご確認下さい。

ここでは参考までに所得の計算例を挙げます。年収が500万円の方の場合、給与所得控除が154万円ですので、そちらをマイナスして、所得が346万円となります。さらにそこから支払った社会保険料や生命保険料など一定の所得控除を行い、その後の金額が最終的な「所得」です。ですから年収500万円の方でも、所得としては300万円程になる可能性があります。(所得300万円ですと税率10%です)

給与所得控除と違い、生命保険料控除などの所得控除は個人により様々ですから、一概にいくらになるとは言えません。

参考:国税庁「給与所得控除」(平成29年著者調べ)

配偶者控除とは (税金)

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先ほどの扶養控除は配偶者以外というのが条件でした。ここからは配偶者に対する「配偶者控除」について説明します。

配偶者控除の条件

扶養控除と配偶者控除は考え方が同じですが、控除となる条件(関係の範囲と収入)と控除金額が一部異なります。まずは条件について紹介します。

1. 配偶者であること(内縁関係は該当しない)

2. 納税者と生計を一にしていること

3. 年間合計所得が38万円以下(給与収入だけの場合に103万円以下)であること

4. 青色(白色)申告者の事業専従者として給与を得ていないこと

参考:国税庁「配偶者控除」(平成29年著者調べ)

配偶者控除の控除額

配偶者控除の控除額は次のとおりです。

1. 一般の控除対象配偶者        38万円 ※1

2. 老人控除対象配偶者(70歳以上)    48万円 ※1

※1 平成30年分より控除の金額も改正されます。詳しくは後ほどまとめます。

平成30年より制度改正

平成29年4月に税制改正が決定され、配偶者控除は平成30年より下記の内容が変更されることになります。

1. 控除を受ける人の所得制限 納税者の所得が1,000万円超える場合には、配偶者控除が適用されなくなります

2. 控除額 控除額は納税者の所得に応じて変更する形になります

◆ 控除を受ける人の所得900万円以下 38万円(老人は48万円) ※改正前と変更なし

◆ 控除を受ける人の所得900万円超950万円以下 26万円(老人32万円)

◆ 控除を受ける人の所得950万円超1,000万円以下 13万円(16万円)

参考:財務省「平成29年税制改正」(平成29年著者調べ)

参考:財務省「平成29年度税制改正の大網」(平成29年著者調べ)

配偶者特別控除とは

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先に少し触れたのですが、「103万の壁」(配偶者控除)を超えた場合には、141万(改正後は201万)まで段階的な控除が受けられます。その制度を配偶者特別控除と言います。

配偶者特別控除の条件

配偶者特別控除の条件は以下の通りです。

1. 配偶者であること(内縁関係は該当しない)

2. 控除を受ける人と生計を一にしていること

3. 年間合計所得が38万円超76万円未満(給与収入だけの場合に103万円超141万円未満)であること ※1

4. 青色(白色)申告者の事業専従者として給与を得ていないこと

5. 他の人の扶養親族となっていないこと

6. 控除を受ける人の合計所得金額が1,000万円以下であること

※1 平成29年まではこの金額ですが平成30年から変更になります。詳しくは後ほどまとめます。

参考:国税庁「配偶者特別控除」(平成29年著者調べ)

配偶者控除の控除額

配偶者控除の控除額は配偶者の所得金額に応じて9段階に設定されています。

38万円を超え40万円未満        38万円 ※1

40万円以上45万円未満           36万円 ※1

※1 以下、7つのステップに分けて設定され所得が上がる程、控除額が減少します。詳しくは先と同じ国税庁リンク先「配偶者特別控除」をご確認下さい。また、金額は平成30年分より改正されますので、次項でまとめます。

平成30年分より制度改正

平成30年分より配偶者特別控除も変更され、控除額は控除を受ける人の所得に応じて変更する形になります。

1. 控除を受ける人の所得900万円以下

◆配偶者の合計所得が38万円超85万円以下  38万円

◆配偶者の合計所得が85万円超90万円以下  36万円

→ 以下7段階に分かれて設定(所得が上がる程、控除額が減少)

2.  控除を受ける人の所得900万円超950万円以下

◆配偶者の合計所得が38万円超85万円以下  26万円

◆配偶者の合計所得が85万円超90万円以下  24万円

→ 以下7段階に分かれて設定(所得が上がる程、控除額が減少)

3.  控除を受ける人の所得950万円超1,000万円以下

◆配偶者の合計所得が38万円超85万円以下  13万円

◆配偶者の合計所得が85万円超90万円以下  12万円

→ 以下7段階に分かれて設定(所得が上がる程、控除額が減少)

控除を受ける人の所得の分け方、1,000万円という所得制限は配偶者控除と同じです。配偶者特別控除は、その中で、配偶者の所得を9つのステップに分けて控除額を設定する形です。所得と控除額の詳細は下記のリンク先をご確認下さい。

参考:財務省「平成29年度税制改正大網」(平成29年著者調べ)

「103万円の壁」から「150万円の壁」に

配偶者特別控除において、38万円の満額控除を受けられる所得が改正前は40万円(給与収入だけの場合は105万円)から85万円(給与収入だけの場合は150万円)に改正されます。150万円までは満額控除を受けられるという意味で、世間的に「103万円」の壁が「150万円の壁」になると言われています。(先に書いた通り、150万円の壁は、控除を受ける人の所得が900万円以下の場合に限ります)

住民税の扶養控除、配偶者控除、配偶者特別控除

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ここまでは所得税についての扶養控除などについて説明しました。所得税と同じように、所得に対して課税される税金として住民税があります。

住民税の計算方法と控除額

所得税は国税ですが、住民税は地方税となります。考え方は所得税と殆ど同じですが、控除額が異なります。扶養控除も、配偶者控除も、配偶者特別控除も所得税の控除額は満額が38万円ですが、住民税は33万円です。詳しい金額は下記のリンク先をご覧ください。

参考:総務省「市町村税関係資料」(平成29年著者調べ)

住民税も改正されます

平成30年分より所得税の配偶者控除と配偶者特別控除の金額が変わりますが、住民税も変更になります。(住民税は平成31年度分から)詳しい変更内容は割愛しますので下記のリンク先(2ページから4ページ)をご覧ください。

参考:財務省「平成29年度税制改正大網」(平成29年著者調べ)

 

社会保険の扶養とは

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ここまで税金(所得税、住民税)の扶養制度について説明しました。ここからは制度も法律も異なる「社会保険」の扶養についてです。

社会保険の扶養とは

社会保険の扶養制度とは、年収が130万円未満の場合に、配偶者など(父母や祖父母や子供)の扶養に入ることで、保険料を納める必要がなくなる制度のことです。

詳しい制度内容は社会保険組合により異なりますので、雇用元の会社か組合に問い合わせるのが一番です。参考までに中小企業の多くが加入する協会けんぽのリンクを載せます。

参考:日本年金機構(平成29年著者調べ)

税金と社会保険における「扶養」の違い

税金と社会保険における「扶養」の扱いが異なる代表的な例を紹介したいと思います。

1. 税金では内縁関係が認められませんが、社会保険では内縁関係が認められます

2. 収入を計算する際に、税金では交通費を算入しません(=非課税)が、社会保険は交通費も算入します(つまり、遠くの職場に通う場合、支給された交通費は給与と同じ扱いになり収入も上がります)

3. 失業(雇用)保険に関しても、税金は算入しません(=非課税)が社会保険料は算入します(つまり失業保険を受給している間は社会保険の扶養から外れる可能性があります。出産を機に退職した場合など注意が必要です)

ただし、組合により制度が異なる場合があるので、気になる方は直接、確認することをお勧めします。

「130万円の壁」と「106万円の壁」

先ほど130万円未満であれば扶養に入れるとしましたが、平成28年10月より制度が改正され、年収106万円以上の場合、自身が社会保険に加入することが一部で義務付けられました。

従業員数が501人以上の会社であること、継続した雇用が見込まれ、1週間の労働時間が20時間以上であること、または学生でないことなど細かい条件があります。詳しくは厚生労働省のページをご覧ください。

参考:厚生労働省(平成29年著者調べ)

「130万円の壁」がなくなったわけではありません

「106万円の壁」について注意点があります。まず、106万円という数字は厳密には「月額88,000円」という規定です。(88,000円×12ヵ月=1,056,000円≒106万円という流れ)

社会保険は税金と異なり1年分の収入でなく月毎の収入で計算しますので、月額88,000円がボーダーとなります。(ただし、所定賃金ですので、残業代、交通費、賞与は含みません。)

この制度は88,000円以上の収入を得た人が配偶者などの扶養から外されるという規定ではなく、自身の雇用先の社会保険に加入するという制度です。従って、個人事業主の方や、従業員500以下の会社に勤める人は適用されません。

ですから、「130万円の壁」になる人と、「106万円の壁」になる人が状況により存在することになります。ちなみに、平成29年4月からは500人以下の会社でも労使の合意があれば制度が適用されることになったそうです。(詳細は先のリンク先にて)

主婦は「何万円の壁」を目指すべきか

 

ここまで、扶養という制度について「税金(所得税と住民税)」と「社会保険」に分けて説明しました。多くのパート主婦たちが使う「扶養の範囲内で」という言葉には、実際に「103万円」「141万円」「106万円」「130万円」という複数の壁があります。

そこで、どの壁を意識することが最もメリットがあるのかについて考えたいと思います。従ってここからは扶養でも配偶者に限定して進めたいと思います。その際、夫が生計を立て、妻がパート収入を得ている設定とします。もしも妻が生計を立てて、夫がパートに出ている場合には読み替えて考えて下さい。

人によって意識すべき「壁」は異なる

先ほど計算例を示した通りですが、どの「壁」をボーダーに設定すれば一番有利なのかは、人それぞれなのです。所得税に関しては、夫の所得により税率が変わりますから、税率が高い人の方が配偶者控除を利用した場合のメリットが大きいということになります。ですが、平成30年分からは、所得900万円を超えると控除額が減りますし、1,000万円を超えると配偶者控除もなくなりますから、所得が高ければ有利とは断言できません。

社会保険に関しても、106万円がボーダーになる人と130万円がボーダーになる人がいましたが、個人事業主等で国民健康保健(及び国民年金)の方はまた状況が変わります。

ですから、ここからはそれぞれの「壁」ごとに、メリット、デメリットをまとめ、ケースごとに税金と保険料を試算してみます。その際、所得税は個人の状況で異なりますし、社会保険料は組合により異なりますし、住民税は地方により異なりますので飽くまで目安として考えて下さい。

103万円の壁

妻のパート収入を103万以下にした場合のメリットは、配偶者控除の適用があるので、夫の所得から満額控除(所得税38万円、住民税33万円)が受けられる点です。また、配偶者特別控除とは異なり夫の所得に上限がありませんから、夫が1,000万円以上の高所得者でも満額控除が受けられるという点で、特に夫が高所得の場合に有利です。(ただ所得制限がないのは平成29年分までです。平成30年分からは改正され、1,000万円超は適用されませんので注意が必要です。)

また、この場合には妻自身の所得税も非課税となりますが、住民税は課税されます。次項に金額をまとめます。

103万円の壁 税金と社会保険料

103万円の場合にかかる税金は以下のとおりです。(金額は目安)

(夫)所得税の節税額(年額) 38万円×所得税率 (10%の場合で38,000円)

(夫)住民税の節税額(年額) 33万円×10%=33,000円

(妻)所得税 0円

(妻)住民税(年額) 10,000円程度

(妻)社会保険料 0円

141万円の壁

妻のパート収入を141万円未満にした場合のメリットは、妻自身が高い収入を維持しつつ、夫は配偶者特別控除を受けられる点です。ただ、配偶者特別控除は控除額が38万円から3万円までと段階的なので、141万円の場合には3万円の控除しかありません。

さらに、妻が141万円まで稼いだ場合には社会保険の扶養から外れてしまいますから、妻自身が社会保険料を納めなくてはなりませんし、妻自身に所得税及び住民税が課税されます。そして、そもそも夫の所得が1,000万円超では配偶者特別控除は適用されません。

141万円の壁 税金と社会保険料

141万円の場合にかかる税金は以下のとおりです。(金額は目安)

(夫)所得税の節税額 3万円×所得税率 (10%の場合で3,000円)

(夫)住民税の節税額 3万円×10%=3,000円

(妻)所得税 19,000円

(妻)住民税 45,500円

(妻)社会保険料(月額)17,535円(健保5,876円+介護932円+年金10,727円)※1

※1 社会保険料は、協会けんぽの東京都における平成28年度分で計算しています。介護保険料は40歳以上の負担なので40歳未満の方はかかりません。17,535円を1年分に換算すると、210,420円になります。

参考:協会けんぽ(平成29年著者調べ)

106万円の壁、又は130万円の壁

今度は社会保険料の壁を基準とした場合のメリットです。先と重複しますが、106万円となるか130万円となるかは、個人の条件により変わります。(詳しくは先の社会保険料の項目をご覧ください)

この場合のメリットは、106万円でも130万円でも、社会保険料の扶養に入りつつも、配偶者特別控除を受けることができる点です。

前項で算出しましたが、社会保険料は年収141万円の場合でも21万円程度と、負担が大変重いのです。すると、実質120万円の収入となってしまいますから、社会保険料の扶養に入るというのはとても大きな節約となります。

実際に、私の周りのパート主婦を見ると、この106万円又は130万円を超えないように労働をコントロールしている人が多い印象を受けます。

ただし、夫の所得が1,000万円を超えると配偶者特別控除が使えない点、また妻自身に所得税及び住民税が課税される点はデメリットだと言えそうです。

106万円の壁 税金と社会保険料

106万円の場合にかかる税金は以下のとおりです。(金額は目安)

(夫)所得税の節税額 36万円×所得税率 (10%の場合で36,000円)

(夫)住民税の節税額 33万円×10%=33,000円

(妻)所得税 1,500円

(妻)住民税 10,500円

(妻)社会保険料 0円

130万円の壁 税金と社会保険料

130万円の場合にかかる税金は以下のとおりです。(金額は目安)

(夫)所得税の節税額 11万円×所得税率 (10%の場合で11,000円)

(夫)住民税の節税額 11万円×10%=11,000円

(妻)所得税 13,500円

(妻)住民税 34,500円

(妻)社会保険料 0円

150万円の壁(改正後)

先ほど説明したとおり103万円の壁は、平成30年度より実質150万円の壁に変更されます。この場合に、妻が150万円の収入を得ても、夫の所得から満額控除を受けることはできますが、妻自身が社会保険料、所得税、住民税を納全て納めなければなりません。また、夫の所得が1,000万円を超える場合には適用がありません。

150万円の壁 税金と社会保険料(平成30年度以降の場合)

150万円の場合にかかる税金は以下のとおりです。(金額は目安)

(夫)所得税の節税額 38万円×所得税率 (10%の場合で38,000円)

(夫)住民税の節税額 33万円×10%=33,000円

(妻)所得税 23,500円

(妻)住民税 54,500円

(妻)社会保険料(月額)17,535円(健保6,274円+介護996円+年金11,454円)※1

※1 社会保険料は、協会けんぽの東京都における平成28年度分で計算。年間で224,688円。

夫が国民健康保険及び国民年金の場合

夫が会社勤めをしている場合などで社会保険に加入していれば扶養制度がありますが、国民健康保険(国保)及び国民年金には扶養制度がありません。個人事業主や、個人事務所に勤めている職員の場合、夫が国保や国民年金であれば、妻は130万円や106万円をボーダーにする意味がなくなります。

夫が国保等であれば、妻の年収に係わらず妻自身で社会保険料を納める必要があります。国民健康保険は所得により金額が変わりますが、国民年金は全国一律です。月額は16,490円で、年に換算すると197,880円です。一人につきこの金額ですから、夫婦で納付する場合には年金だけで年間約40万円となります。健康保険についてはお住まいの市町村にて確認できます。

100万円の壁も

所得税、住民税、社会保険料の内、一番壁が低いのが住民税です。つまり、住民税が非課税であればすべて負担なしになります。

実は住民税は非課税となる金額が地方自治体により異なります。非課税ラインは100万円(1級地)、96万5千円(2級地)、93万円(3級地)の3通りがありますが、厚生労働省のホームページでお住まいの地域が何級地かを調べることができます。

住民税は「5,000+所得×10%(概算)」ですが、所得100万円までは一律5,000円のみです。ただし、住民税は地方税ですので、最終的には地方自治体に委ねられていますから、お住まいの市町村に問い合わせることが一番安心だと思います。

参考:総務省「住民税非課税基準(P4)」(平成29年著者調べ)

参考:厚生労働省「級地一覧」(平成29年著者調べ)

ベストな「壁」は人それぞれ

このように個人の状況により、どの壁が適しているのかは変わってきます。社会保険料の負担は大きいと言いましたが、妻自身が厚生年金を納めていれば、扶養に入っている妻よりも将来に受給する年金が大きいことも事実。つまり扶養から抜けることで得られるメリットもあるということです。

国民年金は扶養制度がないので、夫婦2人分を納付する必要がある上に、受給する金額は厚生年金に比べて低くなります。そういった状況を加味して、敢えて妻も雇用先の社会保険に加入し厚生年金を選ぶという手段もあります。

制度は複雑ですが、将来のことも考慮して働き方を検討することが大切だと思います。

 

まとめ

 

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いかがでしたでしょうか。

今回は扶養という制度についてまとめました。平成30年からの制度改正には、”就業調整をせずに働けるよう”にという趣旨があるそうです。

でも、実際には103万円の壁を意識せずとも、社会保険料の壁がありますから、今後150万円まで働く主婦が本当に増えるのかという点では、子持ちパート主婦の一人として疑問が残ります。

私自身、保育園と幼稚園を利用しながら働いた経験がありますが、仕事をしながらの家事育児は本当に大変です。私だけでなくパート主婦たちはみんな、家事や育児との両立に多大なストレスを抱えながら、家計を支えようと懸命に働いているのだと思います。その一方で、今回紹介したとおり、労働時間や給料に比例して、お金が手元に残るとは限らないのが現実。

だからこそ、「扶養の範囲内」で片付けず、自分がどのくらい働くことがベストなのかを考えてみませんか。女性の就労を推進する方向で制度は変わってきていますので、今後も改正の流れを意識しながら、家族にとって最適なライフプランを考えることが幸せにつながるのではないかと思います。

みなさんの貴重な労働が最大限に報われることを祈っています。