生命保険料控除ってご存知ですか?
12月になると年末調整で会社から提出するように言われたり、確定申告の時に提出していると思います。
でもあれって、具体的にどういったものなのかよくわからないですよね。
控除ってそもそも何なんだろう?
税金がお得になるらしいけど、どのくらい得になるのかわからない…
そんな風に思っている方も多いのではないでしょうか。
今回は生命保険料控除の基本と、基本的な活用方法を調べてみました。
正しく活用してお金のやりくり上手を目指しましょう!
目次
生命保険料控除は何の控除?
そもそも控除とはどういう意味なのでしょう?
辞書で調べてみると、
こう‐じょ【控除/扣除】
[名](スル)金銭・数量などを差し引くこと。
つまり生命保険料を差し引くことが生命保険料控除です。
では、いったいどこから生命保険料を差し引くのか。
それはみなさんの1年間の所得からです。
生命保険料控除は所得控除の一種です。
1年間で自分が得た所得から、生命保険料として支払った分が差し引かれるというものです。
この所得は所得税、住民税を算出する時の基準となり、所得に応じて税額が異なってきます。
所得が低いほど税額も低く、所得が高いほど税額も高くなります。
生命保険料控除を使えば、本来得た所得よりも低い額で所得税・住民税の税額を計算できるためお得になる、という仕組みです。
生命保険料控除の種類は?
生命保険と一言で言っても色々な種類があるように、生命保険料控除にも種類があります。
・一般生命保険料控除
・介護医療保険控除(平成24年1月1日以降の契約から適用)
・個人年金保険料控除
生命保険の種類に応じて、この3つの生命保険料控除が利用できます。
自分が加入している保険がどの控除に該当するのかわからない、という方もいると思います。
そんな時は生命保険会社から送られてくる「控除証明書」に保険種類が記載されていますので、まずはそこを確認しましょう。
一般的には、
・死亡保険や養老保険、変額個人年金保険 → 一般生命保険料控除
・医療保険(入院・通院時の保障など)→ 介護医療保険控除
・一定の条件を満たした個人年金保険 → 個人年金保険料控除
となります。
いくら控除されるの?
この生命保険料控除は、平成24年1月1日に改定がありました。
そのため、保険始期日によって控除される金額が異なります。
具体的な控除額を見ていきましょう。
新制度の場合
所得税 住民税 区分 年間払込保険料額 控除される金額 年間払込保険料額 控除される金額 一般生命保険料
・
介護医療保険料
・
個人年金保険料
(税制適格特約付加)20,000円以下 払込保険料全額 12,000円以下 払込保険料全額 20,000円超
40,000円以下(払込保険料×1/2)
+10,000円12,000円超
32,000円以下(払込保険料×1/2)
+6,000円40,000円超
80,000円以下(払込保険料×1/4)
+20,000円32,000円超
56,000円以下(払込保険料×1/4)
+14,000円80,000円超 一律40,000円 56,000円超 一律28,000円
旧制度の場合
所得税 住民税 区分 年間払込保険料額 控除される金額 年間払込保険料額 控除される金額 一般生命保険料
・
個人年金保険料
(税制適格特約付加)25,000円以下 払込保険料全額 15,000円以下 払込保険料全額 25,000円超
50,000円以下(払込保険料×1/2)
+12,500円15,000円超
40,000円以下(払込保険料×1/2)
+7,500円50,000円超
100,000円以下(払込保険料×1/4)
+25,000円40,000円超
70,000円以下(払込保険料×1/4)
+17,500円100,000円超 一律50,000円 70,000円超 一律35,000円
となります。
また、それぞれの合算限度額も決まっています。
新制度の場合は、
・所得税:一般生命保険料・介護医療保険料・個人年金保険料の合計120,000円まで
・住民税:一般生命保険料・介護医療保険料・個人年金保険料の合計70,000円まで
旧制度の場合は、
・所得税:一般生命保険料・個人年金保険料の合計100,000円まで
・住民税:一般生命保険料・個人年金保険料の合計70,000円まで
となっています。
必ずしも支払う保険料が全額控除される、というわけではありません。
また、どんなに保険にたくさん加入し、保険料を支払っていても限度額以上は控除されませんのでご注意ください。
生命保険料控除はだれが使える?
保険契約には沢山の人がかかわっています。
保険料を払い、契約を交わす立場の「契約者」
保障をかけられている「被保険者」
保険金を受け取る「保険金受取人」
この3つの立場が誰になっているかで生命保険料控除が受けられるかどうかが変わってきます。
ではどうなっていればいいのでしょうか?
一般生命保険料控除・介護医療保険料控除の場合
保険金受取人が、契約者かあるいは配偶者、その他の親族(6親等以内の血族と3親等以内の姻族)である保険の保険料
個人年金保険料の場合
次のすべての条件を満たし、「個人年金保険料税制適格特約」を付けた契約の保険料。
- 年金受取人が契約者またはその配偶者のいずれかであること。
- 年金受取人は被保険者と同一人であること。
- 保険料払込期間が10年以上であること(一時払は対象外)。
- 年金の種類が確定年金や有期年金の場合、年金受取開始が60歳以降で、かつ年金受取期間が10年以上であること。
このように、一般生命保険料控除・介護医療保険料控除と個人年金保険料控除では少し条件が異なってきます。
なお、控除を受けられる人はいずれも保険料を支払っている「契約者」が対象となります。
どれくらいお得になるの?
では控除を受けるとどれくらい税金が軽減できるのでしょうか?
実際に計算してみましょう。
例)
・会社員(独身)
・年収400万円
・生命保険料(いずれも平成24年1月以降に契約)
死亡保険:月々20,000円/年間240,000円
医療保険:月々5,000円/年間60,000円
この場合、基礎控除(38万円)や社会保険料控除(実額)を差し引くと、所得税率は10%のゾーンに入ります。
また、住民税委は一律10%の税率です。
生命保険料控除の額は
・一般生命保険料控除
所得税:40,000円(支払保険料が80,000円超なので一律40,000円)
住民税:28,000円(支払保険料が56,000円超なので一律28,000円)
・介護医療保険料控除
所得税:35,000円(支払保険料60,000円×1/4+20,000円)
住民税:28,000円(支払保険料が56,000円超なので一律28,000円)
・合計控除額
所得税:75,000円
住民税:56,000円
それぞれの控除額に税率10%をかけ、軽減効果を見てみましょう。
所得税:75,000円×10%=7,500円
住民税:56,000円×10%=5,600円
合計 :13,100円
この人の場合は1年間で13,100円の節税効果が得られます。
あまり多くないと思う方もいるかもしれません。
しかしこの制度が仮に10年続いたとすれば、13万円の節税効果です。
「節約のために保険に入ろう」というのは本末転倒ですし、それに対する効果は小さいものです。
しかしながら現在加入している保険の控除を活用することで小さな節約が積み重ねることができる、という点では生命保険料控除はメリットがありますね。
どうやって使うの?
最後に、この生命保険料控除の使い方を押さえておきましょう。
会社員の場合
会社に勤めている場合は、11月頃から年末調整の書類が配られると思います。
2枚配られると思いますが、そのうち「平成〇年分 給与所得者の保険料控除申告書 兼 給与所得者の配偶者特別控除申告書」という書類に控除の種類別に記入します。
記入するときは
・保険種類
・保険会社
・保険期間または年金支払期間
・保険契約者名
・保険金受取人と申告者との続柄
・新制度か旧制度か
・年間支払保険料
・保険料控除額
を記入します。
あとは書類を提出するときに、保険会社から送られてくる「生命保険料控除証明書」を添付して提出すればOKです。
一見すると難しそうに見えますが、順番に記入していけば簡単なので落ち着いて書きましょう。
自営業の場合
自営業の場合は企業に属していないので、年末調整がありません。
その代わりに確定申告を行いますので、その時に生命保険料控除を申告しましょう。
確定申告で申告する場合は、保険料から控除額を算出し、確定申告書の生命保険料控除欄に記入します。
確定申告の場合も、申告書を提出するときに生命保険料控除証明書を一緒に提出しましょう。
控除証明書をなくしたら?
生命保険会社からは10月頃に生命保険料控除証明書が送られてきます。
しかし、うっかりなくしてしまったりほかの郵便と一緒に捨ててしまったりすることもありますよね。
そんな時は保険会社に連絡しましょう。
再発行をしてもらえます。
時期になると控除証明書発行の専用窓口ができたりもしますので、加入している保険会社のホームページを確認してみてもいいですね。
ほとんどの保険会社は無料で再発行の手続きをしてくれます。
もし不安であれば問い合わせてみましょう。
ちなみに、控除証明書がなければ生命保険料控除は受けられません。
小さな額でもせっかく受けられる制度ですから、忘れずに申告しましょうね。
まとめ
いかがでしたか?
文中にもありましたが、控除を受けようとして必要のない保険に加入してしまうのは逆効果です。
しかし必要な保険に加入し、ついでに節税もできると考えると保険料控除もうれしい制度ですよね。
せっかく使える制度です。よくわからないからと申告しないなんてもったいない!
正しく申告して損のないようにしたいですね。