タンス預金の相続時の注意点やメリット

預金と言えば銀行などの金融機関が真っ先に思い浮かびます。しかし、預金の方法はそれだけでなく、自分でまとまったお金を管理する方法もあります。その一つとして挙げられるのがタンス預金です。

年々、その総額が増加しているとの結果が出ているタンス預金は、マイナンバーが導入された現在において、政府に預金総額を把握されないというメリットや、時間や場所を気にせずいつでもお金を引き出せるというメリットがあります。

でも、なぜ日本でタンス預金が行なわれるようになったのか、タンス預金にはどのようなリスクがあるのか、そしてタンス預金を行なっている場合にはどのようなことに注意すれば良いのか、疑問に思うことがたくさんあるでしょう。そこで、今回はそれらの疑問に答えるべく、タンス預金について徹底的にご紹介します。

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タンス預金とは

タンス預金という言葉について聞き慣れない方も多いかもしれません。しかし、言葉は知らなくても、知らず知らずのうちに自分も行っていることが多いものです。預金の1つの方法としてのタンス預金とは一体どのようなものなのか、この項目ではその基本について確認してみましょう。

タンス預金とは

タンス預金という言葉を聞いて思い浮かべるのは、タンスの引き出しの奥にお金を仕舞い込むことでしょう。皆さんが想像する通り、タンス預金とは金融機関にお金を預けることなく自分の家の金庫などにお金をしまい込むことを意味しています。つまり、自宅に保管してあるお金のことを指しているのですね。

日本中の家に仕舞い込まれているタンス預金を正確に数えることは困難ですが、目下のところ大体30兆円から80兆円ほどにのぼると考えられています。最近はマイナンバー制度が導入され、預金口座にも番号が振られて国にすべての預金を把握されてしまう可能性も十分考えられるので、今後タンス預金を行う人が増えてゆくと考えられています。

タンス預金の隠し場所はどこ?

タンス預金は一般的にどのような場所に隠してあるのでしょうか。たいてい思いつかないような場所に隠しておくのが得策ですが、多くの場合、机の引き出し・台所・床下倉庫・屋根裏部屋・物置・タンス・冷蔵庫・ベッドの下・本棚・仏壇・庭の倉庫・押入れに隠しておくことが多いものです。

ただ、このような場所にお金を隠しておくと、盗難に遭いやすいのも事実です。したがって、空き巣が思いも付かないような場所にしまっておく必要があります。

たとえば、カバーをかけていないティッシュ箱の中やカーペットの下、あるいは大きめなペンケースの中など、身近で利用するものの中にしのばせておく方が見つかりにくい傾向があるようです。ただし、ティッシュケースなどは捨ててしまったり、しまった場所を忘れてしまったりする恐れもあるので、注意が必要です。

タンス預金を行うようになった背景

タンス預金は90年代の総額に比べると、年々増えていることが分かります。第一生命経済研究所によると、1995年末の時点で3兆円だったタンス預金は、2006年初めには27兆円7千億円に達し、2017年2月の時点では42.3兆円にもなるとのデータが出ていることが報告されています。

2016年に至るまではタンス預金は減少する傾向にありましたが、2016年になってマイナス金利が導入されたことで銀行の預金の金利が下がってしまったため、再びタンス預金を行うケースが増えているようです。

このようなデータから見ても分かるように、年々着実にタンス預金総額が増えていることが分かります。実は、このような現象には確固とした背景があるのです。

日本において、タンス預金が行なわれるようになった一番の引き金は、1990年代後半のバブル崩壊です。バブル崩壊により、兵庫銀行をはじめとして、北海道拓殖銀行、日本長期信用銀行など多くの大手金融機関が破綻してしまいました。

自分の銀行も破綻してしまうかもしれないと恐れた人々は、銀行に預けて損害を被るよりも、手元に置いた方がよっぽど安心できると判断し、タンス預金を行うようになったのです。さらに、バブル崩壊後も経済低迷による長期間のデフレや超低金利が続き、ATMの利用料が有料になったことも引き金となりました。

また、一般的にタンス預金が多い世代は高齢者であるということも分かっています。なぜ高齢者の方の多くがタンス預金を行なっているのか、その原因は第二次世界大戦が終息した後の1946年2月の預金封鎖に求められると考えられます。

この預金封鎖はインフレ防止の緊急措置として行なわれたものです。戦後の日本は食料や物資が乏しく、痛烈なインフレに直面していました。そこで、国はインフレを抑制することで自国が抱える国債を整理しようとしたのですが、軍事出資の影響により財政状況が極限まで落ち込んでしまったのです。このような事態を脱し、国の財政を根本的に立て直すために強行的に預金封鎖が行なわれたのです。

高齢者の方にタンス預金を何とかして使ってもらえるよう、政府は「教育資金の一括贈与」という制度において1,500万円を贈与しても無税にしようという法律を設定したり、「結婚・子育ての一括贈与」といった制度を設けて1,000万円の贈与を無税にする法律を整えたりする試みを行っています。

このような背景があり、日本においてタンス預金が増加しているのですね。実は、タンス預金は日本で見られる特有の現象ではなく、ベトナムやロシアなどの海外においても多くの人が行なっているようです。国の経済状況が芳しくなく、金融機関に頼り切ることはできないと感じた時にも国民がタンス預金を行う傾向にあるようです。

参考元:第一生命研究所(2017年著者調べ)

へそくりと同じ?

タンス預金はへそくりと同じなのではないか、と思われる方も多いでしょう。しかし端的に言ってしまうとへそくりとタンス預金は別物です。一番大きな違いは、「家族に対して秘密にしているか否か」という点です。

タンス預金の場合は、家族に秘密にして自宅にお金を貯め込んでいるわけではありません。家族に知らせていない場合もありますが、決して秘密にしているわけではないのです。

その一方で、へそくりの場合は夫や妻に対してお金を貯めていることを秘密にしています。自分以外の人には知らせないということですね。

このように、「家族に対して秘密にしているか否か」という点以外にも、大きな違いがあります。それは「お金をしまう場所」です。タンス預金というのは、名前が示唆する通り銀行にお金を預けるのではなく、自宅に保管する預金方法です。その一方でへそくりにおいては、自宅に保管するだけでなく、銀行に預ける場合もあります。つまり、タンス預金では銀行を使用しませんが、へそくりでは銀行に預金するケースもあるということなのですね。

ご自身がタンス預金だと思って行っていたものは、実はへそくりと呼ばれるものだったかもしれません。へそくりについてはfincleの他の記事でも紹介されているので、より詳しく知りたい方は以下の記事をご参照くださいね。

関連記事:1人あたりのへそくり平均額と上手な貯め方や隠し場所とは?

タンス預金のメリット

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自宅でお金を保管する方法であるタンス預金には、どのようなメリットがあるのでしょう。すでにタンス預金をされている方は、それなりの目的を持って行っていることが多いでしょう。この項目では、タンス預金のメリットについて1つずつ確認してみましょう。

預金の保有額を政府に把握されにくい

マイナンバー制度が導入されたことにより、預金口座の残高を国が把握できるようになる可能性も十分あるでしょう。しかし、タンス預金の分までは把握することができないので、国に預金額を知られたくない場合には、非常に有効な預金方法と言えるでしょう。

緊急事態の際に役立つ

万が一、日本中の金融機関が動かなくなってしまった場合には、手元にまとまったお金があれば困ることはありません。また、銀行自体が倒産してしまった時にも、タンス預金として持っている分のお金は銀行の倒産による影響を全く受けません。

また、仮に日本が財政破綻してしまった時にも、自宅で保管している預金に課税されることはありません。今の状況ではほぼ起りえないことではありますが、もしも日本が財政破綻してしまった場合には、最悪預金を30%から40%カットされることになります。このこれほど多くの預金が消えてしまうのは、いたたまれません。

実際に、キプロスという国では2013年3月16日に預金が封鎖されてしまい、10万€以上の預金額には9.9%以上、それ以外の預金額に対しては6.75%課税されたといいます。預金額が多いほど課税で多くのお金を失ってしまうことを考えると、自分で預金をキープする方が安心できます。

口座凍結の心配は不要

死亡届を提出すると、銀行口座は凍結されてしまうため、お金を引き出すことができなくなってしまいます。しかし、タンス預金であれば、自宅にて自由に引き出すことができるので、死亡届を提出した後もお金を使うことができます。

ATM手数料がかからない

当然のことではありますが、自分自身で管理しているお金であるため、引き出す際にも当然手数料はかかりません。銀行ATMの場合には手数料が掛かってしまいますし、コンビニなどからお金を引き出す際にも手数料がかかってしまいます。手数料は僅かなものかもしれませんが、積もり積もると大きな額になります。しかし、タンス預金であれば、四六時中無料でお金を引き出すことができますし、わざわざ外に出向くこともないので、手間がかからないのです。

タンス預金のデメリット

メリットでも確認したように、タンス預金は万が一の場合に非常に心強い預金となります。しかし、自宅で大きな額のお金を保管するということには、それなりのリスクがつきまといます。

したがって、タンス預金の危険性やデメリットについても十分に把握した上で管理を行う必要があります。安全に管理を行うためにも、この項目でタンス預金のデメリットについて確認していきましょう。

火災や火事の被害を受ける

自宅にお金をしまい込んでいると、火災が起きた時に焼失してしまうおそれがあります。耐火金庫など、よほど火に耐えることのできるものでなければ、火事の被害を免れることはできません。

また、たとえ耐火金庫にお金を貯蓄していても、洪水や津波の被害に遭い、金庫ごと流されてしまう可能性も考えられます。自宅だとお金の保管に限界があるため、このような災害時に大きな被害を被る恐れがあるのです。

盗難の恐れがある

タンス預金で考えられる被害として、盗難を挙げることができます。銀行であればしっかりとセキュリティ管理の出来ている環境の下、お金を管理してもらうことができますが、自宅の場合は銀行よりも盗難に遭いやすい環境です。

小さな金庫の場合には金庫ごと盗まれてしまうでしょう。また、大きく重い金庫であれば、金庫ごと盗まれてしまう可能性は非常に低いですが、鍵を開けられてしまう可能性があるので、安全性は決して保証できません。

しまった場所を忘れてしまう

頻繁にタンス預金を確認しているのであれば、忘れてしまうことも少ないかもしれません。しかし、一度まとまったお金を仕舞い込んで、それ以降しまったままにしていると場所を忘れてしまう恐れがあります。もし、いくら探しても見つからなかった場合にはタンス預金は0円として数えられることになってしまいます。くれぐれも場所を忘れないよう、管理を徹底しましょう。

相続税の申告に含めなかったことが判明した場合、罰金を受ける

タンス預金は相続税の課税対象となりますが、自宅でまとまったお金を保管していることを税務署に知らせなければ、タンス預金分の相続税を回避することができます。

しかし、税務署の調査によってタンス預金を申告していなかったことが発覚した場合には罰則の在勤がかかり、適正税額を優に超えた税金を支払う必要が生じてしまいます。

税務署は口座の出金を確認しているので、100万円以上の出金があるケースで、その使用目的が不明である場合にはタンス預金の可能性があると判断します。ただし、銀行口座から少しずつお金を引き出してタンス預金に回せば、税務署がそれを把握する可能性は低くなります。

ただし、タンス預金は相続財産ですので、あくまでも申告することをおすすめします。

預金分を使ってしまう

タンス預金を行うと、常に手元にお金がある状態なので、いつでもお金を引き出すことができます。したがって、気軽にお金を使ってしまう可能性が高くなるため、気づいたら何十万円も減っているなどということも起こりかねません。したがって、お金を無駄遣いしてしまう方には向いていない預金方法だと言えます。

誤って廃棄してしまう可能性がある

タンス預金を行う際、意外な場所にお金をしまうことが多いものです。花瓶の中や段ボール箱の中、リュックサックの中など、他の人が気付かないような場所に隠している方も多いでしょう。

タンス預金の隠し場所が本人以外の家族にも知れている場合には、捨てられてしまう心配はありませんが、タンス預金のことを知らない場合は、お金が隠されているとは気づかずに片づけられてしまうこともあります。

実際に、ゴミとして出されたものの中に大金が見つかったというニュースが流れることもあるでしょう。それは恐らく、タンス預金として自宅で保管していたお金なのかもしれません。

インフレのリスクを伴う

インフレとは物価が上がることでお金の価値が下がることです。インフレに直面した時、銀行預金とタンス預金では大きな差が生じます。銀行預金であれば、インフレとなってしまっても、金利が上昇することで下落してしまった分のお金の価値を補うことができます。

しかし、タンス預金は現金をそのまま自分の家にしまっているので、銀行のように金利で補うわけにはいきません。インフレ以外にも先に挙げたようにいくつかリスクがあるので、安心してお金を管理したい方は、やはりしっかりと銀行などに預けるのが一番です。

注意! タンス預金で相続税を脱税することはできない!

「タンス預金のデメリット」の項目でも少し触れましたが、タンス預金があることを税務署に黙っていたとしても、隠し持っていることがばれてしまった場合には高い罰金を支払うことになってしまいます。

この項目では税務署がどのようにタンス預金を把握するのか、どのタイミングで調査に来るのか、調査の質問でどのようなことを聞かれるのかという点について確認して行きましょう。

税務署によるタンス預金の把握方法

相続の際、税務署は被相続人の資産を確認しますが、調査時には亡くなった被相続人の口座を確認するだけではなく、その家族の口座も確認します。したがって、被相続人が生前に隠していたタンス預金への相続税課税を回避しようと、預金を家族の口座に移し替えたとしても、調査によってばれてしまいます。

また、税務署は過去何年も遡って口座の出金記録を調査します。そのため、数十年前にタンス預金として引き出した記録がある場合、その使用目的を証明することができなければ、タンス預金が行なわれているとの疑いをかけられることになります。

ちなみにタンス預金の疑いがかけられる出金額は100万円からです。引き出した100万円の用途をしっかりと説明することができれば問題はありませんが、タンス預金を行なっている場合には疑いをかけられ、税務署が実地調査を行うことになります。この実地調査を通して相続人の自宅からタンス預金が見つかってしまう場合もあるのです。

このように、大きな額を一度に銀行口座から引き出した場合には、タンス預金の疑いをかけられる可能性が高くなります。しかし、長年かけて少しずつ銀行からお金を下ろしながらタンス貯金に回していれば、税務署もタンス預金が行なわれていることを見抜くことはできません。

しかし、本来タンス預金は相続税の課税対象となるので、後々大きなトラブルを起こさないようにするためにも、税務署にタンス預金の申告を行った方が無難だと言えるでしょう。

税務調査のタイミング

通常、税務調査は相続税の申告書を出して1~2年経った頃に行なわれます。税務調査が行なわれる可能性が高いのは、納税額が大きいケースです。ただ、この調査が行なわれる可能性は20%となっているので、それほど多くの方が受けるようなものでもありません。

相続税の申告を行なってから2年を過ぎても税務調査の連絡が無かった場合には、ひとまず安心することができます。しかし、完全に安心できるというわけではありません。というのも、相続税の税務調査が行なわれる可能性は、申告の期限から5年以内であると定められているためです。したがって、5年を過ぎなければ安心することはできません。5年を過ぎてしまえば、たとえ税務署側が誤りを発見しても時効となり納税の義務は生じません。

ただ、ややこしいことに例外もあり、場合によっては5年ではなく7年となることもあるため、脱税している場合は、長い間決して安心することはできないのです。

税務調査の質問内容は?

税務署による調査は徹底しており、いくつか質問も行なわれるので、最悪タンス預金がばれてしまうことも起こり得ます。実際にどのような調査が行なわれているのか、ここで確認してみましょう。

税務調査の際、相続人(遺族)に投げ掛けられる質問は主に「被相続人(亡くなった方)についての質問」「配偶者についての質問」「子供についての質問」の3つで構成されています。それぞれについて、具体的な質問内容は次のようになりあます。

「被相続人についての質問」

  • 被相続人はどのようにして相続財産を築いたのか
  • 被相続人の日記は残っているか
  • 被相続人の月々の生活費
  • 被相続人は貸金庫を持っているか
  • 趣味は何であったか
  • 過去に贈与していたことがあるか
  • 誰に贈与していたのか

「配偶者に対する質問」

  • 証券口座を所有しているか
  • 相続開始の直前に銀行口座から下ろした現金の使用目的
  • 出身大学や職業
  • 相続税を納税した金融機関はどこか
  • 生活費はいくらか
  • 貸金庫の有無とその場所はどこか
  • 過去に住んでいた家も含め、それらの購入金額あるいは売却金額はいくらか

「子供についての質問」

  • 学生か、社会人か
  • 収入はいくらか
  • 同居か、別居か
  • 相続で受け取った財産はあるか
  • どんな財産を受け取ったのか
  • 出身大学はどこか

この他にも、多くの質問が行なわれます。なぜ税務署がこれほど多くの質問を行うのかというと、「支払うべき税金をすべて払って欲しいから」です。このように詳細で抜け目ない調査を行うことで、タンス預金がないかどうか確認しているのです。税務調査の際、質問には正直に答え、嘘はつかないようにしましょう。

最後に

タンス預金について、その名前は知らなくても実践している方も多いのではないでしょうか。常に自分の手元にまとまったお金を置いておけば、万が一の場合にも安心できますし、預金の総額が政府に把握されないという点も魅力的でしょう。

ただ、タンス預金を行なっていたことで、家族に思わぬ迷惑を掛けてしまうこともあります。被相続者がタンス預金の存在を忘れてしまい、遺族である相続人がタンス預金があることについて知らされていない場合には、相続の際、タンス預金について申告することができません。

先ほど確認したように、相続税の申告においてタンス預金について申告しなかった場合には、罰金を支払うことになります。相続人にそのような責任を負わせないよう、ご自身のタンス預金の存在は家族にしっかりと知らせ、管理を怠らないようにしましょう。

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