社会保険の加入条件、アルバイトへの適用や国民保健との違いなどを徹底解剖!

今でこそ個人の働き方は多様化しつつありますが、企業に勤め、社会生活を営む上で、必要不可欠なものの一つが社会保険です。

会社勤めをしていれば、自動的に社会保険に加入するような仕組みになっているので、自分から意識してその内容について調べることはあまり無いかもしれません。

しかし、これから転職をしたり独立したり、フリーで働いたりしようと計画を立てている方にとっては、社会保険について理解する必要が差し迫っていることでしょう。特に、社会保険・国民健康保険と国民年金の違いは把握しておきたいポイントでもあります。

また、2016年10月から短時間労働者の社会保険への加入条件も変更されたため、アルバイト・パートとして働いている方にとっても社会保険は他人事ではない話題です。

今回は、自分の暮らし方をより充実させる手助けとなるよう、非常に複雑でややこしい社会保険について一緒に勉強して行きましょう。

 

社会保険とは

公的な「社会保険」は一定の条件を満たした国民が加入しなければならない保険です。そこには「健康保険」「年金保険」「介護保険」「労災保険」「雇用保険」の5つの保険が含まれていますが、普段私たちが思い浮かべる社会保険とは「健康保険」「年金保険」「介護保険」の3つです。この社会保障とは一体どのようなものなのでしょうか。その目的や種類について基礎的なことをおさえて行きましょう。

社会保険の目的

私たちはなぜ厚生年金や健康保険料を支払っているのでしょうか。社会保険は、国民が傷病・死亡・老齢・失業などの窮地に陥った時に、保険給付を行うことで、本人やその家族の生活を保障することが目的です。

つまり、個人では対処しきれない状況に直面した時の社会的なセーフティネットの役割を果たしているのです。

社会保険の歴史

世界で最初に社会保険制度を取り入れたのは1880年代のドイツです。宰相ビスマルクにより、社会保険の各制度が創設されました。20世紀に入り、後進資本主義国が発展して、労働者の生活に負担がかかるようになると、ヨーロッパ各地の国々で社会保険制度が取り入れられるようになりました。

日本においては、大正11年に大企業を対象として公的健康保険制度が公布されましたが、本格的に社会保険制度が整備されるようになったのは、第二次世界大戦後のことです。実際に国民健康保険法・国民年金法は施行されたのは1961年のこととなっています。

社会保険、支払の仕組みは?

会社勤めの場合は、あなた個人が社会保険を支払うわけではありませんよね。毎月、あなた1人分の社会保障の額のうち半分は会社が負担し、もう半分はあなたの給料から引かれる仕組みとなっています。

つまり、会社・事業所の事業主と労働者が保険料を折半して支払う仕組みになっているのです。

下記動画でも社会保険についてをファイナンシャルプランナーの方がわかりやすくまとめてくれているので参考までに転載しておきます。

社会保険の種類

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勤務先やアルバイト先の会社は社会保険を完備していることが多いですが、この保険にはどのような種類の保険が含まれているのでしょうか。

先ほど少しお話ししたように、社会保険には「健康保険」「年金保険」「介護保険」「労災保険」「雇用保険」の5つの保険が含まれています。しかし、これは″広義の社会保障″でです。その一方で、私たちが普段理解するところの社会保障とは、″狭義の社会保障″なのです。ここでは私たちの身に差し迫るものである″狭義の社会保障″について重点的に扱って行きましょう。

社会保険とは3つの保険の総称

社会保険は3つの保険から成り立っているものです。その3つの保険とは次の通りです。

  1. 健康保険
  2. 厚生年金
  3. 介護保険

健康保険と厚生年金については知っていたけれど、介護保険については思いつかなかった方も多いかもしれません。介護保険についてはまた詳しく個別に確認しますが、健康保険とセットになっており、満40歳から収めるものなので、まだその時期に差し掛かっていない方にとっては気付きにくい項目かもしれません。

それでは、これら3つの保険が各々どのような役割を持っているのか、詳しく見て行きましょう。

健康保険

健康保険とは、病気やけがをした時にかかる費用を一部国や会社が負担する保険のことです。健康保険の運営は、全国健康保険協会あるいは健康保険組合が運営しており、日本国民であれば本来全員加入する義務があるものです。しかし、会社などの組織に属さず個人で仕事をしている人の場合は、健康保険に加入することはできません。そのために「国民健康保険」があるのです。

つまり、会社・事業所勤めの場合は「健康保険」、自営業など組織に属していない場合には「国民健康保険」に加入することが日本国民の義務となっているのです。

それでは実際どのような場合に健康保険の恩恵を受けることができるのでしょうか。その恩恵の最たるものが「健康保険証」。とても身近なものではありませんか?

健康保険証というものは「健康保険に入っているという証明」になるものです。健康保険に入り、健康保険証を提示することで、保険が適用される医療費については全額のうち3割のみの負担で済んでしまうというメリットがあります。ただし、健康保険証を持っていないからといって、診察が不可能になるわけではありません。ただ、診察費・医療費はその分高額になるということなのです。

その他、詳しい健康保険の給付内容などについては下記のリンク先をご参照ください。

全国健康保険協会「健康保険ガイド」(平成29年著者調べ)

厚生年金

年金についての話題は絶えないものですが、社会保険に加入している方に適用される厚生年金とはどのようなものなのでしょう。

そもそも厚生年金の目的は、被保険者が年齢のため働くことが不可能となった場合、病気・怪我で障害が残ったり死亡したりした場合に、被保険者や遺族の生活を守ることです。「障害年金」や「遺族年金」とも呼ばれますよね。そして今積み立てている年金は、その金額に応じて老後自分に返って来るのです。

厚生年金についての詳細は以下のリンク先をご覧ください。

日本年金機構「年金のことを調べる」(平成29年著者調べ)

この他、当サイト内のこちらの記事もおすすめです。

公的年金の種類、あなたはちゃんと知っていますか?

また、基礎年金番号などの情報についてもこちらをご覧ください。

基礎年金番号がわからない!そんな時の調べ方や照会方法とは?

介護保険

介護保険とは介護の必要な人が介護サービスを受けられるように、保険料金を支払う人同士で相互に支える仕組みです。このような仕組みにより、介護が必要な方が介護サービスを受けることでその家族の負担も減らすことが可能になるのです。

まだ40歳に満たない方には、あまり馴染の無いものが介護保険です。介護保険は前者の健康保険・厚生年金とは異なり、40歳から64歳までの健康保険の加入者が収めるものです。40歳になったその月から加入することが定められています。ただし、健康保険とセットになっているので、特別に手続きする必要はありません。

介護保険の加入者は「第1号被保険者」と「第2号被保険者」の2パターンに分けられます。「第1号被保険者」とは市区町村内に住所がある65歳以上の人を指し、「第2号被保険者」とは市区町村内に住所がある40歳以上65歳未満の医療保険加入者を示します。

介護保険は「満65歳に達したとき」から徴収されなくなりますが、満65歳以上でも健康保険に加入している場合には、健康保険料は継続して徴収されることになっています。また、65歳以降は介護保険の第一号保険者となり、自分の住まう市区町村から介護保険料が徴収されます。

介護保険の詳細についてはこちらのリンク先をご参照ください。

厚生労働省「介護保険とは」(平成29年著者調べ)

社会保険の加入条件は?

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社会保険と聞くと、何らかの会社・事業所に勤めていれば自動的に加入できるのだろうと思いがちではないですか? しかし、そうとは限らないのです。実は労働者に社会保険を付与するには、まず企業・事業所が加入条件を満たしていなければなりません。したがって、条件を満たしていない企業・事業所に勤める労働者には社会保険が与えられないということになるのです。

それでは、一体どのような企業・事業所が社会保険の条件を満たすことができるのでしょうか。詳しく探って行きましょう。

加入条件を満たす企業・事業所とは

社会保険への加入は「強制適用」と「任意適用」の2種類があります。これから事業所・企業を設立しようとお考えの方は一度しっかりとその条件を把握しましょう。

強制加入

ます初めに、強制的の加入しなければならないケースについて見てみましょう。強制加入となる場合は2つです。

・法人事業所

法人事業所の場合であれば、従業員の人数は関係なく、社会保険に加入することが義務付けられます。人数が関係ないということは、たとえ1人で運営していても加入する必要があるということです。

・個人事業所(常に5人以上の従業員が勤務する)

従業員が5人以上いる個人事業所は社会保険の適用事業所となります。ただし、個人事業所であっても社会保険が強制でなく任意の加入となる場合がある点に注意したいところです。

任意での加入となる個人事業所の業種形態は「第1次産業(農林水産業)」「法務専門サービス業」「サービス業(飲食店・美容業など)」「宗教業(教会・神社など)」です。

任意加入

任意加入となる場合は、つい先ほど個人事業所の項目でご紹介した通りです。

つまり、「第1次産業(農林水産業)」「法務専門サービス業」「サービス業(飲食店・美容業など)」「宗教業(教会・神社など)」の業種形態のどれかに当てはまる個人事業所であれば任意で社会保険に入ることが可能となります。

ただし、上記のような個人事業所が任意加入する際には、ある条件を満たさなければならないことが定められています。その条件とはどのようなものなのでしょうか。具体的には、次の2点を満たしていれば任意で加入することが可能です。

  1.  社会保険が適用される事業所になることについて、従業員の過半数が承諾した場合
  2. 事業主が加入を申請し、厚生労働大臣から認められた場合

この2つの条件が満たされたら、加入が完了するということです。加入が認められたら、必ず全従業員が社会保険に入る必要があるので、誰か1人だけ例外が出るということはありません。

社会保険加入形態のまとめ

以上で「強制加入」「任意加入」について確認しましたが、少しややこしい部分も多いので、ここで一旦分かりやすくまとめます。今までの説明をまとめると以下のようになります。

■株式会社・合同会社などの法人の場合

→従業員の数が何人であっても「強制適用」

■非適用業種の個人事業所の場合

→従業員の人数に関係なく「任意適用」

■非適用業種以外の個人事業所の場合

→従業員5人以上であれば「強制適用」

→従業員5人未満であれば「任意適用」

注意したいのは非適用業種以外の個人事業所ですね。「従業員が5人以上か5人未満か」で「強制適用」・「任意適用」の分かれ目になるということです。

被雇用者の加入条件

次に、一番注意したい個人の加入条件について確認しましょう。

ほとんどの場合、社会保険に加入している企業・事業所で働く個人にも社会保険が適用されています。あなたも会社にお勤めしているのであれば、自ずと加入することになっているのではないでしょうか。

しかし、これは決して当たり前のことでは無く、そうでない場合も少なからず見られます。企業・事業所が社会保険の加入条件を満たしていれば、その組織に属するあらゆる被雇用者が社会保険に加入できるというわけではないのです。

社会保険が個人に付与されるか否かは、「勤務時間」「勤務日数」において一定の条件を満たさなければなりません。ただ、個人の場合も企業・事業所の場合と同じように、条件を満たしている時点で、加入することが強制・義務付けられています。

まず、正社員であれば、問題なく社会保険に加入することができます。一方派遣社員・アルバイト・パートであれば「勤務時間」と「勤務日数」が正社員の4分の3以上であることが加入の条件となっています。これは3/4ルールと呼ばれるものです。(アルバイト・パートの社会保険については「アルバイトの社会保険は?」をご参照ください。)

つまり、あなたが社会保険に加入している企業・個人事業所に勤めている正社員であれば自ずと加入でき、パート・アルバイトであれば「勤務時間」・「勤務日数」の条件を満たした場合に加入できるということなのですね。

ただし2016年10月1日からは今までの加入条件に満たない短時間労働者であっても、特定の条件を満たすかぎりにおいて、社会保険に加入することができるようになりました。

こちらについても「アルバイトの社会保険は?」の項目で詳細をお伝えします。

加入手続き方法

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加入条件に続いて、次は実際的な説明に入ります。社会保険の加入手続きの方法についてです。加入手続きは法人・個人事業所の役割なので、これから社会保険に加入しようとお考えの方はしっかりと確認しましょう。

厚生年金・健康保険の手続き方法

厚生年金・健康保険の手続き方法はそれほど難しいものではありません。揃えなければならない書類の数も、ひどく多いというわけではないので、提出の際には不備がないようにしっかり確認しましょう。

新規加入手続きに必要な書類

新規加入手続きに必要な書類は、申請する側の法人・個人事業所によって異なります。つまり、「法人事業所の場合」「事業主が国、地方公共団体または法人である場合」「強制適用となる個人事業所の場合」の3つそれぞれに必要な書類が異なるということなのです。

ただ、これら全ての場合に共通して必要な書類は「新規適用届」です。

ここでは頭の中を整理しやすいよう、この3つの場合それぞれに必要な書類について個別に確認しますね。

法人事業所の場合

法人事業所の場合には、「新規適用届」の他に「法人(商業)登記簿謄本」が添付書類として必要です。こちらはコピーは不可能です。また提出する「法人(商業)登記簿謄本」は最新の情報が必要であるため、提出日から遡り90日以内に発行されたものを提出する必要があります。

事業主が国、地方公共団体または法人である場合

事業主が国、地方公共団体または法人である場合には「法人番号指定通知書等のコピー」を添付書類として「新規適用届」と共に提出します。ただし、「法人番号指定通知書等のコピー」を添付できない場合には、「国税庁法人番号公表サイト」で確認した法人情報を印刷し、代用として提出することが可能です。事業所名称・法人番号・所在地が明らかになっていることが必須です。

なお、事業所の所在地が登記上のものと異なる場合には、「賃貸借契約書のコピー」など事業所の所在地が明らかに記されているものを別途添付する必要があります。

強制適用となる個人事業所の場合

強制適用となる個人事業所とは、「従業員が5人以上である個人事業所」のことです。(ただし、個人事業所であっても業種によっては当てはまらないケースもあるので、詳しくはこの記事の「社会保険の加入条件は?」をご参照ください。)

この場合には、「新規適用届」と一緒に、「事業主の世帯全員の住民票」を添付する必要があります。「事業主の世帯全員の住民票」は個人番号が記されていないものを用意してください。また、コピーは不可能となっています。なお、この住民票は、最新の情報を確認するため、提出日から遡り90日以内に発行されたものを用意してください。

事業所の所在地が登記上と異なっているのであれば、「賃貸借契約書のコピー」などのように事業所の所在が証明できるものを別に添付する必要があります。

提出方法

書類を揃え、全ての項目を記入し終えたら、最後は提出です。提出方法は至極容易なもので、「電子申請」「郵送」「窓口持参」の3通りです。

このうち1つの方法で提出するのですが、提出先は「事業所が所在している地域を管轄する年金事務所」と定められています。ただし、実際には事業所の所在地が登記上の所在地と異なることもあるでしょう。そのような場合には登記上の所在地ではなく、事実上の事業所の所在地を管轄する年金事務所へ提出する必要があります。

厚生年金・健康保険に加入する際に必要な書類はWebからダウンロード可能です。ダウンロードはこちらから。

提出時期

提出時期は事実発生から5日以内となっています。

参考:日本年金機構「新規適用の手引き」(平成29年 著者調べ)

アルバイトの社会保険は?

 

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アルバイト・パートでも一定の条件を満たせば社会保険に加入することができます。Web上でアルバイトの募集を見ると、待遇の欄に「社会保険完備」という表示を見かけませんか。

アルバイトが社会保険に入れるということは、40歳未満であれば「健康保険」と「厚生年金」に加入できるということですね。(満40歳からかかる「介護保険」については「社会保険の種類」をご覧ください。)

しかし、アルバイト・パートであっても加入できる条件が決まっているし、加入しても損をしてしまう場合があります。これらについて具体的に確認して行きましょう。

扶養に入っていない場合、社会保険はアルバイト・パートに有利

アルバイトをしている方で国民健康保険・国民年金に入っている場合もあるでしょう。しかし、アルバイト先が社会保険を完備しているのであれば、そちらを利用することをおすすめします。

というのも、国民健康保険では全額を自分で負担する必要がありますが、社会保険に加入し、健康保険の待遇を受ければ、保険料がアルバイト先との折半となり、あなたの負担額が軽くなるからです。

また、社会保険に加入すると国民年金は厚生年金に切り替わります。こちらは、国民年金よりも料金は高くなりますが、厚生年金の支払いもアルバイト先と折半になるので、結局自分で支払う額は実質的に国民年金と変わりません。それどころか、老齢年金・生涯年金・遺族年金の受給額が増えて、保障が手厚くなるのです。

アルバイト・パートの場合の加入条件

それでは、アルバイトやパートで働く方が社会保険に加入するにはどのような条件を満たせば良いのでしょうか。

「3/4ルール」という言葉をご存知でしょうか。パート・アルバイトが社会保険に加入するためには、勤務時間・勤務日数が共に正社員の4分の3以上である必要があります。法律によりこの条件を満たしている場合には、必然的に社会保険に加入しなければならないと定められているのです。

したがって、加入の条件を満たしていても正社員以外は加入できないということは起こり得ないことです。起ったとしたらそれは法律違反と見なされます。ただし、アルバイト先が個人事業所で社会保険に加入していない場合には、もちろんあなたも加入することはできません。

社会保険は事業主と労働者の折半となるため、加入はアルバイト先の会社にとっては負担になるものです。したがってアルバイト・パートに社会保険を加入させことを拒む会社も中には存在します。仮に、社会保険の完備されているはずの勤務先で、あなたが条件を満たしているにもかかわらず加入を断られたら、それは勤務先が法律違反を起こしていることになります。この場合は、労働基準監督署に相談し、加入させてもらうように取り計らってもらいましょう。

扶養家族は加入すると損?

アルバイト・パートで社会保険に入る場合は注意が必要です。

あなたが家族の扶養に入っていなければ加入した方が得です。しかし、配偶者や親の扶養に入っている場合、社会保険に加入してしまうと本来払わなくてもよいものを払わなければならず、損をしてしまう場合があります。アルバイト・パートとして社会保険に入った場合、損をしてしまうのは次のような立場に置かれている場合です。

  1.  夫・妻がサラリーマンである専業主婦・主夫
  2. 親の扶養に入っている大学生、短大生、専門学校生

ここで問題となってくるのが「扶養」という概念です。「扶養」に入っているか、そうでないかで社会保険に入る意味が違ってくるためです。それではこの「扶養」の概念・条件とは一体どのようなものなのでしょうか。

扶養の条件、「130万の壁」

配偶者または親の扶養に入るか入らないかは「130万の壁」で決まります。扶養に入っている状態とは「年収が130万円以下である」状態のことを指すのです。

つまり、配偶者あるいは親がサラリーマンで社会保険に加入している場合、自分のアルバイト・パート年収が130万円未満であれば一部の社会保険料の支払いを負担せずに済むことになります。

具体的に言えば、社会保険に加入しているサラリーマンの妻・夫は年収130万円以下であれば、国民健康保険の保険料はなし、国民年金の保険料も負担せずに済むことになります。また、父母がサラリーマンとして家計を支えている場合、学生である子供は健康保険料の負担がゼロとなるのです。ただし2子供の場合は20歳から国民年金の支払いが必須となります。

しかし、アルバイト先の正社員の勤務時間・勤務日数の4分の3以上働いていても、年収130万円以下で扶養に入っているということは十分あり得ることです。このような場合には、アルバイト・パート先の社会保険に入らなければならず、本来払わずに済む保険料を納めなければならなくなるのです。

したがって、自分が扶養に入っている場合には、社会保険に入ることで損をしてしまわないか十分検討する必要があるのです。 ただ、「130万の壁」を超えたら、自ずと扶養からは外れてしまうので、その場合にはアルバイト・パート先の会社・個人事業所の社会保険に入るべきでしょう。

扶養制度について、より詳しい情報は以下のページをご覧ください。

パート主婦必見!扶養制度をわかりやすく解説

2016年からは社会保険の適用拡大!

今まで確認してきた通り、正社員ではなくアルバイトやパートとして働く場合は、勤務時間・勤務日数ともに正社員の4分の3以上でなければならないと決められていました。

しかし、このルールは2016年10月1日から変更されています。

従業員が500人以上の会社・個人事業所においては、短時間労働者の社会保険加入のルールが緩和されたのです。それでは、具体的にどのような条件を満たしていれば、短時間労働者が社会保険に加入できるようになったのでしょうか。

加入条件は以下の5つです。

  1. 1週間の労働時間が20時間以上
  2. 賃金月額が月8.8万円(年収106万円以上)
  3. 1年以上の使用されることが見込まれる
  4. 学生ではない
  5. 勤務先が500人を超える従業員を抱える企業

これら5つの条件を満たしていれば、アルバイト・パートなどの短時間労働者であっても加入できるということなのです。

 厚生労働省(平成29年著者調べ)

106万の壁とどう向き合う?

ただし、上記5つの条件に当てはまりそうな主婦・主夫の方は要注意です。今までは扶養適用のボーダーラインが130万でしたが(130万の壁)、今後は106万が扶養に入るか入らないかのボーダー(106万の壁)となるのです。

したがって、年収106万以上か106万未満かの選択に悩まされることになります。

今まで130万の壁を意識して働いていた方は110万や120万という年収を保ち続けていると、2016年に取り決められた新たな社会保険加入のために、手取りが確実に減少してしまいます。したがって、損をしないようにするためには、年収110~120万の今よりももっと多く働くか、あるいは年収103万以内に抑えるか選択する必要が出てきます。(103万以上からは所得税を負担しなければならないので、106万円未満よりも103万円以内を目指した方が得です。)

勤務時間をあまり増やせないという方は103万円以内に抑えた方がお得になります。しかし、106万以上稼ぐことができ、手取りを増やしたい方であれば、106万を優に上回る金額を稼ぐことが、長い目で見ればお得です。というのも、扶養に入っている場合よりも、自分で厚生年金を払う場合の方が受け取れる年金の額は増えるためです。

老後自分にとってどちらの方が特か、そして今自分が働ける時間の両方を考えて決断することが大切です。

 日本年金機構(平成29年著者調べ)

国民保険との違い

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それでは最後に国民保険と社会保険がどのように異なるのか、その相違点についてポイントをおさえて行きましょう。

国民保険と社会保険の違い

国民保険と社会保険は4つの面で差が顕著に現れます。その4つの面とは「加入条件」「運営者」「扶養」「保険料」です。これら一つ一つがどのように異なるのか個別に見て行きましょう。

 

「加入条件」

-国民保険:個人事業主・無職の方をはじめとした他の保険制度に属さない人が加入

-社会保険:会社勤めのサラリーマン、正社員の3/4以上労働する人が加入

 

「運営者」

-国民健康保険:市区町村役場に設置された国民健康保険の窓口

-社会保険:各社会保険組合

 

「扶養」

-国民健康保険:扶養というもの自体無い。世帯内の加入者の人数により保険料が変動する

-条件を満たした親族を扶養できる。扶養の人数に関係なく保険料は変わらない。ただし、年金が扶養の範囲に入るのは配偶者のみ。子供の年金は扶養に入らない。

 

「保険料」

-国民健康保険:世帯単位で、加入者の数・収入・年齢を加味して算出

-社会保険:個人単位で、年齢・収入により算出

以上から、注目すべき違いがあることに気付きませんか?

もっとも気になるのは「扶養」の違いです。国民健康保険にはそもそも「扶養」の概念が無いので、世帯の人数が多いほど保険料は高くなることが注意点ですね。一概に社会保険の方がお得になるとは限りませんが、家族の人数が多い家庭においては、社会保険の方がお得であることが明らかです。

給付の違い

健康保険と国民健康保険の給付の違いはどのようなものでしょうか。

給付については、国民健康保険よりも健康保険の方がずっとお得です。健康保険には傷病手当金、出産手当金が支給されるからです。

傷病手当金とは、治療のため仕事を休職した場合に休職4日目から最大1年半の間に、給料の6割が支払われる制度です。国民健康保険に加入している方は、傷病手当金は支給されないので、病気などで休職した場合、給料の補償がないということになります。

また、出産手当金とは、出産で休職した場合に出産予定日の6週間前から出産日の8週間後まで、給料の6割が支給される手当です。こちらも国民健康保険に加入している場合には、全く補償がありません。

このような給付の違いは、通常の日常生活を営んでいる時には目立ちませんが、いざとなった時に大きな差となって現れるのです。

保険料の違い

社会保険に加入している場合は、現在受け取っている給与を基に保険料が計算され、所得に応じて支払額も上昇します。東京都の場合には最低保険料は5,782円で上限が120,637円です。高いと思われたかもしれませんが、この保険料は勤め先の会社と折半するので、実際の負担額は減ります。

一方で、国民健康保険の場合は前年の所得に基付いて保険料が定められます。また、国民健康保険には先ほど申し上げたように扶養の概念が無いため、配偶者・子供に保険料を適用するためには、家族全員分の保険料を納める必要があります。

国民健康保険の場合には、保険料は均等割・所得割の2種類で構成されており、保険料負担が非常に大きくなります。

健康保険と国民健康保険のどちらがお得かというと、場合によって異なるため、どちらかが絶対的にお得になることはありません。しかし、家族の人数が多いほど負担額の増える国民健康保険の方が保険料の負担が大きいことは明らかです。特に、これから会社を辞めて独立起業しようと計画している方は、起業後に収入が安定しないうちに国民健康保険の支払を行う場合に、大きな負担となることを心に留めておきましょう。

最後に

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社会保険についての規定は非常に細かく、理解しにくいものです。しかし、改めてその内容を整理し、他の保険と比較したことで、その特徴がより把握しやすくなるのではないでしょうか。今現在、社会保険に加入している方は自分の現状把握として、独立・起業を考えている方は今後の保健対策の材料として、アルバイト・パートで働いている方は扶養の範囲内・範囲外のどちらで働くか決める材料として、今回この記事でご紹介した社会保険の知識を駆使してみてください。そして皆さんの暮らしやすい環境を作ってくださいね。