みなさんは「インバース型ETF」という金融商品を知っていますか?「ETFは聞いたことはあるけど、インバース型って何?」と思う方も多いでしょう。今回は「インバース型ETF」について分かりやすく解説していきます!
まずインバース型ETF(上場投資信託)について理解するにはETF(上場投資信託)について知っておかなければいけません。
では早速ETFについて確認していきましょう。
ETF(上場投資信託)とは?
ETF(上場投資信託)とは、日経平均やTOPIX、外国の株価指数といった特定の指標の動きに連動するように運用されている投資信託 の一種です。
金融商品取引所 に上場していることから、株式と同じように取引できる金融商品です。
もちろんです。
日経平均株価とは日本経済新聞社が東証一部に上場している企業から、独自の基準で選んだ225銘柄の平均株価のことを指します。
一方でTOPIXは東証一部に上場しているすべての日本企業の銘柄を対象としています。
日経平均株価とTOPIXの詳しい説明は下記のリンクを参照してみてください。
TOPIXとは?日経平均株価と何が違うの?わかりやすく徹底解説します!
では早速ETFについて見ていきたいと思います。
ETFの特徴
まずはETFの特徴から確認しておきましょう。
(1)値動きが分かりやすい
特定の指数に沿って価格が変動するETFであれば、値動きがわかりやすいです。
日経平均やNYダウなどの指標は日々のニュースなどで取り上げられます!これらのニュースをチェックするだけで、前日比で自分の所有するETFの価格が上がったのか、下がったのかを知ることが可能です!
(2)簡単に分散投資ができる
まずは分散投資について簡単に説明しておきます。
分散投資は、投資対象を多様化させることによって、資産運用に伴う価格変動リスクを低減させ、好リターンを得やすくする投資方法です。
例えばすべての資金をひとつの金融資産に集中させると、運用がうまくいかなかった場合には損失がとても大きくなってしまいます。しかし値動きの異なる複数の資産に分散させれば、リスクを分散させることができ、安定的な収益を期待出来ます。
具体的な分散の方法ですが、「国内外の国や地域、株式や債券など商品」、「円やドルなどの通貨」と、「積立」など、大きく4つの考え方があります。
ETFは特定の指数への連動を目指して幅広い銘柄に分散投資が行なわれている商品であるため、ETFを購入するだけで簡単に分散投資ができるのです。
(SMBC日興証券 分散投資のすすめ参照:https://www.smbcnikko.co.jp/first/learn/bunsan/index.html)
Fincleでは分散投資についても詳しく解説しています。併せてチェックしてみてください!
分散投資とは?具体的なやり方やデメリットなどについて徹底解説!
(3)株式同様の売買が可能
国内ETFは金融商品取引所に上場されているため、取引時間中であればリアルタイムに売買できます。
株式と同様、指値や成行注文、信用取引などの取引ができます。
指値注文と成行注文について簡単にまとめておきます。
成行注文とは、値段を指定しない注文方法です。例えば、今1株が大体100円で取引されているとしましょう。成行注文を指定した場合、この市場価格が購入価格となります。
一方で指値注文は、買うもしくは売る値段を指定して注文する方法です。例えば買う側が、「80円で1株を買いたいです」と自分で決めたり、売る側が「120円で1株を売りたいです」と自ら申し出ることを意味します。
指値注文は、自分で値段を指定することができるので、損をするということはないかと思いますが、買いたい相手・売りたい相手とマッチングが難しいというデメリットも存在しています。そのため通常、市場価格にそって取引を行う成行注文が利用されています。
信用取引について詳しく知りたい方は下記のリンクよりチェックしてみてください♪
資金が足りなくても投資ができる!? 信用取引についてわかりやすく解説します!
(4)運用コストが安い
一般的な投資信託と比較して信託報酬が低いです。
投資信託について詳しく知りたい方は下記のリンクよりチェック!とてもわかりやすく解説されています!
投資信託とは?手数料やリスクはあるの?初心者向けに解説します!
上記で出てきた、ETF・株式・投資信託の特徴や違いについて関して簡単にまとめておきます!
ETF | 株式 | 投資信託 | ||
---|---|---|---|---|
上場・非上場 | 上場 | 上場 | 非上場 | |
取引価格 | リアルタイムで 変動する市場価格 | リアルタイムで 変動する市場価格 | 基準価額 (1日1回) | |
費用 | 買付時 | 売買委託手数料 | 売買委託手数料 | 買付手数料 |
売却・解約時 | 売買委託手数料 | 売買委託手数料 | 信託財産留保額 | |
信託報酬 | あり (一般的な投資信託より安い) | なし | あり | |
取引価格の指定 | 成行/指値 | 成行/指値 | 価格の指定は不可 | |
信用取引の有無 | 可能 | 可能 | 不可 | |
リスク | 多数の銘柄に投資することにより、個別銘柄にかかわるリスクは分散される | 個別銘柄にかかわるリスクあり | 多数の銘柄に投資することにより、個別銘柄にかかわるリスクは分散される | |
配当・分配金 | 分配金 | 配当 | 分配金 |
(日興アセットマネジメント 参照:https://www.nikkoam.com/products/etf/about/difference)
ETFの概要については理解できましたでしょうか?ではここから本題のインバース型上場投資信託についてみていきます!
インバース型ETF(上場投資信託)とは?
インバース型ETFはいったいどのような仕組みなのでしょうか?
インバース型ETFとは、金融商品取引所に上場しているETFのうち、日経平均株価などベンチマークとなる株価指数の値動き自体に連動するのではなく、株価指数とは反対方向に動き、利益・損失の関係が日々逆になる運用を行う投資信託のことです。
インバースとは英語で「逆」「反対の」を意味します。 その名の通り、インバース型ETFは日経平均の価格が下がると上がるように設計されています。
例えば日経平均株価が「-10%」になれば、インバース型ETFは「+10%」に、「-20%」になれば「+20%」になるということです。
ダブルインバースと呼ばれるものもあり、その場合日経平均株価が「-10%」になれば、ダブルインバース型ETFは「+20%」に、「-20%」になれば「+40%」になります。
因みにトリプルインバースはまだ存在していません。
その通りです。インバース型上場投資信託にはベア型という呼び方もあります。
インバース型ETFのメリット
インバース型のメリットとしては主に下記の3つが挙げられます。
➀日経平均などの相場の下落が予想されるときに利益を上げることがきる
②指数連動型ETFのリスクヘッジになる
③持っている株式や投資信託の「つなぎ売り」の役割
があることです。早速、インバース型ETFのさまざまな使い方について詳しく解説します。
➀相場下落を予測したらインバース型ETFを購入
景気の動きや企業の調子を表す経済指標の落ち目のときは、どんな投資家でも消極的になりがちです。
しかしながらその落ち目を狙い、インバース型ETFに買いを入れ、市場に参加することが可能です。
②指数連動型ETFのリスクヘッジとして活躍
すでにETFを保有している人が、相場の下落を予測した場合、インバース型ETFはリスク回避手段として有効です。
もちろん指数の下落を察知した時点で指数連動型のETFを「売る」という手段をとることもできますが、長期投資を計画的に行っている人は「売りたくない」と考える人もいることでしょう。
実際国内ETFは日銀が買い支えているという背景もあります。そのため下落は短期的なもので終わる可能性が大きいともいえます。
下落相場で売ってしまうより、ひとまず自分の持っている指数連動型ETFと対極にあるようなインバース型ETFを買い、しばらく様子を見るという方法を取るのもいいでしょう。
③保有株式や投資信託の「つなぎ売り」として利用
いくつかの上場株式や投資信託を保有している場合、相場の下落を察知しても簡単に売ることはできませんね。
利益が出ているとき利益確定するならまだしも、損失を計上するのは本当に悔しいものです。
しかし「絶対下がる!」と予想できるような局面に来た場合、何も対策をしなければ損失は大きく膨らみ、大きなダメージを受けてしまいます。
そこで活躍するのがインバース型ETFになります。
インバース型ETFを下落相場の間だけ短期的に保有することで「つなぎ売り」と同等の機能を持たせることが可能です。
つなぎ売りとは下落相場で損失を抑えるため、保有する現物株式の同数だけ信用売り(空売り)することです!
上述したようにインバース型ETFは株価が下落すると利益を出すことが出来ます。
そのため株価が下がると根拠をもって言える場合は、インバース型ETFを所有することで下落時に利益を生み、その利益を自分が現在所有している上場株式や投資信託の損失に充て、プラマイゼロに近づけるという考え方です。
信用売り(空売り)をするとなぜ儲けがでるのか、仕組みについて知りたい方は下記のリンクよりチェックしてみてください!
資金が足りなくても投資ができる!? 信用取引についてわかりやすく解説します!
信用取引ができず空売りできない人や、投資信託を保有している人には、「つなぎ売り」の手段としてインバース型ETFを活用してみてください。
インバース型ETFのデメリット
インバース型ETFのデメリットは次の通りです。
➀相場(指数)が上がると損をする
②長期保有には向かない
③分配金は期待できない
です!では早速見ていきましょう。
➀相場が上がると損をする
日経平均やTOPIXなど支柱となっている原指数が下がると値上がりするような仕組みのETFなので、当然のことですが、指数が上がればインバース型ETFは値下がりします。
2013年量的・質的金融緩和が始まってから、日銀がETFを積極的に買い続けているせいもあり、国内ETFは簡単には下がらないことが予想されます。
日銀の「買い」を押し返すほどの「下げ」圧力があるかどうか見極め、購入することが大切です。
②長期保有に向かない
インバース型ETFは長期保有には向きません。
日経平均株価やTOPIXと逆になるとはいえ、日々の騰落率×α%というように計算されていることから、長期的に見れば指数にずれが生じてしまう恐れがあります。
単純な例で説明したいと思います。
まず株価指数が100→110→120→110と変動して、再び100に戻ったとします。それぞれの変動率は10%→9.09%→マイナス8.33%→マイナス9.09%となります。
次にインバース型ETFの動きをトラックしてみましょう。
株価指数の変動率に対して逆連動するわけですから、マイナス10%→マイナス9.09%→8.33%→9.09%変動させればいいわけです。
100から始まったインバース型ETFの指数に上記の変動率を掛け合わせると90→81.82→88.64→96.69と推移することになり、元の100には戻ることはありませんでした。
これだけの変動で、すでに3.31ポイントの下方への誤差が発生しています。実際の株価指数の動きは毎日上下に乱高下するわけですから、わずかな誤差でも時が経過するにつれて積み重なってゆき、連動性は徐々になくなっていくことが考えられます。
その通りです。インバース型ETFはあくまでも短期的な下げ相場で活躍するETFだと覚えておきましょう。
③分配金に期待できない
もともとETFは非上場の投資信託と比較して、分配金を出せる条件が厳しく設定されています。
※ETFが出せる分配金は以下のように決められています。
配当、受取利息など - 支払利子、信託報酬など費用 = 分配金
例えばETFが保有している株の価格がいくら上がったとしても、持っている株から配当がなければ、ETFは分配金を出すことはできません。
また、インバース型ETFは分配金が出ません。なぜならインバース型ETFは先物※に投資をしています。先物からは配当や利息は生まれないので、分配の基となるお金がないのです。
※先物投資とは?
先物取引とは、現在の価格で将来に商品を売買する取引のことです。
日本の景気が悪くなる要因
ここまでインバース型ETFについて見てきました!インバース型のETFは景気が悪くなった時に上がる上場投資信託ですが、いつ景気が悪くなるなんてわかりませんよね?
もちろんです!では早速確認していきましょう♪
日本の景気が悪くなる原因には、➀地政学リスク②円高③ニューヨーク・ダウの低迷に引きずられるなどさまざまなものが挙げられます。
➀地政学リスク
地政学リスクとはテロや戦争、財政破綻など、政治的・軍事的な緊張の高まりが、経済の先行きを不透明にし、あらゆる地域の経済に影響を及ぼすことを指します!
例えば中東での戦争は原油価格の高騰など度々大きな影響を及ぼします。
②円高
日本を代表する企業、例えばTOYOTAやユニクロなどは輸出産業で多大な利益を生み出しています。
そのため円高になると、輸出先の国での商品の価格が高騰し、商品の売れ行きが著しく悪くなってしまいます。
当然、TOYOTAやユニクロなどは日本屈指の大企業ですからそれらの株価が下がると、日本のマーケットにも大きな影響を及ぼします。
③ニューヨーク・ダウの低迷
アメリカニューヨーク・ダウの市場は日本にも大きな影響をもたらします。
リーマンショックやブラックマンデーなどはニューヨークで発生した金融危機がきっかけです。
これらの危機が日本のマーケットにも多大な影響を及ぼしたことは皆さんもご存知でしょう。
下記のリンクにニューヨークで起こった金融危機についてまとめています!気になった方は是非チェックしてみてください♪
取引額世界No.1を誇るニューヨーク証券取引所とは?上場企業はどれくらいあるの?
リーマンショックはなぜ起こった?日本経済への影響は?わかりやすく徹底解説します!
いずれも毎日の新聞やニュースにおいてこまめな情報収集が大切です。下落の兆候を素早くキャッチし、相場を勝ち抜けましょう。
おわりに
今回はETFやインバース型ETFについてまとめていきました!インバース型ETFについては理解できましたでしょうか?
最後にもう一度要点を振り返っておきましょう!
➀インバース型ETFは通常の株価指数とは逆向きに動く
②インバース型ETFは景気が悪くなると価値が上がる(景気が良くなると下がる)
③インバース型ETFは短期的にリスクヘッジとしての役割を果たすが、長期保有をすると損失が大ききくなる
④、地政学リスク、円高、ニューヨーク・ダウの低迷が景気悪貨に大きく影響する
インバース型ETFはやや難易度の高い投資になるかと思います。そのため初心者の方には向かないでしょう。「投資に慣れてきた!」と思ったら是非利用してみてください!
この記事が皆さんのお役に立てれば幸いです。