保険には、生命保険をはじめ将来のための貯蓄まで実に様々な種類があります。今回は保険のお話しですが、損害保険の中から子供のためにも知っておくべき「個人賠償責任保険」の保証内容や事例、加入方法などにスポットをあててみたいと思います。
引用:pakutaso
目次
個人賠償責任保険とは
引用:photo-AC
この保険は、名称すら聞いたことがないという人でも分かりやすい内容の保険です。ただ、生命保険と違って保障の定義などがいろいろとありますので、できるだけ具体的に分かりやすくお話ししてみたいと思います。
個人賠償責任保険はどんな時に備えるのか
- 買い物中お店の商品にぶつかって壊してしまった
- 自転車走行中に歩行者とぶつかりケガ(後遺症、死亡)させてしまった
- 子供がお友達とケンカして相手の子供にケガをさせてしまった
- ベランダの鉢が落下してたまたま下を歩いていた他人に当たってしまった
- 飼い犬が他人に噛みついてケガを負わせてしまった
- 子供がご近所さんの車を傷つけてしまった
- マンションの自室で水漏れがあり階下のお宅を水浸しにしてしまった
- 庭でボール遊びをしていて路上駐車中の車のミラーを壊してしまった
など、自分自身のケガや病気に対する生命保険とは異なって、万が一他人に損害を与えてしまった際の賠償責任を負うために備える保険が個人賠償責任保険です。特に小さなお子様がいらっしゃる場合は、いつどんな事が起きるか分かりません。
ちょっとした不注意が思わぬリスクとなってしまう事だってたくさんあります。この保険は、日常生活の中で偶然・突発的に起きてしまった事故や物事で、他人の物を壊してしまったり誰かを傷つけてしまった時の保障という事になります。
個人賠償責任保険はどこで加入できる?
この保険は損害保険ですが、損保会社だけでなく生命保険会社やネット通販などでも加入できます。ただし、この保険だけを単独で契約できるところは多くありません。あくまでも1つの保険の中の「特約」という考え方だとイメージしやすいですね。
車を運転する方は自動車保険、お住まいのための火災保険などにセットできますので、これらの保険に加入する際に一緒に付帯するというのが一般的な加入方法と言えます。また、クレジットカードにサービスとして個人賠償責任保険の保障を付帯しているカード会社もあります。
個人賠償責任保険の保障対象となる人
- 加入者本人
- 加入者の配偶者
- 加入者またはその配偶者と生計を共にする同居の親族
- 加入者またはその配偶者と生計を共にする未婚(独身)の子
未婚の子というのは同居していなくてもOKです。例えば、大学進学のため他県に引っ越してしまった子供さんなどもOKという事になります。家族の一人が加入していれば家族丸ごと保障してくれるのです。
月々の保険料
どんな保険商品でもそうですが、加入する商品や保険会社によって変わってきます。あくまでも付帯商品なので、「あなたの個人賠償責任保険は月々いくらですか?」と聞かれても、ハッキリと答えられない方のほうが多いようです。
参考サイト:個人賠償責任保険の保険料
特約として付帯するので、どんな組み合わせで加入するかによって保険料が変わってきます。
万が一の保障額は?
個人賠償責任保険ではどれぐらいの保障をしてもらえるのでしょうか。実はとてもありがたいことに最高1億円まで保障してくれるものまであるのです。大きなケガを負わせてしまったり、障害状態にさせてしまったりすれば数千万の損害賠償責任となることもありますから助かりますね。
ただし、これも保険料と同じで加入した保障内容によって異なってきます。自動車保険などの保障と同様「無制限」に保障してくれる特約もあります。
損害は貯蓄で賄えないのか
上記で例に出したものはごく一部で、日常生活の中で他人に対する賠償責任が発生し得る事はとても多く、ご紹介しようにもキリがありません。私の友人は「他人の物を壊したりするぐらいなら貯蓄で何とかなるから掛け捨てで払うのは勿体無い」と言います。
確かにそういう考え方の人もいます。例えばデパートなどで食器などを落として割ってしまったとします。その場合は商品の代金を支払ってしまえば済むかもしれません。しかし、もっと重大な事が起きたらどうですか?皆さんは平成20年に起きた小学生の自転車事故を覚えているでしょうか。
平成20年9月某日、当時11歳の男の子が自転車(マウンテンバイク)で坂道を下っていて女性に正面から激突してしまいました。女性は跳ね飛ばされ頭を強打、意識不明の重体となってしまったのです。この事故で男の子の母親に対し「監督不行き届き」という事で9500万円の賠償責任が課されました。
9500万円というとてつもない金額を貯蓄で支払うことができるでしょうか。そんな時にありがたいのが個人賠償責任保険なのです。誰の身にも起こり得る突発に備える御守り的なものですね。
示談交渉サービス
個人賠償責任保険には、示談交渉サービスが付いているものがあります。これは相手方と揉めてしまった時や、示談に持ち込みたいけどどうしたらいいのか分からないという場合に、文字通り示談交渉をしてくれるサービスです。
単に物を壊してしまったという場合は別ですが、被害者を重篤な状態にしてしまったりした場合は、個人間で話し合っても感情的になって溝が深まるばかりですから、このサービスは付いている方がありがたいですね。
また下記動画でも個人賠償責任保険について詳しく解説がされているので、参考までに転載しておきます。
個人賠償責任保険の保障対象となる事例
引用:photo-AC
他人(第三者)に謝るだけでは済まされないほどのケガをさせてしまったり、物を壊してしまった時の保障というのは分かりましたね。では、ここからは個人賠償責任保険の保障対象となる事故などを具体的に見ていきましょう。
1.飼い犬
自宅で飼いっている犬が通行人に飛び掛かり全治2週間のケガをさせてしいました。この犬には首輪もリードも付いておらず、自宅をぐるりと囲む形のブロック塀の内側で放し飼い状態でした。犬好きの通行人が近寄るとジャンプで門を飛び越えて噛みついたのです。
2.野球の試合中
草野球チームの試合中、場外ホームランとなり近くの住宅の窓ガラスを直撃。窓の近くにいた住人に破片が飛んで軽症を負わせてしまいました。物だけでなく、人にも危害を加えてしまったことになります。
3.結婚披露パーティー
姪っ子の結婚披露パーティーに出席し、各テーブルの列席者にお酌をして回っていたところ別の列席者とぶつかったはずみで、持っていた自分のグラスが落下。そのグラスがちょうど落下したのが列席者の膝の上で、その方が着ていた高価な着物を汚してしまいました。
4.子供vs子供
自分の子供が仲良しのお友達の家に遊びに行った際、先方の子供のおもちゃを誤って壊してしまった。それがきっかけでケンカになりお互いがヒートアップ。その結果、先方の子供にケガを負わせてしまいました。
5.電車の中
つり革につかまって立っていた男性、アタッシュケースが重かったため網棚へ置いたのですが、網棚の幅よりもアタッシュケースの方が大きかったため少しはみ出していました。電車の揺れに合わせてアタッシュケースが落下、真下に座っていた方を直撃して軽いケガを負わせてしまいました。
6.学校
体育の授業のため教室内で着替えをしていた時、ジャージのファスナーがうまく上がらない生徒がいました。隣にいた生徒が手伝ってあげようとファスナーを勢いよく上げたところ、思ったよりもあっさりとファスナーが上がりました。
手伝ってもらった側の生徒は手伝ってくれている生徒の手元(真下)を見ていたため、勢いよく上がった生徒の手が顎を直撃。舌を噛んで数針縫うほどのケガを負ってしまいました。
というように、いつ誰にでも起こりうる賠償事例はいくらでもあるのです。ご紹介した事例はごくごく一部です。そして病気やケガなどで入院・手術をした時のために備える生命保険とは全く違うというのがお分かり頂けたと思います。
保障の対象外となるケース
引用:pakutaso
他人(第三者)に対する賠償であれば全てが保障の対象となるわけではありません。これは加入前にぜひ知っておくべき事なので、少し詳しくお話ししたいと思います。
故意によるもの
これは当たり前といえば当たり前ですね。故意に何かをしても対象外となるなら、知人と結託して(面識がない振りをして)個人賠償責任保険を悪用したりする人が出てきてしまいます。故意に何かを壊したり人を傷つければ犯罪行為です。
例えば、暴力もそうですね。子供のケンカとは違って、大人は暴力で他人を殴ったり蹴とばしたりすれば「ケガをさせてしまうかもしれない」という予測はできるはずですので、保障されないのは当然ですね。
プライバシー侵害と著作権侵害
プライバシーの侵害で他人をひどく傷つけてしまった、音楽や写真を無断で利用してしまったなどという場合は、実際の「物」という扱いではなくなります。
実際には目に見えない心の傷を負わせてしまった、目に見えない権利を侵してしまったということになり個人賠償責任保険の対象外となります。
契約者本人と家族・親族など
契約者本人が同居している息子の持ち物を壊してしまった、おじいちゃんが孫のパソコンを壊してしまったなど、契約者、契約者と同居している家族や親族に対して発生したものは対象外となります。
他人から借りた品物
他人の物を壊してしまった場合は保障の対象ですが、借りた物となるとちょっと考え方がちょっと変わってきます。分かりやすく例を挙げてみます。
【例①】A君がB君の家へ遊びに行きました。B君の部屋で2人仲良くゲームをしていたのですが、A君が誤ってゲームの付属品を踏んづけて壊してしまいました。
【例②】B君が新しいゲーム機を買ったというので、A君はB君にお願いして1日だけゲーム機を貸してもらいました。A君はゲーム機を自宅へ持ち帰って遊んでいたのですが、誤って付属品を壊してしまいました。
例の①と②どちらもB君が被害者でA君が加害者ですね。そして壊してしまった物も同じです。ですが、①は保障の対象となり②は対象外となります。
①は故意ではなく突発的な事故といえますが、②の場合は、もちろん故意ではないのですが借り物ですので自己責任という事になるのです。
同じような理屈から、レンタルショップで借りたDVDなども自己責任で管理する必要がありますので保障の対象外となります。借りた物の他に預かり物も同時に対象外です。
仕事中に発生した賠償
仕事中(職務中)に発生したものは、どんなに重度の賠償でも対象外となります。ほとんど企業では法人向けの賠償責任保険などに加入しているはずですので、そちらを利用するという事になるのが一般的です。
では、お昼の休憩時間中ならどうでしょうか。お昼休憩は誰もに与えられている休憩時間で、業務(運転や作業など)一切しなくて良い時間ですね。という事は、例えば休憩時間中にお弁当を買いに自転車事故を起こして他人にケガを負わせてしまったら?
答えは対象外です。休憩時間といっても一応は勤務時間内になっていますので、個人賠償責任保険で賠償することはできません。では、お勤めしている会社が賠償責任保険に加入していない場合はどうなるのでしょうか。自身が加入している個人賠償責任保険を使えるの?
残念ながら使えません。仕事中に発生したものは保障対象外という定義がありますので、「会社が加入していないから自分の保険で」と思っても対象外なので使うことは出来ないので自己負担となってしまいます。
運転中の事故
車はもちろん、バイク、飛行機や船などの運転は、そもそも運転をする事じたい自己責任となります。したがって運転中に他人を傷つけても、よそのお宅の塀や物にぶつけて壊してしまっても全て対象外となります。
ただ、この場合は個人賠償責任保険ではなく自動車保険の方から保険金が支払われますのでご安心ください。とはいっても、もちろん故意に行った場合は当たり前ですが自動車保険の方もNGとなります。
海外旅行中に発生したもの
個人賠償責任保険の保障は基本的に日本国内のみとなっている保険会社が多いようです。したがって、海外出張や旅行中に他人にケガを負わせてしまったり、土産物店などで陳列されている物を壊してしまっても保障されず事故弁済となってしまいます。
約款や規定などにも、「日常生活」の中で起きたものというような文言の記載があります。海外旅行などは日常生活ではありませんので対象外となるわけです。ただし、一部の商品や保険会社によっては海外旅行中でも保障してくれるものもあるようですので一概には言えません。
その他
損害保険全般に言えることですが、天災の場合は保障対象外となるケースがほとんどのようです。ただ、状況によっては保障の対象になるケースがあったり、一部だけ保障の対象ということも無くはありませんので、火災保険や地震保険、自動車保険その他の損害保険に個人賠償責任保険の付帯がある場合は確認してみてください。
こんな方におすすめ
引用:pakutaso
ご紹介している個人賠償責任保険を一番おすすめしたいのは何と言ってもお子さんがいらっしゃるご家庭です。子供というのは大人の想像をはるかに超える予想外の行動を取ることも多々ありますね。
御守りとして
先にお話しした平成20年の少年の事故もそうですが、子供たちだって「やってやろう」と思ってやるわけではありません。遊んでいただけだけだったり、力加減が分からず本人も予想していなかった事態になってしまっただけなのです。
もちろん、子供だけでなく老若男女どの世代にも加入して損はない保険といえるのではないでしょうか。「備えあれば患いなし」という言葉がありますが、どんな保険も万が一の時の御守りとして考えれば掛け捨てだったとしても決してムダではないと私は思います。
車やを持っていない・賃貸に住んでいる
車を持っていれば自動車保険に加入している確率は高いですね。そして自動車保険に加入していれば個人賠償責任保険がセットされている可能性があります。しかし車を持っていない場合は当然のことですが個人賠償責任保険に加入していることはありません。
賃貸の場合は火災保険に加入していない方も多くいらっしゃいます。ほとんどの賃貸契約時に火災保険の加入が必須となってきているようですが、入っていても個人賠償責任保険がセットされているとは限りません。
マイホームを購入した・新築した
持家であれば火災保険は加入している方がほとんどだと思いますが、地震保険はセットしても個人賠償責任保険までセットするかというと疑問です。ぜひ確認してみてください。
自転車によく乗る
運転免許を持っていない方や、運動不足解消のために自転車によく乗るという方にもおすすめです。自転車事故というのは意外と多く発生していますので、予測不能な突発に備えることは大切です。
加入するには?
引用:photo-AC
個人賠償責任保険にぜひ入っておきたいという方のために、加入方法をご紹介します。
もうすでに加入してるかも?
前述で触れましたが、個人賠償責任保険は単体でなく付帯(セット)されているのが一般的です。自動車保険など何かしらの損害保険の加入しているのであれば、まずは保険証書などを確認してみてください。個人賠償責任保険が付帯されていれば記載があるはずです。
また、自分のクレジットカードに個人賠償責任保険が付帯されている事を知らない人が意外に多いようです。こちらもぜひ確認してみてください。もし付帯されている事を知らずに加入すると重複となってムダになってしまいますので思い当たる方はすぐに確認してみましょう。
何も加入していなかったなら
思い当たる損害商品にも手持ちのクレジットカードにも付帯されていなかった。でもやっぱり加入したい!という時は、ご自身がお勤めの会社で団体定期保険に加入しているか(加入できるか)を確認してみてください。加入していれば個人賠償責任保険をセットすることが可能です。
それもダメなら個人賠償責任保険が付帯できるクレジットカードを新たに作っても良いでしょう。それはちょっとというなら、個人賠償責任保険がセットできる損害保険や同じような保障がある商品もあります。
個人賠償責任保険のメリットとデメリット
引用:pakutaso
個人賠償責任保険の魅力をご紹介していますが、もちろんメリットだけでなくデメリットもあります。そこで、加入前に知っておきたい個人賠償責任保険のメリットとデメリットについてお話ししたいと思います。
メリット
- 第三者に対しての賠償に備えることができる
- お手頃な保険料で高額の賠償もカバーできる
- 示談交渉サービスが付いている商品もあり
- 家族の誰か一人の加入で家族全員をカバー
デメリット
- あくまでも突発的な事だけの保障
- 保障対象となる事故は頻発するものではない
- 対象外となるものもいろいろある
- 特約扱いがほとんどのため母体となる保険を解約した際は同時に解約となってしまう
確認すべき点と注意点
引用:pakutaso
個人賠償責任保険のこと、だいぶ分かってきましたね。では、加入前に確認しておくべき点や注意点を最後にお話ししておきたいと思います。
自分の意思だけで即決しない
加入を検討している旨を同居しているご家族全員に伝えましょう。もしかしたら家族のどなたかが何かしらの同じような保障の付いた保険に加入している可能性も考えましょう。もし加入していれば重複してムダになっています。
そして忘れてはいけないのが、離れて暮らしている未婚のお子さんです。学生さんなら確率は低いかもしれませんが、社会人であればクレジットカードを作って持っているかもしれません。
前述の通り、クレジットカードに個人賠償責任保険がセットされている可能性がありますので、離れて暮らしている未婚のお子さんがいらっしゃる方は確認してみてください。
重複加入はNG?
重複して加入している事じたいは、保障金額に上限があるため合計金額の調整をされるぐらいで別に問題ではありません。もしも、何かしらの賠償責任が発生してしまった場合、重複していれば「重複して加入している賠償保険×保障金額が貰える」から更に安心?
ところが、この保険はいくつ重複して加入していても、それぞれの保険から保障金額をもらえるわけではないのです。例えば、何かしらの賠償責任が発生して1000万円の賠償金を請求されたとします。
A社、B社、C社、それぞれの損害保険に個人賠償責任保険がセットされていたとすると、3社×1000万で3000万円ではなく、決定した金額1000万円しか貰えません。ですから同じ保障内容の重複はムダになってしまうのです。
重複していない保障
もしも家族の誰かが個人賠償責任保険がセットされている保険に加入していた場合は、それぞれの保障内容を良く見てから検討してください。どちらかというと保障内容が劣っている、片方には示談交渉サービスが付いていない、などの比較をして、どちらかにまとめると良いでしょう。
日常生活に合った内容か
生命保険でもそうですが、「聞いてもよく分からないから」とか、「プロに任せた方が安心だから」と、担当の営業マンにお任せしてしまうと、不要な特約までセットされてしまったりする事があります。
どんな内容なのか、どういう場合に保障されるのかなどを理解できるまで何度でも聞いてください。理解できて自分に必要と判断できないものはとことん聞くことが大切です。自分の日常生活の中で起こりえない(確率が限りなく低い)と良そうされる保障は不要です。
まとめ
いかがだったでしょうか。繰り返しになりますが、保険というのは万が一の御守りですので、必要性を感じない方もいらっしゃると思います。これは今回のテーマである個人賠償責任保険に限ったことではありませんが、もしも自分の身に降りかかった時に後悔しても遅いのです。
しかし人それぞれ考え方や状況が異なりますし、保障内容によってはメリットにもデメリットにもなり得ます。加入を検討されている方は個人賠償責任保険の事をよく理解したうえでお決めくださいね。