お葬式は突然やってきます。年功序列の衰弱死だったとしても、いつ亡くなっても不思議ではない病態の方だったとしても、気持ちの整理はできません。
今回は、実際に私の知り合いのAさんの実体験をもとに、一体お葬式は、何にいくらかかるものなのかをご紹介いたします。
目次
突然亡くなったAさんのお姑
離れて暮らしているAさんのお姑さんは、肺炎で入院をしたという知らせを受けて間もなく、突然亡くなってしまったそうです。Aさんの夫はサラリーマンをしており、病院から亡くなった連絡を受けるとすぐに、慌ただしく会社に連絡。
しかしAさん夫妻は、いつまでも悲しみに浸っている余裕はなく、悲しみを押さえ込んで、遺族にはしなければならないことがありました。そうです、それがお葬式です。
できることなら、すべて葬儀屋に任せて遺族はお姑さんとの思い出などにひたっていたい、そんな気持ちになってしまいますよね。
お葬式にかかる費用
Aさんのお姑さんは地元の冠婚葬祭業者の会員だったそうです。何年か前のお正月に、「わたしが死んだときはここでお葬式をしてもらえばいいから」とお姑さんに言われていたことを思い出し、Aさんは急いで、その葬儀屋に連絡したそうです。すると、すぐに葬儀屋が指示を出してくれ、その的確な指示とFAXで送られてきた『今後の予定表』にAさんは本当に安心したとのこと。
何をどうすればいいのか、さっぱりわからないAさん夫妻のために、これから何が執り行われるのかを明確に導いてくれる葬儀屋。二人は葬儀屋に大きな信頼を寄せていました。
お通夜にかかる費用
Aさんの親戚の叔母は、まず銀行が凍結するからお金を引き出したほうがいいと言いました。死亡届がでると、姑名義の銀行預金は手続きを踏まないと引き出せなくなるそうです。
Aさんは誰にも口にしませんでしたが、心の中でこんな時に預金の話なんて聞きたくないと思ったそうですが、ATMで通帳から少しまとまったお金を引き出したそうです。
Aさんのお姑さんは病院で湯灌された後、柩に納められて葬儀屋のお通夜の会場に移動。お通夜では、Aさんの夫の同僚や役職の人、お姑さんのお付き合いのあった人、親族などたくさんの人が来てくれ、声をかけられるたびに、涙ぐんだり思い出話で笑ったり、とてもいいお通夜だったと後になっても思っているそうです。
その日現金で支払ったのは、お寺さんに対して枕経のお布施1万円とお車料5千円、通夜経のお布施3万円とお車料5千円。
告別式の費用
Aさんは度々、葬儀屋の係の女性に呼ばれ、いくつか告別式に必要な質問を受けたそうです。
「祭壇をこの中からお選びください」
「祭壇の花ですが、どれになさいますか」
「お供え物はいかがなさいますか」
「お食事はどれになさいますか」
その女性は、一つ一つ心底、Aさんの身になって声をかけてくれたそうで、Aさんはその度に、夫を目で探し「すみません、相談してきます」と話をもっていったそうです。けれど、Aさんの夫もよくわからないので「真ん中くらいでいいだろうか」とため息混じりに答えるばかり。
その他、告別式当日のお寺さんに差し上げるお金も、葬儀屋の係の女性が教えてくれたそうです。
- 導師様 お布施 10万円から15万円 お車料+御膳料 1万円
- 副導師様 お布施 5万円から7万円 お車料+御膳料 1万円
- 役僧様 お布施 3万円から5万円 お車料+御膳料 1万円
- 初七日 お布施 3万円 お車料 5千円
まだAさん夫婦は若かったので、10万円から15万円の間で考えるとき、潔く15万円を出すことは年長者に失礼だと思ったそうです。けれども、10万円を出すのも最低料金のようで肩身が狭いような気がして、真ん中以上の13万円と決めたとのこと。一時が万事、この調子で真ん中より少し上と、決めていました。
葬儀屋に取り仕切ってもらったとは言え、Aさん夫妻が葬式全体をとりまとめていたと自覚していました。葬儀屋の係の女性がとても丁寧で親切な人なので、本当に満足し感謝していました。
お金の流れ
葬儀屋の請求書
一連の儀式がすべて終わってから、葬儀屋から『ご請求書』が届けられ、その金額はざっと130万円程度だったそうです。その中には、通夜振る舞いの盛り合わせ寿司やオードブル、フルーツ、酒、ジュース、おつまみ、菓子なども、すべて含まれており、葬儀屋に依頼していなければ、忙しさにかまけて手を抜いてしまう性質のものばかりだったそうです。Aさんはお葬式に来ていただいた人に失礼がないようにできて、今更ながらに良かったと思ったとのこと。
お寺さん以外に現金で支払ったもの
その他現金で支払ったものは、結構あったようです。
- 火葬料
- 葬儀当日親族全員の朝食
- 帳簿のお礼
- 挨拶の菓子代
- 供物代
- 戸籍謄本等諸費用
- 墓石名入れ
- タクシー代
非日常的な場面なので、お金は無意識に飛ぶようになくなってしまったようですが、現役サラリーマンのAさんの夫のおかげで、たくさんの弔問客が訪れ、香典はかなりの額になったようです。四十九日に香典返しとして、半返しの品物をお送りしたあと、Aさんは一連のお葬式の決算を行いました。
お葬式の決算
お寺さん現金35万円 + 葬儀屋130万円 + その他現金 = 300万円
けれども幸いなことに、Aさんのお姑さんは冠婚葬祭業者の会員でしたから、そこから会員割引などで25万円差しひかれて、結局275万円で済みました。香典は180万円いただき、半返しの香典返しをすると90万円残りました。差し引き185万円が必要なお金でした。
まとめ
四十九日の法要が済んだかと思うとすぐに一周忌の法要、そして三回忌法要と、Aさん夫妻は数年間、法要に追われるような気分で生活していました。ようやく三回忌法要も無事に済み、落ち着いてお葬式を思い出せるようになりました。
Aさんのお姑さんは生前、冗談のようにこう言っていたそうです。
「どんなに貧乏しても、自分の葬式代に100万円くらいは残しておかないとね」
お姑さんはとても倹約家な人ですよね。きっと、お姑さんならば的確な指示を出して予算以内で済ませたに違いありません。それにひきかえ、Aさんはその倍近く予算を上回ってしまいました。その原因は、生まれてはじめての経験だったので見当もつかなかったということです。ですが、それだけではなく、何度も経験したことのある親族の人に相談もせず、葬儀屋にすべて任せてしまいました。ひとつひとつの問題にこまやかに対応することがもし出来ていたなら、葬儀屋任せでなくても心のこもったお葬式が出来たかもしれないと、Aさんは少し後悔していました。
待ったなしの選択をせまられるお葬式、いつそんな事態に遭遇しても慌てずに取り仕切れる賢い女性になりたいと思うAさんでした。