今回は日本を飛び出してご近所の「中国市場」について解説していきたいと思います。
中国市場には2つの市場に分けることができます。「中国本土の株式市場」と「香港株式市場」の2つです。以下で2つの市場の特徴や日本の株式市場との違いを詳しく見ていきましょう♪
目次
中国の株式市場の特徴
冒頭でもお伝えした通り、中国には大きく分けると2つの市場があります。1つ目が中国本土にある市場(上海と深セン)で、2つ目が香港にある市場です。
中国本土にある市場はもちろん、「中国政府」の動向に左右されますが、反対に香港にある市場は「アメリカの金利や株式相場」の動向に影響されます。
詳しくは後述しますが、香港市場での取引は「香港ドル」を介して行われます。この「香港ドル」というのは、アメリカドルとのペッグ制(アメリカドルと同等の価値を持つ、という制度)で成り立っているのでアメリカの経済に左右されやすいのです。
また、香港市場で取引されている株は、株価のボラリティが高いということで有名です。ボラリティというのは、変動幅、つまり株価の乱高下が激しいということです。
中国本土市場-上海市場と深セン市場
(Googleマップより引用)
中国の証券取引所として有名なのは、上海証券取引所で、これに勝るとも劣らず人気を博しているのが、深セン証券取引所です。
上海証券取引所は1990年12月に、深セン証券取引所は1991年7月に開設されました。
その後、周知のとおり中国は安価な労働力と多国籍企業の誘致を積極的に行ったため、目覚ましい経済発展をとげ、2010年のGDPは日本を超えアメリカに次ぐ世界第二位へと昇り詰めました。
そんな中国本土市場(上海・深センともに)では、「中国人投資家(国内投資家)用のA株市場」と「外国人投資家用(中国人も取引可)のB株市場」という2つの市場があります。
株式の種類も、市場の名前からも想像できる通り、A株・B株の2つです。
A株市場は人民元のみでの取り扱いですが、B株市場は上海証券取引所ではアメリカドル、深セン証券取引所では香港ドルでの取り扱いとなっています。
A株市場のほうが規模が大きいのですが、中にはA株・B株市場ともに上場する会社もあるようです。
取引時間はというと、上海・深センどちらも日本とほぼ同様で、平日の9時15分から15時まで(現地時間)です。
時価総額は2018年現在、上海証券取引所が約500兆円、深セン証券取引所が約400兆円です。
A株とB株の違いとは?
A株市場 | B株市場 |
株式が公開発行されている | 同左 |
資本金の総額が5千万元以上 | 発起人の出資資産が1,5億円以上 |
開業から3年以上たっている | 同左 |
①所有する株券の額面金額が1千元以上 ②株主数1千万人以上 ③発行株式が企業総株式の25%以上 | 公開株式が企業総株式の25%以上 |
社員持ち株数は公開発行株式の10%以下 | |
発起人持ち株比率が総発行株式数の35%以上 | 同左 |
3年以内に会社に重大な違反行為がなく、虚偽の記載がない | 同左 |
(経済産業省のサイトを参照)
2つの証券取引所の違いのまとめ
以下で特徴を表にまとめておきます。
項目 | 上海証券取引所 | 深セン証券取引所 |
開設 | 1990年12月 | 1991年7月 |
市場 | A株市場・B株市場 | A株市場・B株市場 |
株式の種類 | A株・B株 | A株・B株 |
取引通貨 | A株:人民元 B株:アメリカドル | A株:人民元 B株:香港ドル |
取引時間 | 9:15~15:00(現地時間) *日本時間では10:15~16:00 | 9:15~15:00(現地時間) *日本時間では10:15~16:00 |
上場企業数 | 約1500社 | 約2200社 |
時価総額 | 約400兆円 | 約200兆円 |
香港株式市場
ではここからは香港市場を見ていきましょう。香港株式市場は香港証券取引所というところで行われています。
先程の2つよりも香港証券取引所での売買額が多く、また上場している企業も多い、中国のメイン市場であり、アジアを代表する取引所です。
香港では1891年に初めての証券所が設立され、その後複数の証券所が統合され、今の香港証券取引所になりました。自ら上場したのは2000年6月のようです。
そんな香港証券取引所にも2つの市場があります。「メインボード(主板)」と「GEM(Growth Enterprise Marke、創業板)」の2つです。
株式はというと、香港株(Hong Kong)の頭文字をとったH株とレッドチップ、その他に大別することができます。
またどちらも取引時間は*9時から16時10分(現地時間)で、2017年の時点での上場企業数は2118社で時価総額は約34兆ドルです。
*日本時間では10時から17時10分
取り扱い通貨はメインボード、GEMともに香港ドルとなっています。
メインボード(主板)とGEM(創業板)の違いとは?
H株・レッドチップの違いは?
H株というのは香港株(Hong Kong Shares)のことなので、中国で登記(会社の所在地として登録している地域が中国本土)・展開をしている、いわば”生粋の中国企業”の株のことをいいます。
一方でレッドチップというのは、中国本土以外(香港や台湾、その他外国)で登記されたものをいいます。アメリカの優良株のことを「ブルーチップ」ということに発想を得、ブルーを中国のカラーである「赤」に変えたものがレッドチップと言われる所以だとか。
また香港株には上で述べたように”その他”に分類される株もあります。これには香港地域内で展開している企業の株(香港ローカルな株)や海外の企業で香港市場に上場しているものがあてはまります。
香港証券取引所のまとめ
項目 | 香港証券取引所 |
開設 | 1891年(現在の香港証券取引所になり、上場したのは2000年6月) |
市場 | メインボード(主板)・GEM(創業板) |
株式の種類 | H株・レッドチップ・その他 |
取引通貨 | 香港ドル |
取引時間 | 9:00~16:10(現地時間) *日本時間では10:00~17:10 |
上場企業数 | 2118社 |
時価総額 | 約34兆ドル |
中国市場の見通し
最近の中国株に関するニュースを見ていると、全体的に低迷状態にあったが、やや回復傾向にある”ということが言えそうです。
その原因の一つは「米中貿易摩擦問題」でしょう。この問題はアメリカのトランプ大統領が各国との貿易摩擦を懸念し、いまやアメリカの借金の大半を抱えている中国に貿易戦争を仕掛け始めたところに端を発しています。
アメリカは中国製品に高い関税をかける、輸入制限政策に取り掛かり始めました。
しかし、この状況が一転、最近(2018年11月)になって、米中会談が行われ互恵関係を気づくということで双方が一致しました。
おそらくこの会談の影響やアメリカの中間選挙でトランプ大統領率いる共和党が上院を制したことで、中国の株式市場、ひいては世界の株式市場が潤いました。
トランプ大統領が実質的に勝ったことで、経済が悪い方向に傾くことはないという予測でしょうが、世界中の株価は上昇しています。
しかし、中国政府が「民間企業への融資を優先する」と宣言したこともあってか、11月14日現在の中国市場の株価は、上昇傾向にあるものの様子見、といったところのようです。
中国市場の魅力とリスク
特に中国国内で注目すべきなのが、自動車産業・Eコマース・ハイテク産業です。
各国で自動車が売れづらくなっている現在では、中国は世界第一位の市場規模を誇っています。Eコマース分野では、アリババが台頭し巨大な消費市場を独占していますね。ハイテク産業分野に関しても、アメリカが恐れるようになっている次第です。
ここからはそんな中国株の魅力とリスクをご紹介します。
中国市場の魅力
中国のGDPの成長率は年々減速していますが、それでも日本のGDPの2倍以上あります。もしかしたら何年後かには3倍になるかもしれませんね。
その理由として考えられることは、中国には巨大消費市場があることでしょう。世界一位の人口を誇る中国ですからもちろん、消費市場も比ではありません。
また現在(2018年11月)は元高となっているため、元を保有している外国企業が潤うこと、またさらに元の価値が上がることを見込み投資を行う海外ファンドが増えることが予想されます。
そうなると、香港市場にも影響があり、香港市場でも会社の資産として元を保有している会社がほとんどですから(中国の・または中国人の会社のため)その会社の価値が上がっていきます。それに伴って香港市場の株価も上がることが予期されます。
その結果、中国市場の株価は上昇していくのではないか、ということが大きな魅力となっているようです。
魅力をまとめると以下のようになります。
- GDPの成長率が大きい
- 巨大消費市場を抱えている
- 元高
中国市場のリスク
上記のような魅力を持つ中国にも何点か懸念材料となる事象があります。例えば、政策の変更の懸念やEコマースの伸び率が少し落ちていること、トランプ大統領の貿易戦争などです。
周知のとおり、中国は共和党の一党独裁状態にあるので政策の変更が期せずして起こる場合があります。政策の変更によって中国における株式市場のルールが一変してしまう可能性も否定できません。
また11月11日は「独身の日」セールが行われたのですが、この時の取引高が上昇してはいるものの、これを伸び率に換算してみると前年度よりもやや下降していました。
とはいっても、楽天の年間売上とほぼ同じくらいの売り上げがこの日、1日で出たようですからまだそんなに気にすることもないのかもしれませんが。
米中貿易戦争については先ほど述べた通りですが、現在は協調方向に向かっているようですので、さほど問題はないかと思いますが、2018年7月には中国製品に25%の関税をかけると宣言しています。
他にも、中国の会社は粉飾決済や不正・衛生問題などを抱えているケースが多いとみられています。万が一、投資先の会社の汚点が発覚すれば、株価は一気に地を這うようになってしまいますね。
さらに、日本語での情報もすくないため、私たち日本人が中国株に手を出す場合、情報収集に苦労することも懸念材料と言えそうです。
- 政策の変更
- トランプ大統領の影響
- 粉飾や不正問題
- 日本語情報が少ない
中国株を買うには?
ここまで読んでくださった方の中には中国株を買ってみたいという方もいらっしゃることでしょう。
中国の株を私たち日本人が買うためには、日本の証券会社を経由する必要があります。
取引の仕方にはいくつか種類があるようですが、基本的には「委託取引」と呼ばれるもので、取引市場や銘柄、数量などを指定し、証券会社に買ってもらうという方法が用いられいます。
日本にはたくさんの証券会社があり、取引の仕方や手数料が異なっているので、実際に取引を行う場合は一番自分にあったものを探すようにしましょう!
最後に
いかがでしたでしょうか?今回は中国株式市場について見ていきました。以下でまとめをします!
- 中国市場は「上海市場・深セン市場・香港市場」がある
- 中国本土市場(上海・深セン)は中国政府の、香港市場はアメリカ経済の影響を受けやすい
- GDPやEコマースの取引量の成長率は減速しているが、それでも日本よりはるかに成長している
- 日本語情報が少ない中で、さらに中国政府の政策変更や米中貿易戦争などの影響下にあり、常にリスクが伴う
の以上です。しっかり押さえておきましょう♪